「それで、アリーチェの様子はどうだった?」
「三年もの間、屋外に出ることも叶わず幽閉されておりましたので、やつれていらっしゃいます。ただ、人と隔離された状況に置かれていた割にはお心持ちはしっかりとされているご様子でした。」
レオナールはほっとした様子を見せる。
「そうか。リオから離してしまい申し訳ないが、暫くはアリーチェを頼む。」
「はい。畏まりました。それで、アリーチェ様が国にお帰りになるのはいつぐらいになるのでしょうか?」
「あの国はもう雪が降り始めている。来年の雪解けが来てからになるだろう。その事はアニアからも伝えておいてくれ。一週間ほどしたら、クロヴィスが今後の事は説明に向うから。」
書類から目を離して、アナスタシアの方を真っ直ぐに見た。
「一週間も間を置かれるのですか?」
「アリーチェは公爵令嬢として厳しく育てられた。自分がやつれている姿など見せたくはないはずだ。一週間くらい置いた方が良いだろう。」
「はい。わかりました。」
∴∵
「はぁ。良かった。今日は沢山スープが飲めるようになりましたね。辛くはない?横になる?」
アデライトは、空になったスープ皿を見て笑顔になった。
「いいえ。お義母様。食事をして直ぐに横になるのは体に良くないみたいなので、少しの間こうして座っています。もう良くなってきていますので大丈夫です。」
「だって、あんなに血の気なく、朦朧としていたのですから少し良くなっても無理はしてはダメよ。」
「はい。ありがとうございます。」
そこへ、ロベールが入ってきた。
「王太后陛下、食堂へお食事の支度が出来ましたので、どうぞ。」
「いいえ。今日も王妃の部屋に支度を頼みます。」
「今日は、リオの育った国で食べられているシャリアピンステーキを用意しました。リオの教えてくれたレシピで作っております、我が家の自慢の一品です。よろしければ温かいうちに食堂で召し上がって頂きたく思いまして。」
ロベールは穏やかに笑う。
「お義母様、私は大丈夫ですから、ぜひシャリアピンステーキを召し上がって下さい。私の故郷の味ですから。お義母様にも気に入って頂ければ幸いです。」
「そう?具合が少しでも悪くなったら直ぐに呼ぶのですよ。フロベール家からも腕利きの医師を呼び寄せていますから。わかった?」
「はい。直ぐにお呼びします。」
「では、少し離れるわね。」
アデライトは優しく里桜の背をさすった。
しばらくすると、扉がノックされ、返事をすると顔を覗かせたのはレオナールだった。
「陛下。」
「リオ。良かった。顔色も随分と良くなった。あまりこちらに来れずに申し訳なかった。」
「いいえ。十二月はお忙しい時期だと最初から分かっておりましたし、それに王太后様がずっとお世話をして下さっていたので、寂しくはありませんでしたよ。」
レオナールは、里桜の額に一つキスをした。
「王太后が…逆に気を使わせて申し訳ない。」
「いいえ。お話し相手になって頂いているのは私の方ですよ。それより、ルイの顔をご覧になりました?」
「あぁ。少しだけ見てきた。何だかしかめっ面して寝ていたぞ。マルゲリットの時とは随分違うな。」
「えぇ。でもあの子は良く陛下に似ています。」
「そうか?」
「えぇ。陛下も時折あのように難しいお顔をして食事を召し上がったりしています。あの子は乳を飲む時もあのような顔をしているようです。本当に陛下そっくりで…だから、あの子を抱いていると陛下を思い出せて、とても幸せでした。ですから、仕事がお忙しいのは気になさらないで下さいね。」
レオナールは、里桜の隣に腰掛けて、肩を抱き寄せキスをした。
「それと、王の子が生まれた事により、恩赦が実施され、アリーチェが北の塔から王宮へ移った。」
「そうですか。ご様子は?」
「あぁ。やはり、やつれてはいるようだ。」
「そうですか。私がこの様な状態では、お返事頂くのは難しいと分かっていますが、私がゲウェーニッチへ行くこと、前向きに検討して下さいませ。」
「あーぁ。私の可愛い妻は本当に頑固だな。可愛いだけにそこが悩むところだ。願いを叶えてやりたくなる。」
レオナールは困ったような顔をしてため息を吐いた。
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転生聖職者の楽しい過ごし方
新たな始まり ②
を読んで頂き、ありがとうございます。
閑話集
アデライト王太后
アデライトの最期
