どうやって松本たちを成敗してやろうか。

 思考がちょっとヤバい方向へ行っていた時、奴らはまた攻撃を仕掛けてきた。

 休日になり、俺は家で自作小説の続きを書いていた。自室のドアがノックされる。

「はい」
「おい、(かたる)。なんか変な手紙が来てるぞ」
「変な手紙って、何が」

 部屋に来たオヤジから郵送物を手渡される。

 たしかに怪しい郵便物で、筆跡が分からないよう印刷物の文字を切り貼りして宛名を書いているようだった。テレビで見た犯罪者の予告状みたいな体裁。コピーされていることから、なんとなしにクラスの全員へ同じ郵送物が届いているのだろうと悟った。

 わざわざ何十人分もそんな手の込んだことをする労力もそうだが、そこまでして何をこちらに知らせたいのか。それはそれで気になった。

 封筒を開けると、半分は驚きで半分は予想通りだった。

『黒蜜凛はヤバい教師』
『この写真の教師、黒蜜凛は無垢な男子生徒の恋愛感情を利用して傷付けるひどい女です。こんな女が教壇に立っているのは許せません。一緒に彼女の罷免運動に参加しましょう』

 手紙にはノースリーブのブラウスを着た黒蜜先生の盗撮写真が付いていた。おそらく写真の顔部分に加工がしてあって、性的に奔放そうな表情が演出されている。知っている人から見れば、悪意の塊のような演出だった。

「何これ?」

 オヤジがドン引きして訊いてくる。そりゃそうだろう。

「多分クラスの女子だ。黒蜜先生が人気だから嫉妬してるんだ」
「そんな顔をしていればそうなるだろうな。だって、俺の好きだったアイドルに似てるもん」

 ん――

「今なんて?」
「いや、だから俺の時代に人気あったアイドルがそんな顔だったんだよ」

 オヤジが好きなアイドルなんて聞くとなんかげんなりしてしまうところがあるけど、今回は違った。心の奥底にあったセンサーがふいに動き出す。

「そのアイドルって、どんな名前?」
月海(つきみ)カリンって名前だな。今はどうしてるか知らんけど。俺らの世代で人気があった。見た目がかわいいだけじゃなくて、愛されるタイプでね。もう少し運があれば今頃相当な人気者になっていただろう。ただ、これからって時に事件があって、テレビでは見なくなったけど」
「事件?」
「ん? ああ、なんていうか、スキャンダルだな」

 オヤジはその先を言いたくなさそうだった。アイドルのスキャンダルって言えば恋愛スキャンダルが多い気がするけど、月海カリンとやらもそんなスキャンダルで芸能界から消えたのだろうか。

 俺の中で、少しずつパズルが組み合わさっていく。

「で、その月海(つきみ)カリンが先生に似てるって?」
「ああ、よく似てるよ。成長したらこんな顔だったんだろうな。当の月海カリン本人が現時点でどうしているかは知らないけどさ」
「そう……」

 会話を終えた俺は、調べものをすることにした。

 黒蜜先生と屋上で交わした会話。彼女が語ることのなかった過去。

 ――それが、何なのか分かった気がする。