『川園真理子ちゃんを捜さないでください』
私がこの張り紙を見つけたのはまったくの偶然でした。
いつもの通学路が道路工事で封鎖されていて、あまり通ったことのない脇道を歩いていたらそれを見つけたのです。
最初は見間違いかと思いました。次に、文字の打ち間違いかと思いました。
捜さないでください、ではなく、捜してくださいだと思いました。
だって、おかしいじゃないですか。捜さないでほしいなら、わざわざ張り紙にしなければいいのに。しなければ、誰だって捜しません。
「なになに、川園真理子ちゃん十歳、身長百三十一センチ、やせ型」
写真は無く、似顔絵が書かれていました。こんなに詳細に書かれているのに、顔写真がないなんて。やはり、何かおかしな張り紙であることには違いありマせん。
「この辺の小学校だろうから、山野辺小かなぁ」
近所の小学校を思い浮かべて下にある文字を読み進めていくと、連絡先が書かれていました。固定電話のようです。私はスマートフォンを鞄から取り出し、なんとなくそれを写真に収めました。連絡するわけでも、捜すわけでもありません。ただ、撮ったのです。
あるじゃないですか。別に興味はないけど、もしかしたらあとで見直すかもしれないからとりあえず写真で残しておくことって。この子に見覚えはないけれども、いつか何かの役に立つかもしれない。そんな保険という名の言い訳を残してその場を去りました。
数歩歩いて後ろを向いてみますが、誰かが通る様子はありません。張り紙をじっと見つめていたことがなんだか恥ずかしくなり、足早にアパートへと帰りました。
一人きりの部屋で寝転がると、先ほどのことが思い起こされます。妙に古臭い張り紙でした。ずいぶん前から貼られているのでしょう。ということは、あの子はその当時から見つかっていないということです。
「結構前なのかな」
写真のデータを見返してみると、私はあることに気が付き飛び上がりました。
「え、文字が」
写真の中にある「捜さないでください」のところにペンで書きなぐったような落書きがあったのです。もちろん、加工など施していません。誰に見せるわけでもない、そのようなことをする必要がありません。
指でなぞってみても、当たり前に消えません。編集画面にして消しゴムを使っても消えません。まるで最初からある落書きのようでした。
「いや、たしかに捜さないでくださいって書いてあった」
いくら考えてみても、理由は分かりませんでした。夜になっても落書きは消えず、私は明日またあの場所へ行くことにしました。そして、この出来事の経過を書き記すことにしたのです。きっと、私のように興味をそそられる人がいるだろう、そう思って。
私がこの張り紙を見つけたのはまったくの偶然でした。
いつもの通学路が道路工事で封鎖されていて、あまり通ったことのない脇道を歩いていたらそれを見つけたのです。
最初は見間違いかと思いました。次に、文字の打ち間違いかと思いました。
捜さないでください、ではなく、捜してくださいだと思いました。
だって、おかしいじゃないですか。捜さないでほしいなら、わざわざ張り紙にしなければいいのに。しなければ、誰だって捜しません。
「なになに、川園真理子ちゃん十歳、身長百三十一センチ、やせ型」
写真は無く、似顔絵が書かれていました。こんなに詳細に書かれているのに、顔写真がないなんて。やはり、何かおかしな張り紙であることには違いありマせん。
「この辺の小学校だろうから、山野辺小かなぁ」
近所の小学校を思い浮かべて下にある文字を読み進めていくと、連絡先が書かれていました。固定電話のようです。私はスマートフォンを鞄から取り出し、なんとなくそれを写真に収めました。連絡するわけでも、捜すわけでもありません。ただ、撮ったのです。
あるじゃないですか。別に興味はないけど、もしかしたらあとで見直すかもしれないからとりあえず写真で残しておくことって。この子に見覚えはないけれども、いつか何かの役に立つかもしれない。そんな保険という名の言い訳を残してその場を去りました。
数歩歩いて後ろを向いてみますが、誰かが通る様子はありません。張り紙をじっと見つめていたことがなんだか恥ずかしくなり、足早にアパートへと帰りました。
一人きりの部屋で寝転がると、先ほどのことが思い起こされます。妙に古臭い張り紙でした。ずいぶん前から貼られているのでしょう。ということは、あの子はその当時から見つかっていないということです。
「結構前なのかな」
写真のデータを見返してみると、私はあることに気が付き飛び上がりました。
「え、文字が」
写真の中にある「捜さないでください」のところにペンで書きなぐったような落書きがあったのです。もちろん、加工など施していません。誰に見せるわけでもない、そのようなことをする必要がありません。
指でなぞってみても、当たり前に消えません。編集画面にして消しゴムを使っても消えません。まるで最初からある落書きのようでした。
「いや、たしかに捜さないでくださいって書いてあった」
いくら考えてみても、理由は分かりませんでした。夜になっても落書きは消えず、私は明日またあの場所へ行くことにしました。そして、この出来事の経過を書き記すことにしたのです。きっと、私のように興味をそそられる人がいるだろう、そう思って。