「リナ。」

 里桜は騎士団の詰め所に来ていた。

「リオ様。」

 里桜はリナの側に跪いた。

「王妃様がそんなことなさってはなりません。」
「良いの。そのままで聞いてリナ。陛下からお話しは全て聞いたの。全て自分の意思なの?」
「はい。」
「全て覚悟の上なのね?」
「はい。」
「わかった。陛下へお話してくる。あの時私はアナスタシアの張る魔壁の中にいて状況は何一つ知ることが出来なかったと。これが本当の事なんだし。もし、王宮での職を離れることになっても、お養父様(とうさま)のお屋敷に行けば良いだけのことだもの。大丈夫よ。」
「それよりも、王妃様。とても騎士団が騒がしいようなのですが、何かあったのですか?」

 里桜は首を振る。

「私にも分からないの。騎士団棟に到着したら、とても慌ただしいから私も驚いたの。」

 里桜とリナはジルベールの方を見る。

「俺も殆どをこの部屋にいるんだ、分かるはずないだろう。俺がいない時は、シルヴェストルが差配するようになってるから。」
「陛下も、リナの話しをしていたらアルチュールに呼ばれて出てしまったから。何かがあったのは間違いはないのだと思うけど…。」

 そこにノックの音がした。ジルベールが応えると、扉は開き、ジルベールは部屋から出て行った。
 しばらくしてからジルベールは部屋に入ってきた。

「リナ。もう帰って良い。これからも、侍女として頑張れよ。」
「どう言う事ですか?」

 リナは立ち上がって、ジルベールの前に行く。

「お咎めなしって事だ。良かっただろう。」
「王子殿下を怪我させたのに、お咎めなしとはどうしてですか?」
「フェルナン王子がリナに罰が下らないように切願したそうだ。とにかく、一度王妃の部屋へ帰れ。」
「いえっ、でもっ。」

 何かを感じ取ったアナスタシアが、リナの腕を掴んだ。

「リナさん。ここは、一度帰りましょう。詳しい話しはその後です。」

 しかし、結局夜が更けても情報はなく、レオナールとも会えずに、里桜は初めて王宮の二人の寝室で独り寝をした。


∴∵


 夜から朝へと移ろい始めた頃、レオナールは自室に戻ってきた。

「お疲れ様でござい・・」

 マノンが言葉を発したと同時にレオナールは静かにの合図をして、声を潜めて話す。

「王妃は簡単には起きないが、明け方だと眠りも浅いだろうからね。」

 そう言いながらも、出来るだけ音を立てないようにしながら寝室へ入っていった。そして、直ぐに出てきた。

「気持ちよさそうによく寝ていた。湯浴みをしたら、直ぐに行く。王妃には朝食を一緒に食べられないこと謝っておいてくれ。」
「王妃陛下なら起こして下されば良かったと仰るはずです。」
「王妃はつわりで夜に眠れない日が長くあったんだ。今は落ち着いて、やっと気分良く寝られるのだから、寝かせてやりたい。」

 マノンは静かに頷いた。


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 転生聖職者の楽しい過ごし方 
 その後 ①
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 閑話集 
 プロムナードの夜
 シルヴェストル・オルレラン

 の2話更新しました。
 シルヴェストルと、アナスタシアのお話しです。
 最初のお話しは、学院時代の若いときの、
 次のお話しは、里桜が王妃になってからのお話しです。
 よろしければご覧下さい。

 赤井タ子

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