突然だが、俺──竹井達也は自他ともに認める地味な男子高校生だ。

 特筆することは、とくにない。
 成績は、平均よりほんの少し上。運動神経はまあ悪い。友だちに関しては、別にいないというわけではない。多くはないが、そこそこいる。顔だってフツメン……と言えたら良かった。中なんかではない、下だ。ふと映った自分の顔に、何度鏡を叩き割りたくなったかは覚えていない。
 トータルで見れば、まあまさに平均値だろう。クラスの隅にひとりはいる、根暗で地味な生徒。とくに誰の印象にもあまり残らないような、もっと言えば担任の教師すらろくに覚えてくれないようなつまらない人間だと自分でも思う。

 だが落し物を届けたり、道端のゴミを拾ったり。善行だって少しは積んでる──つもりなのに。……こういう見返りを望むところがよくないのか。だけどちょっとくらい良いことがあったっていいだろう。
 ぱっとしない学園生活で、校舎の隅にいるうさぎが唯一の癒しだ。全然懐いたりはしないが、見ているだけでほっこりする。本当は懐いて欲しいけど。
 放課後、うさぎを眺める日課を終えて。いつも通り、帰り道を進んでいく。

 入学して、二年生となった今もなにも変わらない。ああ、普通の日常だ。なにかこう、刺激が欲しくなってしまう。

「あのさぁ、俺の隣歩けてるんだからもっと胸張れよ」

 ──できれば、この男を除いた刺激が。
 隣を歩く、唯一の異分子──早川潤が不服そうに口を開く。

 高身長。猫のような大きな二重の目に高い鼻梁。パーツ配置も完璧だ。真っ黒な髪はゆるく毛先を遊ばせていて、ドラマの俳優やモデルのようだ。そのうえ勉強も運動も得意で、バスケ部のエースらしい。こうして事実を羅列するだけで、真逆の存在である俺は血涙を流しそうになる。
 不服そうに薄い唇をとがらせる。そんな顔も様になっている。物言いたげな周りの視線が刺さって肩身が狭い。

 こんな完璧超人が隣にいる理由は、正直なところわからない。理由としてよくあるものは昔からの友人とかだろうが、特に幼なじみというわけでもないし、ここ最近の付き合いだ。共通の趣味や話題があるわけでもない。余計に意味がわからない。