ゼフェン・プリズマーティッシュ・クルウレンの十月はまだ温かく、天気の良い日ならば長袖一枚でも少し暑い様な天気になる。今日は天気も良く、里桜の気分が良いので外でお茶をする事にした。
「香りがダメになる人もいると聞いたことがあるけれど、私はその点は大丈夫みたい。花の香りや木の香りが気持ちいい。」
「それはよろしゅうございました。」
冷たさのない風も心地良かった。
「リナは今日も訓練に出ているの?」
「いいえ。今日はロベール様のご用事で出ております。」
「そう。お養父様の…。」
「アナスタシア様。」
アナスタシアを呼ぶ声に二人は振り返る。
「どうしたの?」
「王妃様のお召し物の事で。明日の王太后様へのご挨拶にコルセットのないお召し物で良いのかと…。」
リオの妊娠は今はまだごく僅かな者だけが知っている状態だが、元々締め付ける服が苦手だった里桜の服装のことは‘好み’で片付ける事が出来ていた。
「陛下は普段コルセットはお付けにならないと説明していたでしょう?」
「用意を担当している者が新人で…一度見て確認して欲しいと。」
「私は無理だから・・」
「アナスタシア。こちらは大丈夫。陛下もすぐにいらっしゃるだろうし。具合が悪くなればアシルとブリスがいるから大丈夫よ。行って差し上げて。」
「はい。わかりました。では、私は一度離れますが、何かありましたら護衛の騎士に仰って下さいね。」
「わかってる。さっ早く行って差し上げて。」
里桜は笑ってアナスタシアを追い払う様な仕草をした。
∴∵
「陛下から、イルフロッタントは通常の半分の量を一つの器に入れるようにと指示がありました。二人分ですから、個数で言うと四つにして下さい。」
「はい。」
「あと、王妃陛下のお好きな梨やぶどう、オレンジなどの果物も小さな器に入れて、いくつか用意するようにと。」
「はい。」
レオナール付きの古参の侍女エミリーが手際よく厨房へ指図する。その隣で、新しく里桜の侍女になったララはお茶の用意をしている。それを手伝いながらエミリーは話す。
「陛下は小さな頃からイルフロッタントには目がなかったのよ。」
「でも、王妃様に全て差し上げていますよね。」
「王妃様もお好きでいらっしゃるからね。」
「あー羨ましい。あんな素敵で愛妻家の男なんてどこをどう探せば見つかるのかしら。」
「あなたは若いし三女と言っても子爵の家なんだから見つかるでしょう。」
「若いって…エミリーさん私、三十過ぎていますよ。子供もいます。」
「なら、もう見つかってるじゃない。」
「まぁ、働き者だし、賭け事や女遊びもしませんから、文句は言いませんけど。好物は子供と張り合って食べるんですよ。もう、親なのは私一人ですよ。」
「どこも一緒ね。」
二人で豪快に笑っていると、一人の侍女がやって来た。
「掃除係が、両陛下の寝室で何か困っている様で、お二人をお呼びです。」
「えっ?何かしら。」
二人は顔を見合わせて、その場を離れた。
「香りがダメになる人もいると聞いたことがあるけれど、私はその点は大丈夫みたい。花の香りや木の香りが気持ちいい。」
「それはよろしゅうございました。」
冷たさのない風も心地良かった。
「リナは今日も訓練に出ているの?」
「いいえ。今日はロベール様のご用事で出ております。」
「そう。お養父様の…。」
「アナスタシア様。」
アナスタシアを呼ぶ声に二人は振り返る。
「どうしたの?」
「王妃様のお召し物の事で。明日の王太后様へのご挨拶にコルセットのないお召し物で良いのかと…。」
リオの妊娠は今はまだごく僅かな者だけが知っている状態だが、元々締め付ける服が苦手だった里桜の服装のことは‘好み’で片付ける事が出来ていた。
「陛下は普段コルセットはお付けにならないと説明していたでしょう?」
「用意を担当している者が新人で…一度見て確認して欲しいと。」
「私は無理だから・・」
「アナスタシア。こちらは大丈夫。陛下もすぐにいらっしゃるだろうし。具合が悪くなればアシルとブリスがいるから大丈夫よ。行って差し上げて。」
「はい。わかりました。では、私は一度離れますが、何かありましたら護衛の騎士に仰って下さいね。」
「わかってる。さっ早く行って差し上げて。」
里桜は笑ってアナスタシアを追い払う様な仕草をした。
∴∵
「陛下から、イルフロッタントは通常の半分の量を一つの器に入れるようにと指示がありました。二人分ですから、個数で言うと四つにして下さい。」
「はい。」
「あと、王妃陛下のお好きな梨やぶどう、オレンジなどの果物も小さな器に入れて、いくつか用意するようにと。」
「はい。」
レオナール付きの古参の侍女エミリーが手際よく厨房へ指図する。その隣で、新しく里桜の侍女になったララはお茶の用意をしている。それを手伝いながらエミリーは話す。
「陛下は小さな頃からイルフロッタントには目がなかったのよ。」
「でも、王妃様に全て差し上げていますよね。」
「王妃様もお好きでいらっしゃるからね。」
「あー羨ましい。あんな素敵で愛妻家の男なんてどこをどう探せば見つかるのかしら。」
「あなたは若いし三女と言っても子爵の家なんだから見つかるでしょう。」
「若いって…エミリーさん私、三十過ぎていますよ。子供もいます。」
「なら、もう見つかってるじゃない。」
「まぁ、働き者だし、賭け事や女遊びもしませんから、文句は言いませんけど。好物は子供と張り合って食べるんですよ。もう、親なのは私一人ですよ。」
「どこも一緒ね。」
二人で豪快に笑っていると、一人の侍女がやって来た。
「掃除係が、両陛下の寝室で何か困っている様で、お二人をお呼びです。」
「えっ?何かしら。」
二人は顔を見合わせて、その場を離れた。

