「 お父さん、お母さんと結婚する時おじいちゃんとおばあちゃんに反対されて大変だったって 、言ってたんだよね」
お母さんたちと別れた後、横浜の夜の空を疾走するデロリヤンの助手席で、楓馬に言った。眼下に広がる横浜の夜景は、暗闇に宝石をちりばめたようにきれいだった。みなとみらいに屹立(きつりつ) する観覧車が夜の端にぼんやりと光を広げている。
「そうなの?」
「うん。で、その時に助けてくれた人がいたんだって。名前も何もわからないんだけど、って。もしかしたらその人って、わたしだったのかな」
「だったら、よかったじゃないか。結果的に親を助けられたんだし、これで陽彩も無事にこの世に生まれる。むしろ陽彩が今日この時代に来なかったら、あのまま婚約は決裂していたかもしれないな」
後部座席からパオが飛び出してきて横やりを入れる。言い方はぶっきらぼうだけど、ロボットのくせに、なんとなく優しさの感じられる言葉だった。
ハンドルを握りながら、楓馬がちらっとこっちに視線を向けて言った。
「陽彩ちゃんの目的は、これで果たせた?」
「うん、ばっちり。ありがとう楓馬」
「じゃあここからは、僕の目的に付き合ってもらうよ」
「目的? 楓馬にこの時代に来る目的なんてあった?」
「横浜っていったら、デートスポットがたくさんあることで有名でしょ」
デート、という単語に心臓の奥がきゅ、と反応する。
楓馬から告白されていたこと、忘れてたわけじゃないけれど、なんだか急に現実に戻された気がする。
「なんだい楓馬、こんな夜中に陽彩を連れ回して。いかがわしいことでもするつもりか?」
再び横やりを入れるパオのおでこを、楓馬が人さし指で思いっきりはじいた。パオの丸っこい身体が後部座席の奥へ飛んでいく。
「おい、痛いぞ! ロボット虐待反対!」
「パオはお邪魔虫なんだから、充電モードにしちゃうよ。しばらくゆっくり寝てなさい」
「はいはい、わかりました。若い二人の邪魔はしませんよ」
パオが姿勢を正し、短い翼をぐいと伸ばしておでこを押さえた。
お母さんたちと別れた後、横浜の夜の空を疾走するデロリヤンの助手席で、楓馬に言った。眼下に広がる横浜の夜景は、暗闇に宝石をちりばめたようにきれいだった。みなとみらいに屹立(きつりつ) する観覧車が夜の端にぼんやりと光を広げている。
「そうなの?」
「うん。で、その時に助けてくれた人がいたんだって。名前も何もわからないんだけど、って。もしかしたらその人って、わたしだったのかな」
「だったら、よかったじゃないか。結果的に親を助けられたんだし、これで陽彩も無事にこの世に生まれる。むしろ陽彩が今日この時代に来なかったら、あのまま婚約は決裂していたかもしれないな」
後部座席からパオが飛び出してきて横やりを入れる。言い方はぶっきらぼうだけど、ロボットのくせに、なんとなく優しさの感じられる言葉だった。
ハンドルを握りながら、楓馬がちらっとこっちに視線を向けて言った。
「陽彩ちゃんの目的は、これで果たせた?」
「うん、ばっちり。ありがとう楓馬」
「じゃあここからは、僕の目的に付き合ってもらうよ」
「目的? 楓馬にこの時代に来る目的なんてあった?」
「横浜っていったら、デートスポットがたくさんあることで有名でしょ」
デート、という単語に心臓の奥がきゅ、と反応する。
楓馬から告白されていたこと、忘れてたわけじゃないけれど、なんだか急に現実に戻された気がする。
「なんだい楓馬、こんな夜中に陽彩を連れ回して。いかがわしいことでもするつもりか?」
再び横やりを入れるパオのおでこを、楓馬が人さし指で思いっきりはじいた。パオの丸っこい身体が後部座席の奥へ飛んでいく。
「おい、痛いぞ! ロボット虐待反対!」
「パオはお邪魔虫なんだから、充電モードにしちゃうよ。しばらくゆっくり寝てなさい」
「はいはい、わかりました。若い二人の邪魔はしませんよ」
パオが姿勢を正し、短い翼をぐいと伸ばしておでこを押さえた。



