「ご気分が優れないときは、髪を下ろしていた方が良いのですが…既婚女性は髪を結い上げるのが慣例なのだそうです。」
リナは、編み込んだ髪を、器用にまとめていく。
「髪は仕上がりましたが、もう少しお休みなさいますか?」
「もう大丈夫。陛下をお待たせしても良くないから、身支度を始めましょう」
里桜が椅子から立ち上がって、ガウンの紐をほどくと、アナスタシアがドレスを運んで来た。
「手首まであるロングスリーブのドレスなんて初めてかもしれない。結婚式も七分くらいだったものね。」
「こちらの国では結婚している女性が肩や腕を出すようなデザインの服装をする事が忌避されております。」
「そうなのね。でも綺麗な青色ね。少し灰色が入っていて。青紫かな。」
「この地に良く咲く、野草が国花なのだそうで、その花の色にしております。」
「野草が国花なの?」
「荒野にしか咲かない花なのだそうですが、美容に良いと言われているそうで、お土産にクリームなどを買っていかれるのも良いかも知れません。」
「ララが喜びそうね。買っていってあげましょう。」
繊細なレースの袖に慎重に腕を通す。胸元は深めのVネックになっている。
アナスタシアがドレスのボタンをしめ、リナは同色のリボンを髪に飾った。
「はい。出来上がりました。では、皆様にも準備が整ったことをお知らせしてきます。」
「えぇ。お願い。」
∴∵
ノックの音がして、返事を返すとさっきとは別の侍従が入って来た。
「お名前は?」
「侍従のステファーノと申します。」
「宜しくお願いしますね、ステファーノ。カルロ陛下のご準備が整ったのかしら?」
「はい。謁見の準備が整いましたので、謁見の間へご案内致します。」
ステファーノに続き、里桜が部屋を出ると、同じタイミングでロベールたちも出てきた。
「お養父様参りましょう。」
ステファーノを先頭に、護衛のコンスタンとヴァレリーが歩き、里桜に続いてアナスタシアとリナ、その後ろにロベールやジルベールなど、合計十二人の大行列になった。
来た時と同じように、何度も曲がり、階段を下って、一室の前で止まった。
「こちらが謁見の間でございます。」
ステファーノが扉を開くと ‘さぁどうぞ’ と中に促した。
広々とした部屋の一番前には数段登った所に、赤いベルベットと細やかな彫りが印象的な椅子が設えてあった。
「陛下お見えでございます。」
ステファーノの合図で里桜たちは最敬礼をする。
「おもてをあげなさい。」
里桜たちは姿勢を戻す。
里桜はカルロに精悍さの中にも温かさを感じた。
「私が、ゲウェーニッチ二代国王カルロ・デレオーネである。」
「お初にお目にかかります。私が、七十四代国王レオナール・エイクロンの妃、リオ・エイクロンでございます。」
「リオ・エイクロン王妃陛下が国賓として我が国にご訪問頂けたこと、心より歓迎します。本日はゆっくりと過ごされ、長旅の疲れを癒やされると良い。」
「陛下の深いお心遣いに感謝致します。」
挨拶が終わるカルロは立ち上がった。里桜たちは再び最敬礼をし、カルロは部屋を出て行った。
リナは、編み込んだ髪を、器用にまとめていく。
「髪は仕上がりましたが、もう少しお休みなさいますか?」
「もう大丈夫。陛下をお待たせしても良くないから、身支度を始めましょう」
里桜が椅子から立ち上がって、ガウンの紐をほどくと、アナスタシアがドレスを運んで来た。
「手首まであるロングスリーブのドレスなんて初めてかもしれない。結婚式も七分くらいだったものね。」
「こちらの国では結婚している女性が肩や腕を出すようなデザインの服装をする事が忌避されております。」
「そうなのね。でも綺麗な青色ね。少し灰色が入っていて。青紫かな。」
「この地に良く咲く、野草が国花なのだそうで、その花の色にしております。」
「野草が国花なの?」
「荒野にしか咲かない花なのだそうですが、美容に良いと言われているそうで、お土産にクリームなどを買っていかれるのも良いかも知れません。」
「ララが喜びそうね。買っていってあげましょう。」
繊細なレースの袖に慎重に腕を通す。胸元は深めのVネックになっている。
アナスタシアがドレスのボタンをしめ、リナは同色のリボンを髪に飾った。
「はい。出来上がりました。では、皆様にも準備が整ったことをお知らせしてきます。」
「えぇ。お願い。」
∴∵
ノックの音がして、返事を返すとさっきとは別の侍従が入って来た。
「お名前は?」
「侍従のステファーノと申します。」
「宜しくお願いしますね、ステファーノ。カルロ陛下のご準備が整ったのかしら?」
「はい。謁見の準備が整いましたので、謁見の間へご案内致します。」
ステファーノに続き、里桜が部屋を出ると、同じタイミングでロベールたちも出てきた。
「お養父様参りましょう。」
ステファーノを先頭に、護衛のコンスタンとヴァレリーが歩き、里桜に続いてアナスタシアとリナ、その後ろにロベールやジルベールなど、合計十二人の大行列になった。
来た時と同じように、何度も曲がり、階段を下って、一室の前で止まった。
「こちらが謁見の間でございます。」
ステファーノが扉を開くと ‘さぁどうぞ’ と中に促した。
広々とした部屋の一番前には数段登った所に、赤いベルベットと細やかな彫りが印象的な椅子が設えてあった。
「陛下お見えでございます。」
ステファーノの合図で里桜たちは最敬礼をする。
「おもてをあげなさい。」
里桜たちは姿勢を戻す。
里桜はカルロに精悍さの中にも温かさを感じた。
「私が、ゲウェーニッチ二代国王カルロ・デレオーネである。」
「お初にお目にかかります。私が、七十四代国王レオナール・エイクロンの妃、リオ・エイクロンでございます。」
「リオ・エイクロン王妃陛下が国賓として我が国にご訪問頂けたこと、心より歓迎します。本日はゆっくりと過ごされ、長旅の疲れを癒やされると良い。」
「陛下の深いお心遣いに感謝致します。」
挨拶が終わるカルロは立ち上がった。里桜たちは再び最敬礼をし、カルロは部屋を出て行った。

