里桜は、独特の威圧感に喉の奥まで乾きそうになる感覚を覚える。それを気取られない様に冷静を装って、用意された紅茶を啜る。里桜の前には計測石があり、それは虹色に光っている。
「私は、魔力の強い渡り人と王が結婚することは良いことだと思っています。あなたの様に何かに欠けていても、これほどの魔力の強さがあれば、王妃として迎えることに異存はありません。渡り人のあなたが果たすべきはまず、レオナールの子を産むこと。しかも男子です。あなたは、神殿の仕事に力を入れていて、魔獣討伐なども自らで行っていたと聞きました。王妃となる者がそのような事をするのを私は好みませんが、まぁ、良いでしょう。一日も早く王の子を産む様に。それが、この国の発展のためなのです。良いですね。」
「はい。王太后様。」
「アニエス。」
アデライトは近くの侍女を呼んだ。
「侍女や下働きで十八歳から二十五歳くらいの見目の良いのを何人か見繕って、レオナールの側へ置きなさい。王妃がこの様に子供みたいな風姿ではレオナールも気の毒だわ。出自には拘らないから、とにかく見目の良い娘を選びなさい。王妃にこれだけ魔力があれば、例え下働きに子供が生まれても王位に就く様な事はないでしょうから。」
それだけ、言うとアデライトは腰を上げた。里桜もそれを合図に立ち上がり、最後の挨拶をして、部屋を出た。
離宮の玄関ホール着くと、里桜は口元を手で隠して突然笑い出した。
「どうなさいました?」
アナスタシアは驚いた様子で言う。
「いや…あんな昭和の昼ドラみたいな事を言われることもあるんだと思ったら、びっくりして。」
「ショウワ…ヒルドラ?」
里桜は、笑いながら用意された王妃の馬車に乗り込む。悠の母とはもちろん小さな頃から知り合いで、悠と付き合いだしてからは、悠の母と二人きりで買い物に行ったり食事に行ったりする仲だった。結婚の報告へ行った時も飛び上がらんばかりに喜ばれた。だから、日本にいたら経験できなかったこの状況がなんだかおかしかった。
「アナスタシア。」
「はい。」
「今日のこの会話、陛下へは報告しなくて良いからね。」
里桜は笑う。
「アナスタシアは私の動向を陛下に報告しているでしょ?」
アナスタシアは黙った。
「あぁ、良いの。怒っているわけではないから。私が陛下でもそう指示したはずだから。それに、アナスタシアはそれ以上に私のために侍女として良く働いてくれているし。どうやら、全てを報告していた訳でもないのだろうし。本当にアナスタシアがいてくれたこと感謝しているの。ただ、陛下は私と王太后様の挨拶をとても気にしていらしたから。今日の事は一度、アナスタシアの胸に留めておいてもらいたいだけなの。お願いね。」
アナスタシアは黙って頷いた。
「明日はいよいよ、陛下の側妃様にご挨拶ね。それが一番緊張する。」
「私は、魔力の強い渡り人と王が結婚することは良いことだと思っています。あなたの様に何かに欠けていても、これほどの魔力の強さがあれば、王妃として迎えることに異存はありません。渡り人のあなたが果たすべきはまず、レオナールの子を産むこと。しかも男子です。あなたは、神殿の仕事に力を入れていて、魔獣討伐なども自らで行っていたと聞きました。王妃となる者がそのような事をするのを私は好みませんが、まぁ、良いでしょう。一日も早く王の子を産む様に。それが、この国の発展のためなのです。良いですね。」
「はい。王太后様。」
「アニエス。」
アデライトは近くの侍女を呼んだ。
「侍女や下働きで十八歳から二十五歳くらいの見目の良いのを何人か見繕って、レオナールの側へ置きなさい。王妃がこの様に子供みたいな風姿ではレオナールも気の毒だわ。出自には拘らないから、とにかく見目の良い娘を選びなさい。王妃にこれだけ魔力があれば、例え下働きに子供が生まれても王位に就く様な事はないでしょうから。」
それだけ、言うとアデライトは腰を上げた。里桜もそれを合図に立ち上がり、最後の挨拶をして、部屋を出た。
離宮の玄関ホール着くと、里桜は口元を手で隠して突然笑い出した。
「どうなさいました?」
アナスタシアは驚いた様子で言う。
「いや…あんな昭和の昼ドラみたいな事を言われることもあるんだと思ったら、びっくりして。」
「ショウワ…ヒルドラ?」
里桜は、笑いながら用意された王妃の馬車に乗り込む。悠の母とはもちろん小さな頃から知り合いで、悠と付き合いだしてからは、悠の母と二人きりで買い物に行ったり食事に行ったりする仲だった。結婚の報告へ行った時も飛び上がらんばかりに喜ばれた。だから、日本にいたら経験できなかったこの状況がなんだかおかしかった。
「アナスタシア。」
「はい。」
「今日のこの会話、陛下へは報告しなくて良いからね。」
里桜は笑う。
「アナスタシアは私の動向を陛下に報告しているでしょ?」
アナスタシアは黙った。
「あぁ、良いの。怒っているわけではないから。私が陛下でもそう指示したはずだから。それに、アナスタシアはそれ以上に私のために侍女として良く働いてくれているし。どうやら、全てを報告していた訳でもないのだろうし。本当にアナスタシアがいてくれたこと感謝しているの。ただ、陛下は私と王太后様の挨拶をとても気にしていらしたから。今日の事は一度、アナスタシアの胸に留めておいてもらいたいだけなの。お願いね。」
アナスタシアは黙って頷いた。
「明日はいよいよ、陛下の側妃様にご挨拶ね。それが一番緊張する。」

