2月6日、登校日。九条は昼休みになるとすぐにクラスメイトにチョコを配っていた。桜庭もうれしそうにチョコを受け取っていて、わかれたのがウソみたいにいい雰囲気で話している。
(やっぱなんかモヤモヤする)
「春樹はもらった?」
チョコを受け取った健吾が俺のところにやってきた。
「いや、俺は昨日食ったから。ってか、それ作るの俺も手伝ったんだからな」
「だから形が悪いのがまざってるんだね」
前の席の永嗣が笑いながらチョコをみている。
「うるせー。ちょー大変だったんだんだぞ」
「うん、形は悪いけど味はいけるよ」
「おいしいね、形は悪いけど」
チョコを食べながらいじってくる二人を睨みつけて席を立つ。
「購買いってくる」
「いってら~」
*****
購買でカレーパンとたまごサンドを買い、途中で中庭近くの自販機に寄ってイチゴオレを買った。
「あ、仁科先輩じゃん」
「久しぶり~」
髪がピンクのギャルと金髪のギャルに声をかけられたが誰だかわからない。
「……ひさしぶり?」
「あのさ、髪がオレンジの九条って人? あの人、彼女とわかれたんでしょ?」
「え? まぁ、うん」
「これワンチャンあるくない?」
「あるでしょ。あの人よくみたらけっこうイケメンだし、ウチらに紹介してよ?」
「いや~なんかすきな人いるって言ってたけど」
「あぁ~いいのいいの。そういうんじゃなくてさ、ウチらボタンほしいだけだから」
「は? ボタン?」
「ブレザーのボタン。かっこいい先輩からボタンもらってカバンに付けんの」
「卒業イベントみたいなやつ。知らない?」
知ってるけどそういうのって憧れてる先輩に勇気をふりしぼって告白してもらうもんじゃないのか?今時の女子高生にとってはもっと手軽なもんなのか?
「仁科先輩のでもいいよ~先輩もいちおうかっこいい部類に入るし」
「一応ってなんだよ」
「じゃあウチら二人分のボタン予約ね?」
「へぇ~予約システムとかあるんだ?」
突然どこかから湧いて出た九条がニコニコしながら二人に声をかけた。
「うぅわ!九条先輩!」
「タイミングやばい!」
「先輩、ウチらにボタンください」
「わるいんだけど、もう予約でうまってるんだ。春樹のボタンも、俺のボタンも」
「え~マジか~」
「やっぱかっこいい人のは先約あんだね~」
「あ、あれ!西崎先輩じゃね?」
「めっちゃかっこいい~いこ」
次のターゲットをみつけた二人は俺たちをふりかえることなく西崎先輩とやらに直進していった。九条と顔を見合わせて苦笑する。
「ボタン、誰にあげんの?」
「もちろん、仁科先輩?」
「俺かよ」
「交換しようよ」
「交換って、同じもの交換して意味あんの?」
イチゴオレにストローを差していると横から九条に奪われて先に飲まれた。
「同じじゃないでしょ!春樹が着てたブレザーのボタンなんだから!」
「…わかったよ」
「全部のボタン交換してね」
「全部? それならブレザー交換した方が早くね? ボタン外す手間なくなるし」
「え?! いいの?!」
食い気味に聞いてきた九条に頷いてやると目を輝かせてよろこんでいた。卒業したら着なくなるのになんでブレザーなんかほしいんだ?と思ったけど怒られそうなので黙っておいた。
「あ、ごめん。これ全部飲んじゃった」
「はぁ?!」
*****
中庭で昼食を食べ終えると健吾と永嗣が英単語の問題を出し合っていた。二人とも来週に一般入試を控えているのでいつになく真剣な様子で、関係ない俺もなんだか少し緊張してきた。
「春樹~これいかない?」
マイペースな九条は二人のことなどお構いなしにのんきな様子で俺にスマホをみせてきた。
「シーワールド バレンタインイベント?」
「2月14日だけ入館料が半額になるんだって~」
「魚なんかみてなにが楽しいの?」
俺の発言に大げさにため息をつく。
「そういうとこだよ」
「なにが?」
「仁科くんって顔はいいんだけどなんかね~ってクラスの女子に言われてるの知ってた?」
「はぁ? なんだよそれ?」
「まぁ、それはいいとして」
「よくないよくない」
「ペンギンとかアシカとかジンベエザメもいるんだよ! みたくない?」
「う~ん、ジンベエザメはみたいかも…」
「でしょ? あと、これ! アザラシの赤ちゃんのぬいぐるみ! かわいくない?」
九条のスマホに映るアザラシのぬいぐるみ、確かにかわいいけどべつにほしくない。って言ったらまた怒られそうだから黙っておく。
「か、かわいいんじゃない?」
「だよね~! ほしいよね~?」
「…ほ、ほしい、かな?」
「じゃあ、駅前に10時に集合ね!」
「…………」
「遅れないでね?」
「…あーもう、しかたないから付き合ってやるよ」
「へへっ、やったー!粘り勝ち!」
