【テレビ番組:『再生P!』の未編集テープ④】
撮影2日目。
どんよりとした曇り。気温も高いようで、中葉さんたちは作業前から汗まみれだった。
この年のこの地域は全体的に空梅雨の傾向で、湿度が異様に高くて飲食物がすぐにダメになってしまったと、中葉さんは当時のことを話した。
2日目は、主に2階にある大型家具・収納を出していく。
合間にインタビューも挟まれた。
「これはパパの……あ、別れた夫のコレクションラックです……! 結構いい物なんですよ……っ!」
中葉さんたちが、二階の廊下を圧迫していたガラス張りのラックを搬出する。中に何も飾られておらず、空っぽだったのですぐに完了した。
数年分の埃が舞う中、納戸にあった脚の取れた椅子、天板が割れたテーブル、ゴムが破れた二輪用タイヤなどを運び出す。
さち乃さんの部屋にあったシールだらけのカラーボックスも処分することになった。
「よくお兄ちゃんとふたりで、シール貼って遊んでましたね、さっちゃん……!」
にこやかに話しかけるなつ子さんに、さち乃さんはプイッと顔を背けた。
1階から犬の激しい鳴き声。なつ子さんが階段を下りて、ピピちゃんのもとに向かった。
前島さんがさち乃さんに、「お母さんのこと、好きじゃない?」と尋ねた。
「……好きとか、嫌いとかじゃない……」
さち乃さんがうつむく。
「お兄さんのことは?」と前島さんが続ける。
「だいっきらい」
間髪入れずに妹は答えた。
しかしその目線は、キャラクターシールだらけのカラーボックスにまっすぐ注がれていた。
「なつ子さんの部屋はどうします?」
後藤さんが指示を仰いだ。
さち乃さんは「えーと」と思案しながら、ためらいなく母親の部屋のドアを開けた。後藤さんたちが軽く戸惑う気配が伝わった。
6畳ほどの洋室だ。
なつ子さんの私室は、他の部屋と打って変わって、物が極端に少なかった。
布団も収納にしまっており、小さなローテーブルと座椅子、一段カラーボックスくらいしかない。
壁の高い位置に棚が備えつけてあり、数冊の本とガラス製のオブジェが飾られている。
化粧品や、おそらく衣服も最低限しか持っていないのだと推察された。なつ子さんは1週間前と同じ服装だったし、化粧っ気もない。
中葉さんは、(子どもを優先しすぎて自分のことまで気が回らないんだろう……)と同情を覚えたという。
その後、2階に戻ってきたなつ子さんも自分の部屋は特に手を入れなくて良いと笑った。その後、鍵をかけた。
2階の清掃が完了し、一行はぞろぞろと階下へ下りていく。
中葉さんは、薬指の怪我が痛そうななつ子さんに代わってどんどん不用品を外に出した。
あとは、かず彦さんの部屋を残すばかりになった。
撮影2日目。
どんよりとした曇り。気温も高いようで、中葉さんたちは作業前から汗まみれだった。
この年のこの地域は全体的に空梅雨の傾向で、湿度が異様に高くて飲食物がすぐにダメになってしまったと、中葉さんは当時のことを話した。
2日目は、主に2階にある大型家具・収納を出していく。
合間にインタビューも挟まれた。
「これはパパの……あ、別れた夫のコレクションラックです……! 結構いい物なんですよ……っ!」
中葉さんたちが、二階の廊下を圧迫していたガラス張りのラックを搬出する。中に何も飾られておらず、空っぽだったのですぐに完了した。
数年分の埃が舞う中、納戸にあった脚の取れた椅子、天板が割れたテーブル、ゴムが破れた二輪用タイヤなどを運び出す。
さち乃さんの部屋にあったシールだらけのカラーボックスも処分することになった。
「よくお兄ちゃんとふたりで、シール貼って遊んでましたね、さっちゃん……!」
にこやかに話しかけるなつ子さんに、さち乃さんはプイッと顔を背けた。
1階から犬の激しい鳴き声。なつ子さんが階段を下りて、ピピちゃんのもとに向かった。
前島さんがさち乃さんに、「お母さんのこと、好きじゃない?」と尋ねた。
「……好きとか、嫌いとかじゃない……」
さち乃さんがうつむく。
「お兄さんのことは?」と前島さんが続ける。
「だいっきらい」
間髪入れずに妹は答えた。
しかしその目線は、キャラクターシールだらけのカラーボックスにまっすぐ注がれていた。
「なつ子さんの部屋はどうします?」
後藤さんが指示を仰いだ。
さち乃さんは「えーと」と思案しながら、ためらいなく母親の部屋のドアを開けた。後藤さんたちが軽く戸惑う気配が伝わった。
6畳ほどの洋室だ。
なつ子さんの私室は、他の部屋と打って変わって、物が極端に少なかった。
布団も収納にしまっており、小さなローテーブルと座椅子、一段カラーボックスくらいしかない。
壁の高い位置に棚が備えつけてあり、数冊の本とガラス製のオブジェが飾られている。
化粧品や、おそらく衣服も最低限しか持っていないのだと推察された。なつ子さんは1週間前と同じ服装だったし、化粧っ気もない。
中葉さんは、(子どもを優先しすぎて自分のことまで気が回らないんだろう……)と同情を覚えたという。
その後、2階に戻ってきたなつ子さんも自分の部屋は特に手を入れなくて良いと笑った。その後、鍵をかけた。
2階の清掃が完了し、一行はぞろぞろと階下へ下りていく。
中葉さんは、薬指の怪我が痛そうななつ子さんに代わってどんどん不用品を外に出した。
あとは、かず彦さんの部屋を残すばかりになった。



