シドからの報せはその日の昼前に届いた。






 里桜はシドからの手紙を音読して、回りの騎士たちにも聞かせた。

「ロベール尊者。この報告によると、現れた魔物はとしこさんの魔力を吸って、力を増強させているってことですか?」
「そのようだ。」
「と、言うことはいくら手練れの兵士でも倒せないんじゃ?」
「ん…かもしれん。」
「それなら、私が行きます。」
「それはなりません。」

 振り向くと、真っ直ぐに里桜を見つめるリナと目が合う。

「大丈夫です。私なら。」

 そう答える里桜の目を見て、止められないとリナもアナスタシアも感じる。

「私もご一緒します。道中は護衛がおりませんと。」

 そう言ったのはヴァレリーだった。

「大丈夫。天馬を呼ぶから。」

 その場が騒然とする。すると、ロベールは一つ咳払いをした。

「まだ、正式に承認されるまでは時間がかかるが、リオ様を私の養女とすることにした。こう言う手続きは煩雑でね。正式にはもう少し後になるが。それで、私の天馬をリオ様に差し上げたのだ。老齢の私より最前線へは彼女の方が行くことも多くなるだろうから。」

 騎士たちはひとまず納得したようだ。

「天馬なら王宮へもすぐだし。」
「リオ様、貴女を止めることは出来ないのでしょう。しかし、貴女に何かあらばここにいる者たちは皆、何故あの時ちゃんとお止めしなかったのだろうと深く後悔することでしょう。その事をお忘れなく。ご自身を大切にして下さい。」

 ロベールの言葉を噛み締める。

「わかりました。でも、行くことを止めないでくれてありがとうございます。」