キャンプの後に勢いでした初体験は、自分はゲイだろうかという微妙な気持ちに一区切りをつけてくれた。
國近とは相変わらずいい友達だ。
多少、人前でベタベタしてくるようにはなって、何回か心理室に行こうと誘われたが、二人のあいだにあった緊張感のようなものは無くなった。
あの後も2回國近の家でして、楽しかった。
1年生の9月からは毎月主要教科の実力テストがある。
放課後に希望者向けの七時間目と八時間目と呼ばれる補習があり、部活を最優先にしたいのは山々だが英語を2クラスと現代文と数学は出ることにした。
『スマホは捨てろ!』が口癖の数学の先生の前でうっかり鳴らした気のいいクラスメイトが、とんでもなく怒られたのをみてからは、昼休みまでスマホは電源を落とし、昼休み後も部活まで再度電源を落としてロッカーに放り込んでおく事にした。
みんなからは変わり者と言われたが、いつ鳴るか分からないモノを手放して気が楽だ。
走るのは相変わらず楽しい。
自己ベストを頻繁に更新し、学校の800メートルの記録も更新した。
走っている時にニヤける瞬間があるとフウナ先輩に指摘されてからは、ニヤけないようにしようと思うが、それでもフッと笑う瞬間があるらしかった。
春の大会に向けて集中するようにとコーチから言われて、気合いが入る。部活初体験で、そのような緊張感は新鮮だった。
10月の終わりに部活を終えて、家に8時過ぎに帰ると玄関に自分と同じサイズの見慣れぬスニーカーがあった。
「竜也!?」
居間へ行くと竜也がいて、唐突な帰省に驚く。
U16代表のキャンプで日本に来ていたのは知っていた。
「柊斗、話がある」
「なんだよ、怪我?」
「違う。キャンプ明けのオフ。明日の午前中まで」
「お母さんに帰って来るって話したか。今日たぶん夜勤……」
「してない。なあ、おれに言わなきゃいけない事あるか」
「陸上で県大会に出たこと…?」
「違う、けど県大会に出たのか。おめでとう」竜也の表情が優れない。
明智と國近のどちらかの話かもしれない。
國近も竜也と同じキャンプに参加していた。
「わかんねえ。教えて」
「付き合ってる人いるだろ」
「いない。高校卒業するまでは作らない」
「テツンドとは?あいつと宿舎でみんなで話してて…付き合ってる人がいるって言ってた。勉強も出来て背の高い陸上部。柊斗だろ」
「……ほんとに付き合ってない。どう言えば納得する?」
「からだ見せろ。テツンドはキャンプや遠征中に浮気は心配じゃないかって聞かれて、人に言えねえような所にキスマークつけてるって言ってた」
「え」
完全に動揺が顔に出た。
最後に会ったのはキャンプの直前に國近の家で、当然のようにそういう事もした。キスマークは何日残る?もう1週間は経っている。
「柊斗、ケツ見せろ」
「嫌だ。お母さん帰ってきたら?」
「俺が柊斗のケツ見てたくらいでお母さんは動じない」
「ここじゃ嫌だ」
尻にキスマーク、というのは國近が前の彼女にしていた事かもしれない。
された覚えは無かったが、夢中すぎてよく覚えていなかった。
「ほら、何も無い」肌寒い中、自分の部屋で間抜けにも尻を出して弟に見せる。
「竜也こそ彼女いるだろ。とっくに童貞じゃねえの知ってるからな」下着をひっぱり上げながら言った。
竜也が無視して勉強机の引き出しを上から開けて行き、ローションとゴムを出してベッドに投げた。
「これは」
「ひとりでするときに使ってる」
言い訳はそれしかない。
「もう一度ケツ見せろ」
いいとも悪いとも言う前に、ベッドにあおむけに倒されてズボンと下着を引きずり降ろされ、脚を開かされる。
「キスマーク見つかったってテツンドに言えよ、ここ」竜也はぐいとキスマークが隠れていたらしい足の付根を押した。
「やめろって」振り払い、服を着直した。
「なんでテツンドと付き合ってるって言わない?」
「付き合ってない。……ヤッてるだけ」
「國近は付き合ってるって言ってる」
「俺の他に付き合ってる奴がいるんだろ。陸上は人数多い」
「柊斗、テツンドはやめて」
「明智ならいいのか。俺たち中一の時、付き合ってた」
