第四章 花火は散る
「ちょっと待っといて」
「うん」
誠は琴音の家の前に立ち、琴音が来るの待っている。
琴音はどうやら浴衣を着たいらしく、それの準備を待っているのだ。
付き合っていないのにまさか夏祭りに行けるとは、どんな得を前世で積んでいるんだ。
誠はニコニコと笑いながら琴音が出てくるの待つ。
それと同時に一枚のカードを見つめる。
鞄からペンを取り出し、記入欄のチェックマークを書く。
思ったよりインクが溢れる。
僕のしていることは君の運命を変えるものだと信じている。やっと生きる意味を見つけたんだ。
数ヶ月前の僕では考えられない行動をしている。
ポケットにカードをしまい、ペンを鞄にしまった。
それから数分程経ち、琴音が浴衣を着て家から出てきた。
「お待たせ~」
紅色の浴衣は当たりを照らすほど輝いていた。
誰が見ても美人だと思うほどで、言葉を失ってしまう。
「似合ってるよ」
僕は自然な笑みを零し、琴音に言う。
すると、照れているのか耳を赤く染める。
「ありがと!」
照れているのを隠し「行こ」と小さく琴音は呟いた。
そして、僕は最初で最後の夏祭りデートに向かった。
琴音視点。
行かないと決めていた夏祭りに向かって歩いている。嫌な思いをするからと避けていた夏祭りが今は楽しみで仕方が無かった。
病気のせいであるのか、胸の鼓動がいつもより速く。少しだけ呼吸が乱れてしまう。
けど、そんなことはどうでもよかった。今は隣にいる誠君と一緒に居れることが嬉しかった。
隣に歩く誠君は大人びている。
「夏祭りに行くのって初めて?」
私は誠君の問う。
「うん。だから今、楽しみなんだ」
誠君は笑みを浮かべる。
そんな笑みを見て思う、最初に出会った日からは誠君は本当に変わった。
明るい性格で、楽しく話すようになっている。
変わった誠君を見て、私のしてきたことに意味があるんだと実感する。
最初救いたいと思ういなや好奇心から近付いたのに、それは変わって今はずっと一緒に居たいと思い始めている。
分からなくなった愛という気持ちは今なら分かる。
私は誠君が好きだ。
けど、私は死ぬ。
数カ月の命しかないのに、私は誠君と付き合うことができるのだろうか。
でも、私は逃げたくないし後悔もしたくない。
だから、今日告白しようと思っている。
初めての告白でなんていうのが正解分からないけど、花火を観た後私は告白する。
後悔しない選択をしたい。悔いのない人生を歩みたい。
「そっか~。今日は楽しまないとね!」
「そうだな」
それから私たちは、様々な屋台を回った。
初めてやる金魚すくいは思ったより難しかった。それに、射的も難しくて景品なんて取れもしなかった。
そして今、私たちは花火が綺麗に観れるスポットに来ている。
「ここ、綺麗に観れるんだよね」
誠君はどうやら調べていたらしい。
「わざわざ調べてくれたの?」
「うん。花火は綺麗に観たいからさ」
「ありがとね。本当に」
「別に大丈夫だよ」
「誠君変わったね」
「うん。変わったよ!」
「本当に変わったよ! 誠君は」
「僕は救われたんだよ。琴音にさ」
誠は落ち着いた様子で言う。
誠君は私の名前を呼ぶ。
今まで呼ぶことなんてなかったのに。
「初めて琴音と喋った時から随分経つけどまだ鮮明に覚えてるよ。あの日琴音が話しかけていなかったら僕はまだ暗闇に居たと思う、本当にありがとう。僕を救ってくれて」
「もー。そこまで私は頑張ってないよ! 誠君が頑張ったからだよ」
「素直に受け取ってよ」
誠君は笑みを浮かべる。
花火が上がるまでまだ時間が残っている。
今告白をし付き合えば、きっと世界で一番綺麗な花火が観れる。
「うん。ここは素直に受け取ろうかな!」
私は気持ちを落ち着かせる。失敗する可能性だってあるのだから。
「ねぇ、生きる意味はできた?」
私の一言で誠君は頬を緩める。
「うん。琴音のために生きるよ」
数秒だけ時間が止まるような感覚になる。
今誠君が言ったことは聞き間違いではないのだろうか。もし、聞き間違いではないのなら、泣いてしまう。
胸の鼓動が速くなる。これは病気のせいではない、きっと恋のせいなんだ。
琴音は意を決し、想いを口に出そうとしたとき、時計の針はとっくに動いていた。
「もし、誠君が良いならさ私と付き「もう終わりにしよう」合って」
え?
