翌朝、いつもの様にアナスタシアの挨拶で目覚めた。
「おはよう。アナスタシア。」
「おはようございます。本日は快晴でございますよ。本当にリオ様には神のご加護がおありなのですね。大切な日は必ず晴れていらっしゃる気が致します。」
「そうかしら?」
「はい。今日、私とリナさんは出発の準備を致しますので、側仕えをアネットへお願いしました。」
「聞いてるわ。」
「リオ様。」
「何?」
アナスタシアが里桜に向ける視線は真剣だ。何か粗相をして、王妃らしくないと言われるのかと、里桜は心積もりした。
「もし、この結婚をお迷いならば、私とリナさんでリオ様を連れて逃げることも出来ますよ。」
アナスタシアの思わぬ提案に呆気に取られ、その後声を出して笑った。
「アナスタシア、随分男前な発言ね。」
「やっと、リオ様らしく笑って下さいました。王妃教育は仕方なく致しましたが、それがリオ様らしさを失わせる事になるならば、無駄なことだったのかも知れません。講師たちが言ったことは頭の片隅に置いておいて下されば良いのです。私たちの前で、王妃の振る舞いはなさらなくても良いのですよ。」
「ありがとう。アナスタシア。大丈夫。陛下の元に行くことに迷ってはいないから。でも、少しだけこの自由がなくなってしまうことに不安を感じたの。」
「大丈夫です。私もリナさんも付いています。何かあった時は一人で悩まずに、必ず私どもにお話し下さいね。」
「わかった。そうする。」
「はい。」
∴∵
アネットは、真剣な顔で里桜の顔に化粧を施す。身支度に入る前にリナから、今日のこの役目のために、アネットは何日もメイクを勉強していたと聞いた。
「お嬢様、出来上がりました。陛下から届けられたドレスもとてもお似合いになっています。」
里桜が鏡を見ると、アネットの勉強のおかげか、見事な公爵令嬢に仕上がっている。
「ありがとう。アネット。」
「お迎えまでしばらく時間がありますので、お茶をお淹れしますね。」
里桜は頷いた。
この日のためにレオナールから贈られたのは、深紅のドレスだった。ノックの音に返事をすると、入ってきたのはロベールと意外な人物だった。
「リオ、もうこの者は知っているね。」
「はい。寮監長のアルフレードさんです。いつも細やかに色々な事に対応をして下さって。」
「今日から、彼がリオの侍従を努めることになった。」
「?」
「彼は、私の姉上でアナスタシアの祖母のマルゲリット王女の侍従をしていた、アドルフの孫だ。代々王家の侍従をしている家だ。実は、こんなことになるかも知れないと、クロヴィスが先手を打って寮監長として彼をリオの側に置いていた様だ。あいつは、本当に食えない奴だが…今回は助けられた。リオ、顔を知った信頼できる人間が側にいることは王宮では何よりも重要なことだ。何かの時は、このアルフレード、リナ、アナスタシアを頼りなさい。」
「はい。わかりました。」
里桜はそう返事しながら、アルフレードと初めて会った日のことを思い出す。佇まいが寮監らしくないなと感じてはいたが、全てクロヴィスの思い通りにされている様で少しだけ癪に障った。
「それでは、改めて。アルフレード、これから頼みますね。」
「はい。リオ様。誠心誠意お仕え致します。」
そこで、またノックの音がして入ってきたのはお茶を持ったアネットだった。
「では、邪魔したね。少しゆっくりしていると良い。」
「ありがとうございます。お養父様。」
「おはよう。アナスタシア。」
「おはようございます。本日は快晴でございますよ。本当にリオ様には神のご加護がおありなのですね。大切な日は必ず晴れていらっしゃる気が致します。」
「そうかしら?」
「はい。今日、私とリナさんは出発の準備を致しますので、側仕えをアネットへお願いしました。」
「聞いてるわ。」
「リオ様。」
「何?」
アナスタシアが里桜に向ける視線は真剣だ。何か粗相をして、王妃らしくないと言われるのかと、里桜は心積もりした。
「もし、この結婚をお迷いならば、私とリナさんでリオ様を連れて逃げることも出来ますよ。」
アナスタシアの思わぬ提案に呆気に取られ、その後声を出して笑った。
「アナスタシア、随分男前な発言ね。」
「やっと、リオ様らしく笑って下さいました。王妃教育は仕方なく致しましたが、それがリオ様らしさを失わせる事になるならば、無駄なことだったのかも知れません。講師たちが言ったことは頭の片隅に置いておいて下されば良いのです。私たちの前で、王妃の振る舞いはなさらなくても良いのですよ。」
「ありがとう。アナスタシア。大丈夫。陛下の元に行くことに迷ってはいないから。でも、少しだけこの自由がなくなってしまうことに不安を感じたの。」
「大丈夫です。私もリナさんも付いています。何かあった時は一人で悩まずに、必ず私どもにお話し下さいね。」
「わかった。そうする。」
「はい。」
∴∵
アネットは、真剣な顔で里桜の顔に化粧を施す。身支度に入る前にリナから、今日のこの役目のために、アネットは何日もメイクを勉強していたと聞いた。
「お嬢様、出来上がりました。陛下から届けられたドレスもとてもお似合いになっています。」
里桜が鏡を見ると、アネットの勉強のおかげか、見事な公爵令嬢に仕上がっている。
「ありがとう。アネット。」
「お迎えまでしばらく時間がありますので、お茶をお淹れしますね。」
里桜は頷いた。
この日のためにレオナールから贈られたのは、深紅のドレスだった。ノックの音に返事をすると、入ってきたのはロベールと意外な人物だった。
「リオ、もうこの者は知っているね。」
「はい。寮監長のアルフレードさんです。いつも細やかに色々な事に対応をして下さって。」
「今日から、彼がリオの侍従を努めることになった。」
「?」
「彼は、私の姉上でアナスタシアの祖母のマルゲリット王女の侍従をしていた、アドルフの孫だ。代々王家の侍従をしている家だ。実は、こんなことになるかも知れないと、クロヴィスが先手を打って寮監長として彼をリオの側に置いていた様だ。あいつは、本当に食えない奴だが…今回は助けられた。リオ、顔を知った信頼できる人間が側にいることは王宮では何よりも重要なことだ。何かの時は、このアルフレード、リナ、アナスタシアを頼りなさい。」
「はい。わかりました。」
里桜はそう返事しながら、アルフレードと初めて会った日のことを思い出す。佇まいが寮監らしくないなと感じてはいたが、全てクロヴィスの思い通りにされている様で少しだけ癪に障った。
「それでは、改めて。アルフレード、これから頼みますね。」
「はい。リオ様。誠心誠意お仕え致します。」
そこで、またノックの音がして入ってきたのはお茶を持ったアネットだった。
「では、邪魔したね。少しゆっくりしていると良い。」
「ありがとうございます。お養父様。」

