【九重家のその後】
そこから幾年かの月日を経た。
冒頭に書いたとおり、『整うバラエティ 再生P!』は存続不能となって、地元の視聴者に惜しまれつつも終了した。
その間に、前島さんの映像制作会社は規模を縮小し、中葉さんも別の同業会社に転職した。
(その会社が倒産して、中葉さんはフリーランスとなった)
そして前島さんが家庭の事情で会社を人に譲ることになり、昔のよしみで、中葉さんは後処理を手伝うことになった。
主な仕事は膨大な撮影資料の選別・処分である。
その中から、中葉さんはこの『九重家を撮った未編集テープ』を発見した。
併せて、あるものが見つかった。
さち乃さんの日記である。
何故そんなものが資料に紛れ込んでいるのか。
事情を聞くと、撮影最終日の片づけの際、ゴミ出し中に紛れ込んでしまったらしい。
日記は薄いミニキャンパスノートで、まさか女子高生の日記帳だとは思わなかったそうだ。
前島さんはすぐに返そうとしたが、長期の案件が入ってしまい、放置してしまった。
数ヶ月後、やっと余裕ができた前島さんはなつ子さんに連絡を試みたが――
電話もメールも通じなくなっていた。
不審に思ったが、またすぐに繁忙期に入り、今度は年単位で日記帳のことを頭の隅に追いやった。
そうしてある日、中葉さんがとっくに退職した頃のこと。
前島さんは物のついでで九重家を訪れた。
予想どおりというかなんというか、九重家は更地になっていた。
近所の人に聞いても、なつ子さんとかず彦さんがどこへ引っ越したのか分からずじまいだった。
そんな経緯を聞いて、中葉さんは当初「よくあることだ」と思ったそうだ。この業界にいれば、特に。
けれど懐かしさも手伝って、若い頃の自分の初仕事を見て、初心を思い出そうと中葉さんは未編集テープを観た。
そして凄まじい違和感に襲われたという。
――あの時は気づかなかったが、
この家、絶対におかしい。
疑惑を深めた中葉さんは、妹のさち乃さんの日記を開き、疑惑は不安へと変わった。
九重なつ子さんと九重かず彦さん。
この二人は今、どこでどうしている。
生きているのだろうか。
中葉さんの、親子を探す日々が始まったのだという。
そこから幾年かの月日を経た。
冒頭に書いたとおり、『整うバラエティ 再生P!』は存続不能となって、地元の視聴者に惜しまれつつも終了した。
その間に、前島さんの映像制作会社は規模を縮小し、中葉さんも別の同業会社に転職した。
(その会社が倒産して、中葉さんはフリーランスとなった)
そして前島さんが家庭の事情で会社を人に譲ることになり、昔のよしみで、中葉さんは後処理を手伝うことになった。
主な仕事は膨大な撮影資料の選別・処分である。
その中から、中葉さんはこの『九重家を撮った未編集テープ』を発見した。
併せて、あるものが見つかった。
さち乃さんの日記である。
何故そんなものが資料に紛れ込んでいるのか。
事情を聞くと、撮影最終日の片づけの際、ゴミ出し中に紛れ込んでしまったらしい。
日記は薄いミニキャンパスノートで、まさか女子高生の日記帳だとは思わなかったそうだ。
前島さんはすぐに返そうとしたが、長期の案件が入ってしまい、放置してしまった。
数ヶ月後、やっと余裕ができた前島さんはなつ子さんに連絡を試みたが――
電話もメールも通じなくなっていた。
不審に思ったが、またすぐに繁忙期に入り、今度は年単位で日記帳のことを頭の隅に追いやった。
そうしてある日、中葉さんがとっくに退職した頃のこと。
前島さんは物のついでで九重家を訪れた。
予想どおりというかなんというか、九重家は更地になっていた。
近所の人に聞いても、なつ子さんとかず彦さんがどこへ引っ越したのか分からずじまいだった。
そんな経緯を聞いて、中葉さんは当初「よくあることだ」と思ったそうだ。この業界にいれば、特に。
けれど懐かしさも手伝って、若い頃の自分の初仕事を見て、初心を思い出そうと中葉さんは未編集テープを観た。
そして凄まじい違和感に襲われたという。
――あの時は気づかなかったが、
この家、絶対におかしい。
疑惑を深めた中葉さんは、妹のさち乃さんの日記を開き、疑惑は不安へと変わった。
九重なつ子さんと九重かず彦さん。
この二人は今、どこでどうしている。
生きているのだろうか。
中葉さんの、親子を探す日々が始まったのだという。



