【中葉さんとの会話①】


 2024年秋。
 市内の喫茶店にて、中葉さんと対面で打ち合わせをした。

 事前に、撮影初日の出来事(テレビ番組:『再生P!』の未編集テープ①〜③)を書き起こした原稿を送っていたので、出来栄えを聞いてみた。


 ――初日の出来事を書き起こしてみましたがいかがでしょうか?

「よく書けていると思います。ありがとうございます。あの日のこと、ありありと思い出せました」

 ――よかったです。

「なんでも注文してください……って言いたんですけど、実は今年はじめに所属していた事務所が倒産してしまって、正直に言いますと懐が厳しいんです。
 個人で映像制作の仕事も受けているんですけど、映像クリエイターっていま多いでしょ。ほとんど依頼がなくて」

 ――お構いなく。

 注文した飲み物が来る間、中葉さんはプリントアウトした原稿に目を通した。
 真剣な表情で赤ペンでラインを引き、付箋を貼る。

 ため息混じりに言った。

「改めて読むと……やっぱりこの家、おかしいですよね」

 ――それはそうですが……
 ――この類の、機能不全に陥っている家族は決して珍しくないですよ。

「……いや、そうじゃなくて」

 中葉さんは、鋭い目つきで尋ねてきた。

「本当に、気づきませんか?」

 何をですか、と聞いても答えてくれなかった。
 未編集テープの映像がすべて書き起こしになってから話したい、と返された。