レオナールの指示で離宮へ向ったヴァレリーが発見したのはもう息をしていないベルナルダだった。
 ヴァレリーが寄越した手紙をレオナールは開いた。







 手紙は、見慣れた綺麗な筆蹟で書かれていた。間違いなく、ベルナルダのものだった。

「アルチュール。」

 部屋の前で控えていたアルチュールは、静かに入ってきた。

「ベルナルダ付き侍女セシルを連れてこい。」


∴∵


 ベルナルダの手紙を全て読み終わったセシルは、感情に任せ手紙をクシャッと丸めて魔術で燃やした。

「解放されて、良かったのは私の方。最後まで嫌みっぽい。」

 不満そうに鼻を鳴らして部屋を出ようとしたところに、騎士団が入ってきた。

「何ですか?」

 困惑したままのセシルは気が付けば、拘束されていた。そのままセシル立ち会いで部屋の捜索が始まった。
 部屋を改めていた騎士の一人が、声を上げた。

「液体の入った小瓶がありました。」

 騎士はその小瓶を直接は触れないように、布に包み慎重に棚から取り出した。侍女たちのワードローブには高確率で隠し収納がある。そして、小瓶が見つかったのも、その隠し収納の一つだった。

「すぐにそれを検査官へ持っていけ。」
「はい。」

 騎士は、返事をすると出て行った。

「ベルナルダ妃付き侍女セシル、王妃暗殺の企てにより拘束する。」

 自害しないように猿ぐつわを噛ませられる。セシルはありったけの力で身をよじるが騎士はびくともしない。
 彼女自慢の輝くゴールドブロンドの髪が乱れるのも気にしている場合などではなかった。


∴∵


 取り調べに、セシルは震える声で答える。

「いいえ、私は王妃様の殺害を企てたりなど…本当に私は無関係です。何も知りませんでした。全てはベルナルダ様が仕組んだこと。ベルナルダ様が犯人です。ベルナルダ様がマルタを唆し、王妃様に青葉花(あおばな)の毒を盛ったのです。」

 尋問をしている第二団隊長のアルマン・ジラールはピクリと眉を動かした。

「何故、盛られた毒が青葉花の毒だと知っている?毒の種類は伏せられていて、知っているのは一部だけ。」
「それは…それは、」

 セシルはそこで、自分が感情的に燃やした手紙は重要な証拠だったのだと気が付き、唖然とする。

「王妃が服毒した青葉花の根汁の毒がお前の部屋から出てきた。これをどう説明する。」

 セシルは真っ青な顔で必死に訴えかける。

「知りません。知りません。私の物ではありません。」
「王妃暗殺未遂で引き続き調査していたところ、複数の証言にお前と同じ名が出てきている。」
「セシルはよくある名です。私ではありません。それも全て、ベルナルダ様が…」
「黙れ。」

 ジラールは尋問室に響き渡るような声を発する。

「証拠があり証言もある。ここで素直に話さないのならば、しばらく牢に入り、素直に話せば良いのか、認めず拷問を受ける方が良いのか考えろ。」

 彼の合図で、セシルは再び拘束されそのまま牢に入れられた。

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 手紙
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 覚悟を決めた女と男

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 リナとジルベールのお話しです。
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 赤井タ子

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