「それで、フェルナンは何も話さないんだな?」
「はい。陛下。今はイザベル様の離宮にいらっしゃいます。」
「で、リナは?」
「あいつは、剣の稽古をしたと。」
「は?」
レオナールとアルチュールは同時にジルベールを見た。
「三、四年ほど前に、約束していたが、忙しくずっと相手が出来なかった。王子がそれを覚えていて、剣を教えてくれとせがむから相手にした。すると、やり過ぎてしまって、怪我をさせてしまった。それで王妃が怪我を治した…と。」
「何だ?それ。」
レオナールがジルベールに問うと、独特の困ったときの顔をした。
「因みに言うと、その約束の場には俺もいた。あいつに言われて思い出した。確か、あの時はアシルとブリスもその場にいた。アナスタシア嬢に王妃も。確認してみれば良い。剣の稽古の約束は確かにしていた。」
レオナールは勢いよく立ち上がった。
「わかった。リナには直接話しをしに行く。」
∴∵
「王子、食べませんか?」
フェルナンは、首を振る。
「この離宮のフロランタンはとても美味しいのよ。」
フェルナンはその言葉には応えなかった。そこに、クロヴィスがやって来た。
「母上、ありがとうございます。」
イザベルは、にこやかに笑って、その場から離れた。
「フェルナン殿下。王妃陛下の侍女、リナより話しを聞きました。」
フェルナンは、何も言わずに膝に置いた手をぎゅっと握った。
「リナは殿下と剣の稽古をしただけだと言っています。」
フェルナンはクロヴィスの顔を見上げた。
「誰がどう聞いても彼女はそう答えるばかり。随分と以前の話しのようですが、稽古の約束をした事は殿下も覚えていらっしゃいますか?」
フェルナンは、小さく頷いた。フェルナンはその事を忘れるはずもなかった。母と最後に交わした会話なのだから。
「そうですか、では約束に間違いはないようですね。ジルベールも王妃陛下付きの騎士たちも殿下とリナは剣術の稽古をする約束をしていたと言っています。」
再び、フェルナンは俯いてしまった。
「殿下。侍女のリナは処分を受けることになります。」
∴∵
レオナールは、騎士団の詰め所の一室にいた。
「リナ。事の顛末を正直に話せ。」
「ちゃんとお話しています。三、四年前にフェルナン殿下と私は稽古のお約束をしました。しかし、色々な事が重なり、そのお約束を守れませんでした。業を煮やした殿下は真剣を持って私の元にいらっしゃった。」
リナはレオナールを真っ直ぐに見て話した。
「それで、廊下で練習を始めたのか?」
「時間がないとお断りしましたが、諦めなかったので。殿下が真剣を持っていたことをちゃんとお咎めすれば良かったのですが、そのまま練習相手をしてしまいました。上手く往なすことが出来ず殿下に怪我を負わせてしまい、王妃陛下が急いで治療をして下さいました。本当に申し訳ありませんでした。」
話を聞き、レオナールは深くため息を吐く。
「リナ。このままでは、お前を処分しなければならなくなる。練習で許可なく真剣を用いた事はもちろんだが、王子に怪我を負わせたとなると、解雇処分になる。分かっているのか?」
「はい。陛下。今はイザベル様の離宮にいらっしゃいます。」
「で、リナは?」
「あいつは、剣の稽古をしたと。」
「は?」
レオナールとアルチュールは同時にジルベールを見た。
「三、四年ほど前に、約束していたが、忙しくずっと相手が出来なかった。王子がそれを覚えていて、剣を教えてくれとせがむから相手にした。すると、やり過ぎてしまって、怪我をさせてしまった。それで王妃が怪我を治した…と。」
「何だ?それ。」
レオナールがジルベールに問うと、独特の困ったときの顔をした。
「因みに言うと、その約束の場には俺もいた。あいつに言われて思い出した。確か、あの時はアシルとブリスもその場にいた。アナスタシア嬢に王妃も。確認してみれば良い。剣の稽古の約束は確かにしていた。」
レオナールは勢いよく立ち上がった。
「わかった。リナには直接話しをしに行く。」
∴∵
「王子、食べませんか?」
フェルナンは、首を振る。
「この離宮のフロランタンはとても美味しいのよ。」
フェルナンはその言葉には応えなかった。そこに、クロヴィスがやって来た。
「母上、ありがとうございます。」
イザベルは、にこやかに笑って、その場から離れた。
「フェルナン殿下。王妃陛下の侍女、リナより話しを聞きました。」
フェルナンは、何も言わずに膝に置いた手をぎゅっと握った。
「リナは殿下と剣の稽古をしただけだと言っています。」
フェルナンはクロヴィスの顔を見上げた。
「誰がどう聞いても彼女はそう答えるばかり。随分と以前の話しのようですが、稽古の約束をした事は殿下も覚えていらっしゃいますか?」
フェルナンは、小さく頷いた。フェルナンはその事を忘れるはずもなかった。母と最後に交わした会話なのだから。
「そうですか、では約束に間違いはないようですね。ジルベールも王妃陛下付きの騎士たちも殿下とリナは剣術の稽古をする約束をしていたと言っています。」
再び、フェルナンは俯いてしまった。
「殿下。侍女のリナは処分を受けることになります。」
∴∵
レオナールは、騎士団の詰め所の一室にいた。
「リナ。事の顛末を正直に話せ。」
「ちゃんとお話しています。三、四年前にフェルナン殿下と私は稽古のお約束をしました。しかし、色々な事が重なり、そのお約束を守れませんでした。業を煮やした殿下は真剣を持って私の元にいらっしゃった。」
リナはレオナールを真っ直ぐに見て話した。
「それで、廊下で練習を始めたのか?」
「時間がないとお断りしましたが、諦めなかったので。殿下が真剣を持っていたことをちゃんとお咎めすれば良かったのですが、そのまま練習相手をしてしまいました。上手く往なすことが出来ず殿下に怪我を負わせてしまい、王妃陛下が急いで治療をして下さいました。本当に申し訳ありませんでした。」
話を聞き、レオナールは深くため息を吐く。
「リナ。このままでは、お前を処分しなければならなくなる。練習で許可なく真剣を用いた事はもちろんだが、王子に怪我を負わせたとなると、解雇処分になる。分かっているのか?」

