なんだ、これ。
今いる場所は、白壁で図書館にいるみたいだ。
どこの図書館だ。
いつも行っている図書館とはまるで別物だ。
ここは一体なんだ。
短髪で丸みな顔をしている太郎(たろう)は法律の勉強をしていた。
大学三年生で公務員になる夢を叶えるために遊びもせずに勉強をひたすらやっていた。
休憩がてら、コップを持ち、コーヒーを淹れに行ったら、母親が太郎を呼んでいた。
「太郎。お母さん、ちょっと出かけてくるから。勉強頑張りなさいよ」
ロングで過去一長い髪をブラシで整えたのか、なめらかで真っ直ぐな髪を手で触り、小さい鞄を手にして早々と外に出て行った。
「行ってらっしゃい!」
母さんに手を振ってから、淹れていた残りのコーヒーをコップに入れてから二階に上がっていた。
自分の部屋の扉を開けて、ガチャと閉めた。
椅子に座り、一口コーヒーを飲んでから、ため息を吐いた。
本当はあまり気が進まない。
公務員にはなりたい。
けれど、物足りない。
世の中のことは分かっているつもりだけど、まだまだ知らない世界を見ていないようで怖かった。
知りたいけれど知りたくもない。
自分が変わるかもしれないから。
変わりたいのに変わりたくない自分がいる。
「はぁ……」
太郎はため息を吐いた後、机にあったティシュを手に取った。
すると、急に頭が痛くなり、両手を頭に抱えた。
「なんだ…痛い……勉強しすぎかな」
薬でも飲もうと立ち上がった時、太郎一人で自分の部屋にいるはずなのに何故か人がいた。
ここって……図書館。
図書館の受付側に立っていて、太郎は左右を見渡して、呆然とした。
近くにいた受付の人が声を掛けてきた。
「…あの……なにか本借りますか?」
太郎の顔を覗うように、困り顔で聞いてきた。
「あ……あの……。ここって、なんですか」
ここの場所は見たことなかったので聞いてみて、もしかして太郎が知っている場所かもしれないと思ったからだ。
「え? ここは、図書館ですけど、あっ、もしかして、初めてな方ですか。なら、あちらになります」
受付の人が手を差し出した方に目を向けると、左側に人がいた。
そこには男性一人が背筋をまっすぐにして、座椅子に座っていた。
「ありがとうございます」
受付の人に礼を言うと、男性がいる受付の方に歩み寄った。
そこには、初めてな方の案内番と書かれていた。
なんの初めて? 図書館に来ることが?
「はじめまして。お座りください」
男性は椅子の方に誘導して、優しく微笑んでいた。
太郎が座ったら、男性はスーツの首元を直してから、咳ばらいをして挨拶をし始めた。
「私は瀬木(せき)です。ここはどこだと思いますか?」
瀬木は突然太郎に質問してきた。
「…図書館?」
太郎は首を傾げて、疑問形で答えた。
「違います。ここの世界であう能力を探す手伝いをします」
「能力?」
「そうです。ここはあなたのいた世界ではなく、いわゆるよく最近見かける異世界です」
太郎は立ち上がり、机に両手を叩きつけて、目を丸くした。
「…はい? え? 異世界。はぁ? いやいや俺、自分の机で勉強してたんですよ。なぜかここにいたんですよ! 異世界? あり得ない!」
太郎は興奮気味に息を荒げて、この世界になぜいるのか疑問であった。
「あなた、ティッシュ掴みませんでしたか?」
瀬木は太郎の目を見据えて、問いかける。
「掴みました。それがなにか関係あるんですか」
太郎は瀬木に言葉を投げかけた。
「あります。悩みの種が膨らんでいるがまだ大きく膨らんでない。そして、将来に不安がある人がここに来ます。大体、あなたくらいの年齢が多いけど。十代から六十歳までいます。ここに来たのはあなたが見えていない能力を生かして、活躍してもらいます」
「なぜティッシュを掴むとここに来るようになってるんですか」
「…それは、手の成分とティッシュを触った感触でどこからか認識して、ここに来るようになっているんです。誰がそういうことを知っているか自分でもわかりかねないですが、ここに来ることでメリットは発生します」
瀬木は机の近くにあった資料を取り出して、太郎に説明した。