(あれ? なんか振り回されてないか? まぁ、九条がよろこんでるならいいか)
(やっぱなんかモヤモヤする)
「春樹はもらった?」
チョコを受け取った健吾が俺のところにやってきた。
「いや、俺は昨日食ったから。ってか、それ作るの俺も手伝ったんだからな」
「だから形が悪いのがまざってるんだね」
前の席の永嗣が笑いながらチョコをみている。
「うるせー。ちょー大変だったんだんだぞ」
「うん、形は悪いけど味はいけるよ」
「おいしいね、形は悪いけど」
チョコを食べながらいじってくる二人を睨みつけて席を立つ。
「購買いってくる」
「いってら~」
*****
購買でカレーパンとたまごサンドを買い、途中で中庭近くの自販機に寄ってイチゴオレを買った。
「あ、仁科先輩じゃん」
「久しぶり~」
髪がピンクのギャルと金髪のギャルに声をかけられたが誰だかわからない。
「……ひさしぶり?」
「あのさ、髪がオレンジの九条って人? あの人、彼女とわかれたんでしょ?」
「え? まぁ、うん」
「これワンチャンあるくない?」
「あるでしょ。あの人よくみたらけっこうイケメンだし、ウチらに紹介してよ?」
「いや~なんかすきな人いるって言ってたけど」
「あぁ~いいのいいの。そういうんじゃなくてさ、ウチらボタンほしいだけだから」
「は? ボタン?」
「ブレザーのボタン。かっこいい先輩からボタンもらってカバンに付けんの」
「卒業イベントみたいなやつ。知らない?」
知ってるけどそういうのって憧れてる先輩に勇気をふりしぼって告白してもらうもんじゃないのか?今時の女子高生にとってはもっと手軽なもんなのか?
「仁科先輩のでもいいよ~先輩もいちおうかっこいい部類に入るし」
「一応ってなんだよ」
「じゃあウチら二人分のボタン予約ね?」
「へぇ~予約システムとかあるんだ?」
突然どこかから湧いて出た九条がニコニコしながら二人に声をかけた。
「うぅわ!九条先輩!」
「タイミングやばい!」
「先輩、ウチらにボタンください」
「わるいんだけど、もう予約でうまってるんだ。春樹のボタンも、俺のボタンも」
「え~マジか~」
「やっぱかっこいい人のは先約あんだね~」
「あ、あれ!西崎先輩じゃね?」
「めっちゃかっこいい~いこ」
次のターゲットをみつけた二人は俺たちをふりかえることなく西崎先輩とやらに直進していった。九条と顔を見合わせて苦笑する。
「ボタン、誰にあげんの?」
「もちろん、仁科先輩?」
「俺かよ」
「交換しようよ」
「交換って、同じもの交換して意味あんの?」
イチゴオレにストローを差していると横から九条に奪われて先に飲まれた。
「同じじゃないでしょ!春樹が着てたブレザーのボタンなんだから!」
「…わかったよ」
「全部のボタン交換してね」
「全部? それならブレザー交換した方が早くね? ボタン外す手間なくなるし」
「え?! いいの?!」
食い気味に聞いてきた九条に頷いてやると目を輝かせてよろこんでいた。卒業したら着なくなるのになんでブレザーなんかほしいんだ?と思ったけど怒られそうなので黙っておいた。
「あ、ごめん。これ全部飲んじゃった」
「はぁ?!」
*****
中庭で昼食を食べ終えると健吾と永嗣が英単語の問題を出し合っていた。二人とも来週に一般入試を控えているのでいつになく真剣な様子で、関係ない俺もなんだか少し緊張してきた。
「春樹~これいかない?」
マイペースな九条は二人のことなどお構いなしにのんきな様子で俺にスマホをみせてきた。
「シーワールド バレンタインイベント?」
「2月14日だけ入館料が半額になるんだって~」
「魚なんかみてなにが楽しいの?」
俺の発言に大げさにため息をつく。
「そういうとこだよ」
「なにが?」
「仁科くんって顔はいいんだけどなんかね~ってクラスの女子に言われてるの知ってた?」
「はぁ? なんだよそれ?」
「まぁ、それはいいとして」
「よくないよくない」
「ペンギンとかアシカとかジンベエザメもいるんだよ! みたくない?」
「う~ん、ジンベエザメはみたいかも…」
「でしょ? あと、これ! アザラシの赤ちゃんのぬいぐるみ! かわいくない?」
九条のスマホに映るアザラシのぬいぐるみ、確かにかわいいけどべつにほしくない。って言ったらまた怒られそうだから黙っておく。
「か、かわいいんじゃない?」
「だよね~! ほしいよね~?」
「…ほ、ほしい、かな?」
「じゃあ、駅前に10時に集合ね!」
「…………」
「遅れないでね?」
「…あーもう、しかたないから付き合ってやるよ」
「へへっ、やったー!粘り勝ち!」
(あれ? なんか振り回されてないか? まぁ、九条がよろこんでるならいいか)