「明智も嫌だ」
「誰ならいいんだよ。俺たちもうすぐ17歳になる。性欲だって普通にある。竜也は女とヤッてんだろ?なんで俺だけ我慢しなきゃなんない?ゲイだから許せない?生理的に無理?」
竜也が抱きついてきて、重さに耐えられず二人ベッドに倒れた。
「俺が女の子としてたって知ってたんだ。知られたくなかった」
「なんで」
「柊斗以外に大切な人がいるって思われたくない」
「もう別々に住んでる。身近に好きな人がいたほうがいいだろ」
「でも柊斗が一番好きなんだ」
「好きって…小学校の入学式覚えてるか。オレと竜也は出られなかった。竜也が俺と違うクラスは嫌だって泣いたから」
「覚えてる。本気で保育園に戻るつもりだった」
「好きでも、そうやって抱きついてても、明日はスペインに戻るだろ?」
「一緒に行こう」
「無理だ」
竜也の背中を撫でた。
幼い発言をして甘えても、現実では他の多くの人間よりも先に、竜也は大人にならなければならない。
「柊斗はテツンドが好き?」
「わかんねえ。性欲発散してるだけかも」
竜也が思い詰めたように見つめてからキスしてきた。
あのPKの時のキスのようにくすぐったくは無かった。
「何したか教えて」
「お前が女とヤッてるのと変わらない。國近とセックスしてるだけ」
「テツンドが柊斗に挿れてんの」
「そうだ。俺もそうされたい」
竜也の表情が変だ、と思う。
「竜也、やめろ」
「女にするみたいに柊斗にする」
気がついた時には手遅れだ。親も留守で、枕元にはゴムとローションがあった。
「柊斗が好きだ」
言った後に竜也は言葉にした事を悔いるように、大きく息を吐いた。
「竜也の好きってそういう好き?」
「他の奴に取られたくない」
「俺に何かしようとしても勃たねえだろ」
もう一度キスされ、キスは深くなった。
下着に手が入ってきて触られる。
「双子って何もかも似てる、自分の握ってるみたい」
竜也に手を引っ張られて握らされて、納得する。触り方は全て気持ちのいいポイントをついていて、次第にその気になり竜也が服を脱ぎ、脱がされて全裸になる。
竜也がローションに手を伸ばした。
「柊斗、これどうやって使うの」
二人ともきっとしたく無かった。
二人のあいだによけいなものが入って来すぎて、そうせざるを得なかった。
プラレールやミニカーすら手放せない竜也が、双子の片割れを手放すなど最初から無理だ。
向かい合わせで竜也の顔を見ながら受け入れて、汗ばんでいる頬を触る。
「竜也、平気?」
「俺が聞くほうだろ。柊斗、痛くない?」
「すげぇ気持ちいい、見て」
「エロ…今まで柊斗をエロいって思ったこと無かったのに」泣きそうな顔で言われ、引き寄せて自分からキスした。
「俺も竜也が好き。顔見ながらしようぜ。腰のここつかんで…思いっきりしていい」
余裕があったのはそこまでで、その後は悲鳴のような声を上げてグチャグチャになった。
「幸せと死にたいを同時に感じてる」竜也が言った。
ベッドで竜也を裸で抱きしめていると、不思議と昔もこういう事があった気がして、コアラのように全身でぎゅっと抱きついた。
「もう吹っ切れた。何の罪悪感も感じない。竜也とこうしてるのが一番いい。明智とも國近とも、竜也とこうなるための予行演習だった気がする」
引き寄せられるようにキスして見つめ合う。
「俺は全部竜也にあげた。スペインに帰ってもこれでさみしくないだろ。スペインで女の子と付き合ってもいい。結婚しても子供が生まれても、これから先ずっと会えなくても大丈夫」
「なんでそんな事言うんだよ」
「竜也がサッカーしてるのを観るのがすげぇ好きなんだ。竜也にはプロとして成功して欲しい。これから先、別々の生活をしている竜也をずっと想ってる」
「柊斗と一緒にいたいんだって」
「ずっと一緒だ。竜也が思ってるより、俺たちはずっと一緒にいる。だから安心して俺から離れて」
小学1年生初日と同じ説得を、今またしていた。
「それでも柊斗とこうやってくっついて一緒に寝て、話したい。毎日」
「じゃあいつか迎えに来いよ」竜也に届きそうもないパスを出す。
「できるだけ早く来る」二人で笑った。
