2月26日、予餞会。今日は体育館で予餞会がある。予餞会とは、卒業を控えた生徒を送り出す目的で開催される学校行事。生徒会主催で行われ、毎年けっこう盛り上がっている。俺も去年、先生たちのコントに混じって出たけど見事に大スベリして会場を凍り付かせてしまった。昭和ギャグは令和の高校生には通じなかった。今年も先生たちのコントがあるみたいだけど、素直に楽しめないだろうな。
まずは生徒会長の挨拶から始まり、合唱部の歌唱、ダンス部のパフォーマンス、演劇部の舞台。最初はみんなちゃんと自分の席に座っていたけど時間経過とともに各々すきな場所に移動し、イスの並びもぐちゃぐちゃになっている。その分、生徒たちが盛り上がって楽しんでいるので先生たちは注意しない。俺は一番後ろの席でぼんやりしてたんだけど、いつの間にか隣に九条が座っていて楽しそうに舞台の感想を話している。吹奏楽部の演奏がおわり、軽音部のバンド演奏が始まると一部の生徒が席を立ち歓声をあげる。
「この曲聞いたことある。なんだっけ?」
「えーっと、打ち上げ花火?」
「そうそれ!」
隣に座る九条の声が聞き取れないほど騒がしくなり、九条はイスをくっつけて俺の耳元でぼそぼそ話し始めた。距離が近いのはいつものことだけど耳に吐息がかかるくらいの距離だとさすがにドキドキするしくすぐったい。
ふいに手が伸びて俺の耳に触れる。
「ピアスいいなぁ~俺もあけようかな?」
左耳についているシルバーリングのピアス、それにちょんちょん触れてから耳たぶをつままれる。ふにふにとマッサージするみたいに触られて、くすぐったくて身体をよじった。
「やめろ」
「へへっ、春樹かわいいね~」
「…うるせ」
ふにゃデレ顔で九条にからかわれることなんて慣れてるはずなのに、距離が近すぎるせいかいつもよりドキドキする。いつまでも俺の顔をずっとながめているので前を向くように促した。カーテンが閉められて電気がパッと消える。”3年間の思い出”というスライド上映が始まった。立っていた生徒が慌ててイスに座る。
「うわ、入学式じゃん。なつかしい~」
入学式からの学校行事の写真が1枚づつ映し出されて、写真が切り替わるたびにそこかしこで声が上がる。修学旅行の写真で、俺と健吾と永嗣の寝起き姿が晒されて、前に座る二人とともに低く悲鳴を上げた。健吾と永嗣は眠そうにぼーっとしているだけだけど、俺に至っては顔がむくんで目も腫れてみるに堪えない姿だった。
「アンパ〇マンみたいになってるんだけど! 寝れなかったの?」
「枕が変わると寝れないんだよ、繊細だから」
「俺の部屋では爆睡してたけど」
「あの時は寝不足だったから」
パッと写真が切り替わって周りから冷やかすような声が聞こえる。スライドショーに視線を戻すと、九条と桜庭のツーショットが映し出されていた。二人とも満面の笑みでピースをしている。わかれたことを知っているクラスメイトの間には気まずい空気が流れるが他のクラスの一部の生徒はキャッキャとはやし立てている。薄暗い中でも九条が複雑な顔をしているのはわかる。俺は手を伸ばして九条の手をぎゅっと握った。九条は少し安心したのか、表情を和らげてぎゅっと力強く握り返してくれた。
まずは生徒会長の挨拶から始まり、合唱部の歌唱、ダンス部のパフォーマンス、演劇部の舞台。最初はみんなちゃんと自分の席に座っていたけど時間経過とともに各々すきな場所に移動し、イスの並びもぐちゃぐちゃになっている。その分、生徒たちが盛り上がって楽しんでいるので先生たちは注意しない。俺は一番後ろの席でぼんやりしてたんだけど、いつの間にか隣に九条が座っていて楽しそうに舞台の感想を話している。吹奏楽部の演奏がおわり、軽音部のバンド演奏が始まると一部の生徒が席を立ち歓声をあげる。
「この曲聞いたことある。なんだっけ?」
「えーっと、打ち上げ花火?」
「そうそれ!」
隣に座る九条の声が聞き取れないほど騒がしくなり、九条はイスをくっつけて俺の耳元でぼそぼそ話し始めた。距離が近いのはいつものことだけど耳に吐息がかかるくらいの距離だとさすがにドキドキするしくすぐったい。
ふいに手が伸びて俺の耳に触れる。
「ピアスいいなぁ~俺もあけようかな?」
左耳についているシルバーリングのピアス、それにちょんちょん触れてから耳たぶをつままれる。ふにふにとマッサージするみたいに触られて、くすぐったくて身体をよじった。
「やめろ」
「へへっ、春樹かわいいね~」
「…うるせ」
ふにゃデレ顔で九条にからかわれることなんて慣れてるはずなのに、距離が近すぎるせいかいつもよりドキドキする。いつまでも俺の顔をずっとながめているので前を向くように促した。カーテンが閉められて電気がパッと消える。”3年間の思い出”というスライド上映が始まった。立っていた生徒が慌ててイスに座る。
「うわ、入学式じゃん。なつかしい~」
入学式からの学校行事の写真が1枚づつ映し出されて、写真が切り替わるたびにそこかしこで声が上がる。修学旅行の写真で、俺と健吾と永嗣の寝起き姿が晒されて、前に座る二人とともに低く悲鳴を上げた。健吾と永嗣は眠そうにぼーっとしているだけだけど、俺に至っては顔がむくんで目も腫れてみるに堪えない姿だった。
「アンパ〇マンみたいになってるんだけど! 寝れなかったの?」
「枕が変わると寝れないんだよ、繊細だから」
「俺の部屋では爆睡してたけど」
「あの時は寝不足だったから」
パッと写真が切り替わって周りから冷やかすような声が聞こえる。スライドショーに視線を戻すと、九条と桜庭のツーショットが映し出されていた。二人とも満面の笑みでピースをしている。わかれたことを知っているクラスメイトの間には気まずい空気が流れるが他のクラスの一部の生徒はキャッキャとはやし立てている。薄暗い中でも九条が複雑な顔をしているのはわかる。俺は手を伸ばして九条の手をぎゅっと握った。九条は少し安心したのか、表情を和らげてぎゅっと力強く握り返してくれた。