「メリット?」
「ここに来ることであなたが見えていない能力が備わる。それを見つけるためにここに来たと思ってください」
「あの……俺がここの世界にいて、何か役に立つことはありますか?」
資料をパラパラとページをめくって、閉じてから瀬木に聞く。
「…あります。あとはあなた次第です」
瀬木は棚からプリント一枚を太郎の目の前に置き、また説明をした。
「これはあなたのプロフィールを知りたいので、書ける範囲で教えてください」
瀬木の言う通りに太郎は近くにあったペンを持ち、書き始めた。
本当によくある自分のプロフィールだった。
自分の名前・年齢・住所・学歴・質問事項の五つの項目があった。
太郎はペンを握りしめてアンケートを書くようにスムーズに書き切った。
瀬木は紙一枚を太郎から渡されて、スキャンをしていた。
「…では、最後にあなたにお聞きします。あなたは自分になんの能力が必要だと思いますか」
瀬木は両手を組んで、優しく太郎を不安にさせないように笑顔で包み込んでいた。
「……俺は何かしら俺にそんな能力が備わっているのか試したいです」
思っていることを口にして、太郎は我に返った。
公務員になるために勉強している日々だが、なにか物足りなかったのは事実だった。
それはまだ分かりそうで分からない。
けれど、人の役に立ちたいという思いは消えることはない気がした。
「分かりました。結果でましたのでお伝えします」
スキャンした紙が出てきたので、紙に書かれている結果を瀬木が目を通した。
瀬木が言葉を発す瞬間、太郎は言葉を重ねる。
「…この結果でどこにいくのか決まるってことですよね。もしかして、合わない可能性もあって、それでダメだったら現代には戻れないんですか」
太郎は説明を聞きながら、疑問に思っていたことを声を発す。
「現代に戻れるのはあなた次第です。現代とここの世界での流れは同じじゃありません。現代はあなたが来た所で止まっています。ここで何をするのかどうするべきなのかはあなたが一番分かってると思います。では、結果をお伝えしますよ」
瀬木は太郎の目を逸らさずに見て、毛布にくるまれたように一つひとつの言葉を大切にして伝えてきた。
「…いや…それは分かってます。でも、俺…」
「心配なのはここに来た人たち、みんなそうです。でも、ここで案内されて、皆さんいい笑顔で過ごしていかれますから。あなたの異世界は緑色です。是非、一人ひとりと向き合って、あなたの道にたどり着いてくださいね。では、あなたはこの世界へ行ってください」
瀬木は紙にあったQRコードをタブレットにかざしてから、太郎は自分の影が薄くなり、どこかへ消えた。
目を開けると、そこは緑色の世界が広がっていた。
周りを見渡すと、緑色の服を着た人ばかりがそこにはいた。
「……はぁ? なんで緑色しかないの」
太郎は目を丸くして、どこもかしも緑色で頭がクラクラしそうになった。
「あら。初見の方ね。えーと……」
初老の女性はポーチに入っていた携帯を取り出して、何かを見ていた。
「ああ……太郎さんね。この世界へようこそ。ここ、緑の世界だから。基本、緑が多くて、目がやられるでしょ。これ、つけて」
今いる人が太郎だと一致したからか怪しいものを見る目から歓迎モードの表情になっていた。
サングラスを渡されて、太郎はつけた。
よく見ると、みんなサングラスをかけていた。
そんなに怪しい人に見えたか。
ってか、ここに来るのは不審者とか来るわけないだろう。
「ここに来る人は大体、癒しを提供したい人だから。もし、ここに侵入してくる人もたまにいるけど、そうじゃないので安心しました。太郎さんはここに来た意味は分かりますか?」
初老の女性は太郎の顔を覗うように質問を返してくれた。
「……分からないです」
「はぁ、また瀬木くん。そこまで説明しなかったのね。めんどくさかったのかな」
初老の女性は困ったねと肩を上げてため息を吐いてから太郎に目を向けた。