翌日、竜也はスペインに帰った。
國近とは相変わらずいい友達だ。
多少、人前でベタベタしてくるようにはなって、何回か心理室に行こうと誘われたが、二人のあいだにあった緊張感のようなものは無くなった。
あの後も2回國近の家でして、楽しかった。
1年生の9月からは毎月主要教科の実力テストがある。
放課後に希望者向けの七時間目と八時間目と呼ばれる補習があり、部活を最優先にしたいのは山々だが英語を2クラスと現代文と数学は出ることにした。
『スマホは捨てろ!』が口癖の数学の先生の前でうっかり鳴らした気のいいクラスメイトが、とんでもなく怒られたのをみてからは、昼休みまでスマホは電源を落とし、昼休み後も部活まで再度電源を落としてロッカーに放り込んでおく事にした。
みんなからは変わり者と言われたが、いつ鳴るか分からないモノを手放して気が楽だ。
走るのは相変わらず楽しい。
自己ベストを頻繁に更新し、学校の800メートルの記録も更新した。
走っている時にニヤける瞬間があるとフウナ先輩に指摘されてからは、ニヤけないようにしようと思うが、それでもフッと笑う瞬間があるらしかった。
春の大会に向けて集中するようにとコーチから言われて、気合いが入る。部活初体験で、そのような緊張感は新鮮だった。
10月の終わりに部活を終えて、家に8時過ぎに帰ると玄関に自分と同じサイズの見慣れぬスニーカーがあった。
「竜也!?」
居間へ行くと竜也がいて、唐突な帰省に驚く。
U16代表のキャンプで日本に来ていたのは知っていた。
「柊斗、話がある」
「なんだよ、怪我?」
「違う。キャンプ明けのオフ。明日の午前中まで」
「お母さんに帰って来るって話したか。今日たぶん夜勤……」
「してない。なあ、おれに言わなきゃいけない事あるか」
「陸上で県大会に出たこと…?」
「違う、けど県大会に出たのか。おめでとう」竜也の表情が優れない。
明智と國近のどちらかの話かもしれない。
國近も竜也と同じキャンプに参加していた。
「わかんねえ。教えて」
「付き合ってる人いるだろ」
「いない。高校卒業するまでは作らない」
「テツンドとは?あいつと宿舎でみんなで話してて…付き合ってる人がいるって言ってた。勉強も出来て背の高い陸上部。柊斗だろ」
「……ほんとに付き合ってない。どう言えば納得する?」
「からだ見せろ。テツンドはキャンプや遠征中に浮気は心配じゃないかって聞かれて、人に言えねえような所にキスマークつけてるって言ってた」
「え」
完全に動揺が顔に出た。
最後に会ったのはキャンプの直前に國近の家で、当然のようにそういう事もした。キスマークは何日残る?もう1週間は経っている。
「柊斗、ケツ見せろ」
「嫌だ。お母さん帰ってきたら?」
「俺が柊斗のケツ見てたくらいでお母さんは動じない」
「ここじゃ嫌だ」
尻にキスマーク、というのは國近が前の彼女にしていた事かもしれない。
された覚えは無かったが、夢中すぎてよく覚えていなかった。
「ほら、何も無い」肌寒い中、自分の部屋で間抜けにも尻を出して弟に見せる。
「竜也こそ彼女いるだろ。とっくに童貞じゃねえの知ってるからな」下着をひっぱり上げながら言った。
竜也が無視して勉強机の引き出しを上から開けて行き、ローションとゴムを出してベッドに投げた。
「これは」
「ひとりでするときに使ってる」
言い訳はそれしかない。
「もう一度ケツ見せろ」
いいとも悪いとも言う前に、ベッドにあおむけに倒されてズボンと下着を引きずり降ろされ、脚を開かされる。
「キスマーク見つかったってテツンドに言えよ、ここ」竜也はぐいとキスマークが隠れていたらしい足の付根を押した。
「やめろって」振り払い、服を着直した。
「なんでテツンドと付き合ってるって言わない?」
「付き合ってない。……ヤッてるだけ」
「國近は付き合ってるって言ってる」
「俺の他に付き合ってる奴がいるんだろ。陸上は人数多い」
「柊斗、テツンドはやめて」
「明智ならいいのか。俺たち中一の時、付き合ってた」
「明智も嫌だ」
