リークしたいことがあり、匿名で貴局に証拠資料を添付してメールします。
 どうか、貴局の番組で報道して、世に知らしめていただけないでしょうか。
 私は市役所職員です。職業を明かすのはリスクがありますが、御社が公的資本の入ったローカルラジオ局だからこそ、通報者保護と守秘義務を徹底していただけるものと信じております。

 市内では、20代から30代の若い女性の失踪が相次いでいます。今月に入って2件。この半年間では全部で5件もあり、警察によるとどれも搜索願は出されているものの誰一人見つかっていません。
 しかし、警察はすべてを単なる家出と決めつけ、事件性がないとして、一切この情報を公開しないのです。

 不思議なのは、失踪する直前、どの人も地元にある忌部神社に行っているようなんです。誰かに呼び出されたのかもしれません。
 市役所職員の私が、警察でもないのに事件についてリークするのは、訳があります。
 というのも、その神社は珍しいことに市が管理しているんです。
 市の神社だから、という訳ではありませんが、賽銭を盗まれないように防犯カメラが設置してあります。
 そのカメラの映像を見れば失踪直前に誰に会っていたのか、などが分かるのに、管理している財産課は警察に録画を提出していないんです。財産課長は防犯カメラのデータが壊れていたため、映像がない、という言い分で警察には納得してもらった、と。
 でも、おかしいんですよね。
 そのカメラ自体は壊れていません。忌部神社に最近、行く機会があってカメラを確認しましたが、ちゃんと機能しています。
 カメラ内部で映像を記録するメディア媒体が壊れていたということも考えられますが、……あり得ません。あれって、クラウド録画なんですよね。
 しかも、財産課長に親しい職員の証言によると、実際は映像がちゃんと録画されていたけど内密にしている、というのです。

 プライバシー情報があってセキュリティの高くあの防犯カメラの映像を確認できるのは、市役所内では総務部長と財産課長だけ。
 総務部長は警察署長と仲がいいらしくて、……あやしいんです。絶対何かあると思います。

 失踪した女性の一人は、防犯課長の娘らしくて、防災課長は総務部長を憎み、躍起になってその証拠となる映像をみようと、働きかけていました。
 すると、防災課長は、先日、なぜか自殺して……。
 自殺なんてする人じゃないのに。きっと、殺されたんだと思う。
 それに、自殺の仕方もおかしいですよ。

 だって、ナイフで自分をめった刺しにしたんですから。