想いを口に出した時、花火が上がった。
花火の音なんて思ったより小さくて誠君の声の方が大きかった。
花火の音がもう少しだけ大きかったら聞こえていなかった。でも小さかった。
「え」
私は誠君を見つめる。
誠君は初めて泣いていた。
誠視点。
「もし、誠君がいいなら私と付き「もう終わりにしよう」合って」
僕は琴音の言葉を遮断する。
今までに感じたことがない痛みが胸と頭に走る。
祭り会場に着いた時から時間が経つにつれ頭の痛さが強まっている。けど、そんな痛みは我慢できた。
一番痛いのは胸の痛みだ。
琴音の人生初めての告白を台無しにしたことが一番痛いし苦しい。
胸がじんじんと痛みの悲鳴をあげる。
前までは無かった想いが溢れてくるような感覚になる。
好きだ。分かっている。
僕は琴音のことが好きだ。でも、僕は死ぬ。
異常じゃないほど痛い頭がそう伝えているんだ。もう時間はないぞって、お前は死ぬ運命だって。
「琴音。もうこの関係も終わりにしよう」
僕は花火を眺める。
今琴音の顔を見てしまえば気が緩んでしまいそうで嫌だったから。
それに、こんなに号泣している姿なんて見せたくなかったら。
「どうして?」
琴音の声は震えていた。その声で分かる、琴音は泣いている。
胸の痛みがどんどん酷くなる。
「なんていうかな。琴音の時間は限られてるし、もっと大切な人と過ごした方がいいと思うんだ」
「嘘つかないでよ」
「嘘じゃないよ。本当に思ってるんだ」
「なんでよ。なんで今なの? 絶対に嘘だよ」
「嘘じゃないよ」
「教えてよ。どうして今なの?」
「たまたまだよ。今日が良いと思ったから」
僕は冷たい声で言う。
泣いているのに、偽りの声でバレないように冷たく言う。
「ねぇ、私のことは好きじゃないの?」
琴音は小さく呟いた。
「好きじゃない」
僕はこれまでの人生の中で初めて嘘を吐いた。本当は好きでたまらないのに、それなのに嘘を付いた。
好きだと伝えてしまったら、琴音はこれから先、悲しみという感情を背負いながら生きて行くことになる。それは避けたかった、だから僕は嘘を付く。
人生で最初で最後の大嘘を。
「誠、君、大っ嫌い」
琴音は泣きながらどこかに向かって歩いて行く。
追いかけることはしなかった。
もう決めたんだ。琴音のために生きると。
パンと一番でかい花火が上がる。
とても綺麗で切なくて綺麗な花火が。
大きく咲いた花火は散っていく。
そんな花火を観て思う。
琴音、僕は君と出会えて本当に良かった。
綺麗な花火は綺麗に散った。
「ちょっと待っといて」
「うん」
誠は琴音の家の前に立ち、琴音が来るの待っている。
琴音はどうやら浴衣を着たいらしく、それの準備を待っているのだ。
付き合っていないのにまさか夏祭りに行けるとは、どんな得を前世で積んでいるんだ。
誠はニコニコと笑いながら琴音が出てくるの待つ。
それと同時に一枚のカードを見つめる。
鞄からペンを取り出し、記入欄のチェックマークを書く。
思ったよりインクが溢れる。
僕のしていることは君の運命を変えるものだと信じている。やっと生きる意味を見つけたんだ。
数ヶ月前の僕では考えられない行動をしている。
ポケットにカードをしまい、ペンを鞄にしまった。
それから数分程経ち、琴音が浴衣を着て家から出てきた。
「お待たせ~」
紅色の浴衣は当たりを照らすほど輝いていた。
誰が見ても美人だと思うほどで、言葉を失ってしまう。
「似合ってるよ」
僕は自然な笑みを零し、琴音に言う。
すると、照れているのか耳を赤く染める。
「ありがと!」
照れているのを隠し「行こ」と小さく琴音は呟いた。
そして、僕は最初で最後の夏祭りデートに向かった。
琴音視点。
行かないと決めていた夏祭りに向かって歩いている。嫌な思いをするからと避けていた夏祭りが今は楽しみで仕方が無かった。
病気のせいであるのか、胸の鼓動がいつもより速く。少しだけ呼吸が乱れてしまう。
けど、そんなことはどうでもよかった。今は隣にいる誠君と一緒に居れることが嬉しかった。
隣に歩く誠君は大人びている。
「夏祭りに行くのって初めて?」
私は誠君の問う。
「うん。だから今、楽しみなんだ」
誠君は笑みを浮かべる。
そんな笑みを見て思う、最初に出会った日からは誠君は本当に変わった。
明るい性格で、楽しく話すようになっている。
変わった誠君を見て、私のしてきたことに意味があるんだと実感する。
最初救いたいと思ういなや好奇心から近付いたのに、それは変わって今はずっと一緒に居たいと思い始めている。
分からなくなった愛という気持ちは今なら分かる。
私は誠君が好きだ。
けど、私は死ぬ。
数カ月の命しかないのに、私は誠君と付き合うことができるのだろうか。
