病室の中、ぴくりともしない達也の寝顔をただ見つめる。傷口は縫ったらしい。出血の量はそこまで多くもなかったようだ。だけれど。目は、覚めない。

 俺のせい。俺の、せいで。

 達也が──大切な人が、死んでしまう。また、いなくなってしまう。今ならわかる。好き、だった。いいや──好きなのだ。控えめな善性も、自分のことを思って気を遣って言葉を選んでくれたその姿も。
 だけど、嫌いだ。自分の身なんて、顧みないところが。他人のために簡単に傷つきにいく、自己犠牲が。それ以上に──うじうじしているだけの俺が、大嫌いだ。

「大丈夫、だい、じょうぶ──……自信、もて……」

 震える手で、ポケットから手鏡を取り出す。昔、母に言われた通りに。声は涙で滲んだ。水滴で歪む鏡面には、みっともない自分の顔が映った。ああ、ああ。嗚咽が漏れる。

 ……こんなところでいなくなられるわけにはいかないんだよ。隣にいたい。他のやつが隣にいるのは、嫌だ。俺だけが傍にいればいい。浅ましい欲が溢れて止まらない。

「絶対、離すかよ。勝手にどっか行かせるわけねーだろ」

 ぼたりと零れる涙はそのままに。ただ、祈った。

 俺が、人生を変えてやるって決めたんだから。それが叶うまでは──いいや、叶えても離れてやるもんか。俺の執念深さ舐めんな。

 冷たい手に、自分の手を重ねた。