そこからというもの毎日放課後海へ行き死神と会う日を待った
三分の一ぐらいの確率で死神はいる

「陽〜今日も来たのか」
「死神さん!今日お仕事はなかったんですか?」
「この後あるかな」

ということはまた誰か亡くなってしまう

「あ、ねぇ今日、あの扉くぐり抜けるとこ見てみたいんですけどだめですか?」
「いいけど長いぞ?………まぁとりあえず来い」

だいぶこの闇の中を通ることにはなれたな

(なんか今日つかれてるのかな…?息があがっちゃう)

「大丈夫か?」
「少し息があがっちゃって」

気がつくともうついていた

「もう来るんですか?お客…さん?」
「うん、あと数分後かな。入って待っとけ」

死神はどうやら玄関でお迎えをしないといけないみたいだ
私は大人しく荘の中で大人しく待っていた
数分後死神の声が聞こえてきた

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

(お待ちして…おりました…?待ってたのか…)

死神が私のところへ来て耳元で囁いた

「前にも言ったと思うがここでは陽のこと見えるやつは誰もいないし聞こえない。じっとしてろよ」
「わかってますよ」

死神が仕事をしているところを見れると思うと少しだけワクワクする

「こちらへお座りください。えー、今から読み上げる文章に間違いがないか確認をお願い致します。田村洋一。63歳。死因、癌。職業、え…?なし…?」
「あ…わしは昔から入院生活でね…働く時間もなかったんだよ…」
「そうでしたか。では洋一さん。こちらをお吸いください」

出てきたのは来世で今世の記憶を消すものだった

「これを…吸わないといけないのかね…?」
「こちらは記憶を消すものとなっております。もし消したくないのであれば吸わないなど、自己判断で構いませんが、いまの記憶をもった状態ですと、次の世で大変ご自身のお体に影響が出てしまい、幸せという日々を送れないかと思われます」

洋一さんは少し黙り込んだ

「そういや…ここに来るのは2度目だったねぇ…前世の記憶がわしにはあったな…。吸わなかったのだね…今世でこん〜な思いしてしもうたからしっかり吸わせてもらいます…」
「そうでしたか。では…」

洋一さんは少しためらってしまってるようには見えたけどすぐに吸った

「ありがとうございました…」

「最後にここにサインをお願い致します」 

これが本当の最後

「63年2ヶ月と7日。お疲れ様でした。扉が開きます。危ないですのでこちらへ」

洋一さんはとぼとぼと扉の横へ来た

(扉の中初めて見るな)

扉の中には白くて長い階段があって、
階段の下には一人の女性が立っていた

「これはこれは…母さん…お久しぶりですな…元気にしておったかね…」

扉の中には洋一さんの亡くなったお母さんがいる

「はい…。そちらもよーくここまでこれましたね」

(こうやって再開して逝くんだな)

死神は深々と頭を下げて洋一さんが十段階段を上るまで頭を下げ続けた
十段上り終えた頃そっと扉を閉める

「なんか新鮮でした…」
「どういう意味?」

私は少し微笑むことしかできなかった

「なぁ陽。俺昔死ぬことはできないって言ったよな」
「…言ってましたね」
「あーいや、なんでもない」
「あ、はい」

死神は私の手を掴み死神の心臓の場所へ私の手を引っ張った

「え…?」

死神の鼓動は感じ取れなかった
頭を撫でられた頃から本当は思っていた
手は人間のような温みはなく、少し冷たい

「死神さん…」