でも、私は逃げたくないし後悔もしたくない。
だから、今日告白しようと思っている。
初めての告白でなんていうのが正解分からないけど、花火を観た後私は告白する。
後悔しない選択をしたい。悔いのない人生を歩みたい。
「そっか~。今日は楽しまないとね!」
「そうだな」
それから私たちは、様々な屋台を回った。
初めてやる金魚すくいは思ったより難しかった。それに、射的も難しくて景品なんて取れもしなかった。
そして今、私たちは花火が綺麗に観れるスポットに来ている。
「ここ、綺麗に観れるんだよね」
誠君はどうやら調べていたらしい。
「わざわざ調べてくれたの?」
「うん。花火は綺麗に観たいからさ」
「ありがとね。本当に」
「別に大丈夫だよ」
「誠君変わったね」
「うん。変わったよ!」
「本当に変わったよ! 誠君は」
「僕は救われたんだよ。琴音にさ」
誠は落ち着いた様子で言う。
誠君は私の名前を呼ぶ。
今まで呼ぶことなんてなかったのに。
「初めて琴音と喋った時から随分経つけどまだ鮮明に覚えてるよ。あの日琴音が話しかけていなかったら僕はまだ暗闇に居たと思う、本当にありがとう。僕を救ってくれて」
「もー。そこまで私は頑張ってないよ! 誠君が頑張ったからだよ」
「素直に受け取ってよ」
誠君は笑みを浮かべる。
花火が上がるまでまだ時間が残っている。
今告白をし付き合えば、きっと世界で一番綺麗な花火が観れる。
「うん。ここは素直に受け取ろうかな!」
私は気持ちを落ち着かせる。失敗する可能性だってあるのだから。
「ねぇ、生きる意味はできた?」
私の一言で誠君は頬を緩める。
「うん。琴音のために生きるよ」
数秒だけ時間が止まるような感覚になる。
今誠君が言ったことは聞き間違いではないのだろうか。もし、聞き間違いではないのなら、泣いてしまう。
胸の鼓動が速くなる。これは病気のせいではない、きっと恋のせいなんだ。
琴音は意を決し、想いを口に出そうとしたとき、時計の針はとっくに動いていた。
「もし、誠君が良いならさ私と付き「もう終わりにしよう」合って」
え?
想いを口に出した時、花火が上がった。
花火の音なんて思ったより小さくて誠君の声の方が大きかった。
花火の音がもう少しだけ大きかったら聞こえていなかった。でも小さかった。
「え」
私は誠君を見つめる。
誠君は初めて泣いていた。
誠視点。
「もし、誠君がいいなら私と付き「もう終わりにしよう」合って」
僕は琴音の言葉を遮断する。
今までに感じたことがない痛みが胸と頭に走る。
祭り会場に着いた時から時間が経つにつれ頭の痛さが強まっている。けど、そんな痛みは我慢できた。
一番痛いのは胸の痛みだ。
琴音の人生初めての告白を台無しにしたことが一番痛いし苦しい。
胸がじんじんと痛みの悲鳴をあげる。
前までは無かった想いが溢れてくるような感覚になる。
好きだ。分かっている。
僕は琴音のことが好きだ。でも、僕は死ぬ。
異常じゃないほど痛い頭がそう伝えているんだ。もう時間はないぞって、お前は死ぬ運命だって。
「琴音。もうこの関係も終わりにしよう」
僕は花火を眺める。
今琴音の顔を見てしまえば気が緩んでしまいそうで嫌だったから。
それに、こんなに号泣している姿なんて見せたくなかったら。
「どうして?」
琴音の声は震えていた。その声で分かる、琴音は泣いている。
胸の痛みがどんどん酷くなる。
「なんていうかな。琴音の時間は限られてるし、もっと大切な人と過ごした方がいいと思うんだ」
「嘘つかないでよ」
「嘘じゃないよ。本当に思ってるんだ」
「なんでよ。なんで今なの? 絶対に嘘だよ」
「嘘じゃないよ」
「教えてよ。どうして今なの?」
「たまたまだよ。今日が良いと思ったから」
僕は冷たい声で言う。
泣いているのに、偽りの声でバレないように冷たく言う。
「ねぇ、私のことは好きじゃないの?」
琴音は小さく呟いた。
「好きじゃない」
僕はこれまでの人生の中で初めて嘘を吐いた。本当は好きでたまらないのに、それなのに嘘を付いた。
好きだと伝えてしまったら、琴音はこれから先、悲しみという感情を背負いながら生きて行くことになる。それは避けたかった、だから僕は嘘を付く。
人生で最初で最後の大嘘を。
「誠、君、大っ嫌い」
琴音は泣きながらどこかに向かって歩いて行く。
追いかけることはしなかった。
もう決めたんだ。琴音のために生きると。
パンと一番でかい花火が上がる。
とても綺麗で切なくて綺麗な花火が。
大きく咲いた花火は散っていく。
そんな花火を観て思う。
琴音、僕は君と出会えて本当に良かった。
綺麗な花火は綺麗に散った。



