言われている意味がしばらくわからなかった。
百年後から来たって言った、よね? タイムマシンは理論的には作れないことはないって前にお父さんが言ってたけれど、たった百年後の科学力で開発されているとは思えない。だいたい、タイムマシンが作られていたとしたらこの世は未来人だらけになる。
未来人がひとりもいないということが、タイムマシンは未来永劫発明されないという証明なんじゃないのか。
「ええと……それ、なんかのネタ?」
コスプレなのか病気なのか知らないけど真っ白な髪と、銀色のスーツ。その服、わたしが知らないだけでアニメとか漫画のキャラなんだろうか。いきなり他人の病室に現れてこんなことを言うなんてふざけているにもほどがあるけれど、そう考えないと説明がつかない。
「ネタじゃないよ。僕は楓馬。陽彩ちゃんの運命を変えるために、百年後から来た」
イケメンーー―― いや楓馬は、柔和な笑みを浮かべて言った 繰り返した。
整った顔とやさしい優しい笑顔を見ていたらじりじりと腹が立ってきて、我知らず口調がきつくなる。
「意味不明なこと言わないで。百年後? 運命を変えにきた来た? あなた、どれだけ中二病なのよ。未来からやってくるなんて、そんなことありえるわけーー―― 」
「南部陽彩、十六歳。四月十二日生まれ、牡羊座のA型。身長百五十八センチ、体重は……」
「ちょ、ちょっと待ったーっ!」
体重を言われそうになってあわてて遮る。ていうか、今、わたしの誕生日とか血液型とか身長とか、すべて言い当てた? はじめて会ったはずなのに、なんでそんなこと知ってるんだろう。もしかして。
「あなた、わたしのストーカー?」
「そんなわけないじゃない、 言ったでしょ、未来から来たって。上から、陽彩ちゃんの情報を教えてもらっている」
「だからやめなよ、その中二病的未来人設定! 意味わかんないし、イタいだけだから!」
ああ、なんてやつに好かれてしまったんだろう。このストーカー男、わたしの体重まで知ってるの? どうやって調べたっていうんだ、ひとの個人情報を。
こんな男子、まじで知らない。学校にの男子にも、近所にも、親戚とかにもいない。お父さんがたまにテレビに出る関係でわたしもインタビューに答えたことがあったけれど、それでわたしの顔でも知ったんだろうか。だとしたらぞっとする。
わたしのことを調べあげて、ここまでやってくるなんて。
「とにかく帰って。どうやってそんなこと調べたのか知らないけれど、ストーカーに用はないから」
「僕が未来から来たって、どうしても信じられないみたいだね」
「信じられるわけないじゃない!」
どれだけ言葉をするどく鋭くしても、にこにこ笑っているだけの楓馬。いよいよぶちんと堪忍袋の緒が切れて、枕を思いきり投げつけた。楓馬はひらりと避ける。ああ、腹立たしい。
「どうやってわたしのことを調べたのか、どうやってここがわかったのか知らないけれど、とにかく出てって! そして金輪際、わたしにまとわりつかないで!!」
かみつく噛みつくように言うと、楓馬はしゅん、と眉を八の字にした。
「わかった。また、来るね」
そう言って病室を出てい行く。扉が閉まると、自然と大きなため息がこぼれた。
怒ったのなんて久しぶりだ。学校でも、お父さんの前でも、ずっといい子で過ごしてきたから。嫌なことがあっても怒らない、いつもにこにこ、そんないい子の南部陽彩でいた、つもりだった。
初対面にして一瞬でわたしの「いい子バリア」を破ってしまう楓馬は、本当に何者なんだろう。
百年後から来たって言った、よね? タイムマシンは理論的には作れないことはないって前にお父さんが言ってたけれど、たった百年後の科学力で開発されているとは思えない。だいたい、タイムマシンが作られていたとしたらこの世は未来人だらけになる。
未来人がひとりもいないということが、タイムマシンは未来永劫発明されないという証明なんじゃないのか。
「ええと……それ、なんかのネタ?」
コスプレなのか病気なのか知らないけど真っ白な髪と、銀色のスーツ。その服、わたしが知らないだけでアニメとか漫画のキャラなんだろうか。いきなり他人の病室に現れてこんなことを言うなんてふざけているにもほどがあるけれど、そう考えないと説明がつかない。
「ネタじゃないよ。僕は楓馬。陽彩ちゃんの運命を変えるために、百年後から来た」
イケメンーー―― いや楓馬は、柔和な笑みを浮かべて言った 繰り返した。
整った顔とやさしい優しい笑顔を見ていたらじりじりと腹が立ってきて、我知らず口調がきつくなる。
「意味不明なこと言わないで。百年後? 運命を変えにきた来た? あなた、どれだけ中二病なのよ。未来からやってくるなんて、そんなことありえるわけーー―― 」
「南部陽彩、十六歳。四月十二日生まれ、牡羊座のA型。身長百五十八センチ、体重は……」
「ちょ、ちょっと待ったーっ!」
体重を言われそうになってあわてて遮る。ていうか、今、わたしの誕生日とか血液型とか身長とか、すべて言い当てた? はじめて会ったはずなのに、なんでそんなこと知ってるんだろう。もしかして。
「あなた、わたしのストーカー?」
「そんなわけないじゃない、 言ったでしょ、未来から来たって。上から、陽彩ちゃんの情報を教えてもらっている」
「だからやめなよ、その中二病的未来人設定! 意味わかんないし、イタいだけだから!」
ああ、なんてやつに好かれてしまったんだろう。このストーカー男、わたしの体重まで知ってるの? どうやって調べたっていうんだ、ひとの個人情報を。
こんな男子、まじで知らない。学校にの男子にも、近所にも、親戚とかにもいない。お父さんがたまにテレビに出る関係でわたしもインタビューに答えたことがあったけれど、それでわたしの顔でも知ったんだろうか。だとしたらぞっとする。
わたしのことを調べあげて、ここまでやってくるなんて。
「とにかく帰って。どうやってそんなこと調べたのか知らないけれど、ストーカーに用はないから」
「僕が未来から来たって、どうしても信じられないみたいだね」
「信じられるわけないじゃない!」
どれだけ言葉をするどく鋭くしても、にこにこ笑っているだけの楓馬。いよいよぶちんと堪忍袋の緒が切れて、枕を思いきり投げつけた。楓馬はひらりと避ける。ああ、腹立たしい。
「どうやってわたしのことを調べたのか、どうやってここがわかったのか知らないけれど、とにかく出てって! そして金輪際、わたしにまとわりつかないで!!」
かみつく噛みつくように言うと、楓馬はしゅん、と眉を八の字にした。
「わかった。また、来るね」
そう言って病室を出てい行く。扉が閉まると、自然と大きなため息がこぼれた。
怒ったのなんて久しぶりだ。学校でも、お父さんの前でも、ずっといい子で過ごしてきたから。嫌なことがあっても怒らない、いつもにこにこ、そんないい子の南部陽彩でいた、つもりだった。
初対面にして一瞬でわたしの「いい子バリア」を破ってしまう楓馬は、本当に何者なんだろう。



