「と、こういうことがあったんです」

 過去をすっかり話した俺は、どこか憑き物が取れた気がした。やはり望んで番長をやっていたわけではなかったのだなと思うと、自分が途轍もなくバカなことをやっていたのかとおかしくなってくる。嘘みたいな話だが、自分ですら気付いていなかった。

「さすがチー牛。やることが極端だわ」
「がっ」

 大葉キラ先生は容赦なかった。俺の思い出までオーバーキルするつもりか。

「だってそうでしょう? そんなことがあったなら、自分の情報網を使って何が何でも西野莉音さんを探せば良かったじゃない」
「いや、だって、その……」
「はい、言い訳は聞きたくない。でも、あなたがそんな純粋なチー牛で良かったわ」
「いや、だからチー牛やめいって」

 そんな俺の言葉を無視して、先生は勝手に話を進める。

「いずれにしても、今の話は役に立ったわ。要はあなたのクラスにはそういう『ビジネス』を持ってくるパイプ役のクソガキがいるってことね」
「ああ、まあ、たしかに」

 言われてみてなるほどとは思ったが、西野莉音事件のきっかけとなった不良はとっくに行方不明になっている。そうなると俺の知らないパイプ役がこの学校にいるということか?

 そんな背信行為をやっている奴がいるなんて信じたくないが、たしかに俺の時代になってからそう日は経っていない。

 先代の番長はボコしたら転校していったが、すり寄って来た残党が俺の知らないところで謀反を起こす準備をしていたとしてもおかしくない。だって俺、元はチー牛だったし。……しまった、自分で認めてしまった。

 それはいいとして、童貞の俺を置いてJCの管理売春なんて許せねえ。そんなところで散らせる処女があるなら、俺にくれ。心からそう叫びたいが、叫んだら俺の好感度が地に落ちるから言えるはずがない。

 大葉先生を見ると、不気味な笑顔を浮かべていた。なんか嫌だ。

「どうやらそのパイプ役を探すのが解決の糸口になるみたいね」