「誰ならいいんだよ。俺たちもうすぐ17歳になる。性欲だって普通にある。竜也は女とヤッてんだろ?なんで俺だけ我慢しなきゃなんない?ゲイだから許せない?生理的に無理?」
竜也が抱きついてきて、重さに耐えられず二人ベッドに倒れた。
「俺が女の子としてたって知ってたんだ。知られたくなかった」
「なんで」
「柊斗以外に大切な人がいるって思われたくない」
「もう別々に住んでる。身近に好きな人がいたほうがいいだろ」
「でも柊斗が一番好きなんだ」
「好きって…小学校の入学式覚えてるか。オレと竜也は出られなかった。竜也が俺と違うクラスは嫌だって泣いたから」
「覚えてる。本気で保育園に戻るつもりだった」
「好きでも、そうやって抱きついてても、明日はスペインに戻るだろ?」
「一緒に行こう」
「無理だ」
竜也の背中を撫でた。
幼い発言をして甘えても、現実では他の多くの人間よりも先に、竜也は大人にならなければならない。
「柊斗はテツンドが好き?」
「わかんねえ。性欲発散してるだけかも」
竜也が思い詰めたように見つめてからキスしてきた。
あのPKの時のキスのようにくすぐったくは無かった。
「何したか教えて」
「お前が女とヤッてるのと変わらない。國近とセックスしてるだけ」
「テツンドが柊斗に挿れてんの」
「そうだ。俺もそうされたい」
竜也の表情が変だ、と思う。
「竜也、やめろ」
「女にするみたいに柊斗にする」
気がついた時には手遅れだ。親も留守で、枕元にはゴムとローションがあった。
「柊斗が好きだ」
言った後に竜也は言葉にした事を悔いるように、大きく息を吐いた。
「竜也の好きってそういう好き?」
「他の奴に取られたくない」
「俺に何かしようとしても勃たねえだろ」
もう一度キスされ、キスは深くなった。
下着に手が入ってきて触られる。
「双子って何もかも似てる、自分の握ってるみたい」
竜也に手を引っ張られて握らされて、納得する。触り方は全て気持ちのいいポイントをついていて、次第にその気になり竜也が服を脱ぎ、脱がされて全裸になる。
竜也がローションに手を伸ばした。
「柊斗、これどうやって使うの」
二人ともきっとしたく無かった。
二人のあいだによけいなものが入って来すぎて、そうせざるを得なかった。
プラレールやミニカーすら手放せない竜也が、双子の片割れを手放すなど最初から無理だ。
向かい合わせで竜也の顔を見ながら受け入れて、汗ばんでいる頬を触る。
「竜也、平気?」
「俺が聞くほうだろ。柊斗、痛くない?」
「すげぇ気持ちいい、見て」
「エロ…今まで柊斗をエロいって思ったこと無かったのに」泣きそうな顔で言われ、引き寄せて自分からキスした。
「俺も竜也が好き。顔見ながらしようぜ。腰のここつかんで…思いっきりしていい」
余裕があったのはそこまでで、その後は悲鳴のような声を上げてグチャグチャになった。
「幸せと死にたいを同時に感じてる」竜也が言った。
ベッドで竜也を裸で抱きしめていると、不思議と昔もこういう事があった気がして、コアラのように全身でぎゅっと抱きついた。
「もう吹っ切れた。何の罪悪感も感じない。竜也とこうしてるのが一番いい。明智とも國近とも、竜也とこうなるための予行演習だった気がする」
引き寄せられるようにキスして見つめ合う。
「俺は全部竜也にあげた。スペインに帰ってもこれでさみしくないだろ。スペインで女の子と付き合ってもいい。結婚しても子供が生まれても、これから先ずっと会えなくても大丈夫」
「なんでそんな事言うんだよ」
「竜也がサッカーしてるのを観るのがすげぇ好きなんだ。竜也にはプロとして成功して欲しい。これから先、別々の生活をしている竜也をずっと想ってる」
「柊斗と一緒にいたいんだって」
「ずっと一緒だ。竜也が思ってるより、俺たちはずっと一緒にいる。だから安心して俺から離れて」
小学1年生初日と同じ説得を、今またしていた。
「それでも柊斗とこうやってくっついて一緒に寝て、話したい。毎日」
「じゃあいつか迎えに来いよ」竜也に届きそうもないパスを出す。
「できるだけ早く来る」二人で笑った。
翌日、竜也はスペインに帰った。

