【テレビ番組:『再生P!』の未編集テープ⑥】


 結局、撮影2日目は予定の半分しか進まなかった。

 さち乃さんは自室に鍵をかけて、応答しなくなった。
 かず彦さんも無言と無視を貫いた。
 撤収間際、前島さんはなつ子さんにカメラを向けた

「どうもすみませんでした……わたしって、本当にダメですよね……!」

 エヘヘ、と笑っていると、チワワのピピちゃんがなつ子さんの足にじゃれついた。

「ごめんなさい、ピピちゃん。みんなでうるさくしていたから、怖くなっちゃいましたね……!」

 ゆっくりと犬を抱き上げる。

「怖くないよ。怖くないよ。ずうっと抱っこしてるからね……!」

 怯える犬を抱きしめ、全身全霊であやすなつ子さんの姿は、まさに聖母のようだった。――と言うのは前島さんと中葉さんの言だ。

 きっと心を閉ざす息子にも「おまえのせいだ」となじる娘にも、こんなふうに接するのだろう……と想像できる。

 前島さんが「これからどうしますか?」と問いかけた。

 それは撮影を続けるかどうか、という意味だ。
 だがなつ子さんは、迷うそぶりなど見せなかった。

「続けます……わたしは、わたしの家族を再生したいんです……!」

 なつ子さんは、犬を抱きしめてはっきりと宣言した。