さっそく九条から連絡が来た。LINEに通知。メッセージを読み込んだ。

「すぐにヤらせてくれる奴がいるかどうかは知りませんけど、パパ活をやってる女子なら普通にいるみたいです」

 すかさず返信する。

「誰が」
「ちょっと名前が分かんないんですよね。おハニーってハンドルネームみたいなんで」
「なんだそいつは」
「いや、パパ活って言ったらそれなりにリスクがあるから、本名は使わないってだけの話じゃないですかね。多分、買う方も本名なんて名乗らないでしょう」
「なるほど、そっちを辿っていけばいいわけか」
「え? なんです?」
「こっちの話だ。気にするな」

 LINEでのやり取りを終える。

 パパ活か。たしかに先生の言葉通りに売春というワードは使わないだろうな。大久保公園でやっているみたいな、「ホ別2ゴ」とか隠語を使っているはずだ。

 手掛かりを得たので大葉先生に情報を送る。

「どうやらパパ活って形で例の管理売春とやらが横行しているみたいです」
「分かりました。情報源を教えて頂戴」

 俺は九条とのやり取りで得た情報を渡す。面倒くさいので、さっきのやり取りをスクショにして送った。

「あら、安藤君はいまだに私を倒そうとしているの?」
「言葉の綾ってやつですよ。あんな風に倒されてすぐに大葉先生の指示で動いているなんて言ったら番長のメンツ丸つぶれでしょうよ」

 自分で送ってから「これ以上潰れるメンツがあるのか」と思ったが、それは考えないことにした。

「偉いわね。この事件が解決したら童貞、卒業させてあげようか?」

 ナチュラルにそんなメッセージが来て、俺は「ヴッ……!」と変な声を出す。

 大葉キラは凶悪だが、誰が見ても圧倒的な美貌を持っている。そんな女から「童貞を卒業させてあげようか」なんて言われた日には俺だって「じゃあお願いします」と言いたくなる。

 だけど俺は知っている。先生は俺をからかっているだけだ。これで「ぜひお願いします」なんて返そうものなら、その画面はスクショになってツイッターであちこちに拡散されていくに違いない。

 いくらか被害妄想も入ったが、彼女のからかいはスルーして会話を進める。

「それで、これからどうするんですか?」
「手っ取り早く、おとり捜査というやつをやってみましょうか」

 また大葉先生が怖いことを言いはじめる。

「おとり捜査?」
「そう。女の子には『君を買うよ』って送って、現地でひっとらえるパターンね」
「鬼畜ですね」
「何言ってんの。警察に捕まるよりは私に捕まった方が怒られるだけで済むんだからずっとマシでしょう」

 俺、殴り倒されたけどな……とは思ったけど言わない。

「とにかく、あなたは待っていなさい。後は私がうまくやるから」

 それだけ言って、先生は強制的にやり取りを終わらせた。おそらくどうやって犯人をシバき上げるのか絵図を描いているのだろう。

 管理売春にパパ活か。日本オワタとか言われても仕方がないよなあ、と俺は他人事のように物思いに耽っていた。

 今のうちに寝ておこう。なんとなしに、本能がそうした方がいいと言っていた。