逃げ回る相手。間合いを保ち遠距離から炎を撃ち続けてくる。それを躱しつつ、炎の玉をある一点に誘導する。狙うはグラウンドに置かれたスプリンクラーの手前の地面。うまいことスプリンクラーと僕自身に直撃しないように慎重に位置をとり、攻撃の構えで相手の全力の迎撃を誘う。
長い見つめ合いからの先制攻撃のチャンスと思った相手は先程までのより3倍は巨大な火球を放つが、初めから攻撃する気のなかった僕は左に全力疾走、避けつつ見事にスプリンクラーの手前で着爆させる。これで戦局がこっちに傾くはず!
砂利の乾燥を検知したスプリンクラーが作動音と共に水を撒き始める。(果たして乾燥ってレベルなのかな?)予想外の人工降雨に驚く相手を横目に僕は宙に舞った雨水をかき集め、相手の周囲に檻の形を映し出す。
迫り来る水の牢獄。閉じる領域。スプリンクラーの水を操り僕は相手を閉じ込め、炎を掻き消しながら範囲を狭め相手ごと押し潰そうとする。
相手の参ったコールと審判の止めの合図までそう時間はかからなかった。僕の勝ち、準決勝進出だ。
「サーシャ!お前の水魔法はすごいな!」
「えへへ、それほどでも」
卒業戦、中学卒業の恒例行事。3年間学んできた成果を見せるため、仲間や友達と楽しむため、己が強さを見せつけ誇示するため、と理由はいろいろあるが、卒業式の前日に僕らは戦うことになっている。
魔法。それは誰もが持つ力、あるいは一種の特技や個性。サッカーや野球も練習すればある程度上手くなるように、誰でも覚えられる汎用魔法もある。しかしやはり一番注目されるのは生まれつき一つだけ持つ固有の魔法"天稟魔法"だ。
その中でも大当たりと言われるのは火力・範囲ともに優れる炎魔法、あるいは誰もが憧れる時間操作の魔法などだろうか。一方、僕の持つ水魔法は不遇とされていて、汎用の補助魔法を中心とした戦術が必要になるほど単体では頼りないものとされている。そしてさらに相性次第では…
「せめて勝負ぐらいはしなさいよ」
「勝負する間もないくらい一瞬で負けたんだよ」
この通り。水のバリアに電流を流されて感電、即ダウンしてしまった。水に限った話ではないけど、能力の相性次第では実力差があっても一瞬のうちに逆転が起こって格上が負けてしまうことさえある。僕が格上とは言わないけども、対等ぐらいの自信はあったんだよね。…なら順当か。準決勝敗退です。負けるのって少し悔しいや。いや、やっぱ訂正しよう。だいぶ、相当、めちゃくちゃ悔しい。
いよいよ明日が卒業か、そう思いながら試合を眺めている。もちろん、僕を負かした彼女の戦う決勝が一番盛り上がった試合となり、会場のボルテージもマックス。最後の最後まで展開が読めない接戦には一喜一憂してしまうほどだった。優勝おめでとう、勝者にそう声をかけてみると
「ふんっ!私と戦おうとすらしなかった者からの言葉なんて届きませんわ!」
やっぱり相変わらずつれない。このお嬢様も中学を出て、数ヵ月後には高校生だと思うと時の流れを嫌でも感じてしまう。
そして卒業式、長いようで短い春休みがあっという間に過ぎ、気づけばもう明日には高校の入学式が待ち受けていたのだった。いよいよ僕の新しい物語が始まるんだ、そう思ったところでひとつ大切なことがあるのを思い出した…
長い見つめ合いからの先制攻撃のチャンスと思った相手は先程までのより3倍は巨大な火球を放つが、初めから攻撃する気のなかった僕は左に全力疾走、避けつつ見事にスプリンクラーの手前で着爆させる。これで戦局がこっちに傾くはず!
砂利の乾燥を検知したスプリンクラーが作動音と共に水を撒き始める。(果たして乾燥ってレベルなのかな?)予想外の人工降雨に驚く相手を横目に僕は宙に舞った雨水をかき集め、相手の周囲に檻の形を映し出す。
迫り来る水の牢獄。閉じる領域。スプリンクラーの水を操り僕は相手を閉じ込め、炎を掻き消しながら範囲を狭め相手ごと押し潰そうとする。
相手の参ったコールと審判の止めの合図までそう時間はかからなかった。僕の勝ち、準決勝進出だ。
「サーシャ!お前の水魔法はすごいな!」
「えへへ、それほどでも」
卒業戦、中学卒業の恒例行事。3年間学んできた成果を見せるため、仲間や友達と楽しむため、己が強さを見せつけ誇示するため、と理由はいろいろあるが、卒業式の前日に僕らは戦うことになっている。
魔法。それは誰もが持つ力、あるいは一種の特技や個性。サッカーや野球も練習すればある程度上手くなるように、誰でも覚えられる汎用魔法もある。しかしやはり一番注目されるのは生まれつき一つだけ持つ固有の魔法"天稟魔法"だ。
その中でも大当たりと言われるのは火力・範囲ともに優れる炎魔法、あるいは誰もが憧れる時間操作の魔法などだろうか。一方、僕の持つ水魔法は不遇とされていて、汎用の補助魔法を中心とした戦術が必要になるほど単体では頼りないものとされている。そしてさらに相性次第では…
「せめて勝負ぐらいはしなさいよ」
「勝負する間もないくらい一瞬で負けたんだよ」
この通り。水のバリアに電流を流されて感電、即ダウンしてしまった。水に限った話ではないけど、能力の相性次第では実力差があっても一瞬のうちに逆転が起こって格上が負けてしまうことさえある。僕が格上とは言わないけども、対等ぐらいの自信はあったんだよね。…なら順当か。準決勝敗退です。負けるのって少し悔しいや。いや、やっぱ訂正しよう。だいぶ、相当、めちゃくちゃ悔しい。
いよいよ明日が卒業か、そう思いながら試合を眺めている。もちろん、僕を負かした彼女の戦う決勝が一番盛り上がった試合となり、会場のボルテージもマックス。最後の最後まで展開が読めない接戦には一喜一憂してしまうほどだった。優勝おめでとう、勝者にそう声をかけてみると
「ふんっ!私と戦おうとすらしなかった者からの言葉なんて届きませんわ!」
やっぱり相変わらずつれない。このお嬢様も中学を出て、数ヵ月後には高校生だと思うと時の流れを嫌でも感じてしまう。
そして卒業式、長いようで短い春休みがあっという間に過ぎ、気づけばもう明日には高校の入学式が待ち受けていたのだった。いよいよ僕の新しい物語が始まるんだ、そう思ったところでひとつ大切なことがあるのを思い出した…