の2話更新しました。
よろしければご覧下さい。
赤井タ子
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「三年もの間、屋外に出ることも叶わず幽閉されておりましたので、やつれていらっしゃいます。ただ、人と隔離された状況に置かれていた割にはお心持ちはしっかりとされているご様子でした。」
レオナールはほっとした様子を見せる。
「そうか。リオから離してしまい申し訳ないが、暫くはアリーチェを頼む。」
「はい。畏まりました。それで、アリーチェ様が国にお帰りになるのはいつぐらいになるのでしょうか?」
「あの国はもう雪が降り始めている。来年の雪解けが来てからになるだろう。その事はアニアからも伝えておいてくれ。一週間ほどしたら、クロヴィスが今後の事は説明に向うから。」
書類から目を離して、アナスタシアの方を真っ直ぐに見た。
「一週間も間を置かれるのですか?」
「アリーチェは公爵令嬢として厳しく育てられた。自分がやつれている姿など見せたくはないはずだ。一週間くらい置いた方が良いだろう。」
「はい。わかりました。」
∴∵
「はぁ。良かった。今日は沢山スープが飲めるようになりましたね。辛くはない?横になる?」
アデライトは、空になったスープ皿を見て笑顔になった。
「いいえ。お義母様。食事をして直ぐに横になるのは体に良くないみたいなので、少しの間こうして座っています。もう良くなってきていますので大丈夫です。」
「だって、あんなに血の気なく、朦朧としていたのですから少し良くなっても無理はしてはダメよ。」
「はい。ありがとうございます。」
そこへ、ロベールが入ってきた。
「王太后陛下、食堂へお食事の支度が出来ましたので、どうぞ。」
「いいえ。今日も王妃の部屋に支度を頼みます。」
「今日は、リオの育った国で食べられているシャリアピンステーキを用意しました。リオの教えてくれたレシピで作っております、我が家の自慢の一品です。よろしければ温かいうちに食堂で召し上がって頂きたく思いまして。」
ロベールは穏やかに笑う。
「お義母様、私は大丈夫ですから、ぜひシャリアピンステーキを召し上がって下さい。私の故郷の味ですから。お義母様にも気に入って頂ければ幸いです。」
「そう?具合が少しでも悪くなったら直ぐに呼ぶのですよ。フロベール家からも腕利きの医師を呼び寄せていますから。わかった?」
「はい。直ぐにお呼びします。」
「では、少し離れるわね。」
アデライトは優しく里桜の背をさすった。
しばらくすると、扉がノックされ、返事をすると顔を覗かせたのはレオナールだった。
「陛下。」
「リオ。良かった。顔色も随分と良くなった。あまりこちらに来れずに申し訳なかった。」
「いいえ。十二月はお忙しい時期だと最初から分かっておりましたし、それに王太后様がずっとお世話をして下さっていたので、寂しくはありませんでしたよ。」
レオナールは、里桜の額に一つキスをした。
「王太后が…逆に気を使わせて申し訳ない。」
「いいえ。お話し相手になって頂いているのは私の方ですよ。それより、ルイの顔をご覧になりました?」
「あぁ。少しだけ見てきた。何だかしかめっ面して寝ていたぞ。マルゲリットの時とは随分違うな。」
「えぇ。でもあの子は良く陛下に似ています。」
「そうか?」
「えぇ。陛下も時折あのように難しいお顔をして食事を召し上がったりしています。あの子は乳を飲む時もあのような顔をしているようです。本当に陛下そっくりで…だから、あの子を抱いていると陛下を思い出せて、とても幸せでした。ですから、仕事がお忙しいのは気になさらないで下さいね。」
レオナールは、里桜の隣に腰掛けて、肩を抱き寄せキスをした。
「それと、王の子が生まれた事により、恩赦が実施され、アリーチェが北の塔から王宮へ移った。」
「そうですか。ご様子は?」
「あぁ。やはり、やつれてはいるようだ。」
「そうですか。私がこの様な状態では、お返事頂くのは難しいと分かっていますが、私がゲウェーニッチへ行くこと、前向きに検討して下さいませ。」
「あーぁ。私の可愛い妻は本当に頑固だな。可愛いだけにそこが悩むところだ。願いを叶えてやりたくなる。」
レオナールは困ったような顔をしてため息を吐いた。
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