「ここの世界は色で識別されるんです。赤・白・緑・青四つの世界があって、あなたにあう能力に振り分けられる。赤は積極的に話す能力、白は自分の気持ちを安定して想像力を膨らませる能力、緑は癒しを与える能力、青は情報スキルを備わる能力がつく。そこでやっていくにはあるものと戦ってもらうようになっているんです」
「あるもの?」
太郎は初老の女性に目を向けて、聞き返す。
「それはあとで説明しますね。まず、見てもらったほうが早いかもしれませんね」
初老の女性はそこから歩いていったので、太郎はついて行った。
歩いていると、森林豊かな場所で弁当を広げている人もいれば、売店で何かを買っている人もいた。
今はお昼休みなのかみんなご飯を食べていた。
「…ここは現代と同じように過ごしてもらっています。けれど、一番違う点は……」
初老の女性は言いかけていた時に緊急速報がアナウンスで流れてきた。
「みなさん、今から始まります。では、GO!」
GOと言った瞬間、その場にいる全員が自分の胸ポケットを押してからどこかへ向かったのか消えていった。
なにこれ……どうなってんの。
やっぱり、現代と違うのか。
「…あの…どこ行ったんですか」
先ほどまで人だかりで騒がしいほどだったのに今は静かで人もいない。
「……戦うです。あるものと」
「さっきからあるものって言ってますけど、何なんですか」
太郎は初老の女性がもったいぶっているのでイライラしてきた。
初老の女性には申し訳ないが、早く言ってほしい。
そんなにもったいぶるということは何かあるのか。
「……ここで説明すると太郎さんが訳わからなくなると思うので、今から行ってみてください」
初老の女性が太郎に言った途端、太郎の袖を掴み、初老の女性の胸ポケットを押して、景色が広がった。
「…………え?……」
太郎は目の前に広がる景色に驚愕した。
そこは囚われている人々だった。
「…あの……これって、人ですか?」
「人だよ。人は人だけど、もうほとんど死人。亡くなっているの。でも、生きてる。訳わからないでしょ。この人達はここの世界でダメになった人つまりこの世界で期限内に能力をうまく活用できなかった人」
初老の女性は早口で太郎にこの世界の定めを伝えた。
亡くなる? この世界で。
いやいや、待って、待って。
ここにいることでメリットはあるって受付の瀬木って方、言ってなかったか。
普通の生活を送って、自分では分からない能力が分かって、それで現実世界に戻れるんじゃないのか。
「瀬川くん、そこまで言わなかったか、いつも通り。もうここでやめていいけど、すぐあなたは処刑されて、現実世界には一生戻れなくなる。それでもやめる? やめない?」
急な選択肢に太郎は戸惑う。
はぁ? ここで終わると死ぬなんて絶対嫌に決まってるし、こいつらを倒す手段なんてあるのだろうか。
「ここで生き残るにはあの死人を倒すしかないんですか?」
太郎は拳を握りしめて、意を決して言葉を紡ぐ。
初老の女性は言いにくそうに口を開く。
「そう……あなたの能力は癒しの効果を与える分類。それで闘って、自主練をして、学んで頑張っていくしかないの。ここを出るには、自分自身と自分以外の人と向き合って、勝って勝っていくしかない。この世界にいる限り」
初老の女性は目を見据えて、現状の世界でのことを詳しく話した。
「…はい……」
返事をしたものの、この現状を飲み込めないでいた。
「もうすぐ終わると思うから、戻ろうか」
腰を手に当てて、初老の女性はまた自分の胸ポケットを手で押して、先ほどの場所に戻った。
「…じゃあ、説明は以上になります。何か質問ありますか」
携帯をパンツのポケットにしまって、太郎に聞いた。
「ここの世界は闘わないといけないんですか」
太郎はこの世界について、異世界とは分かってはいるが、ただの夢や想像の世界にいるもんだと半分考えていた。
けれど、先ほど見た戦いの姿で今の世界の現状を知った。
剣で切られていて血が出ている人や胸を突き刺さった動けない人や能力解放でやられた人など多数の犠牲者を見てしまって、この世界にいるのは想像じゃない。現実なんだと。
「はい。ここは異世界です。現実の平和の象徴の日本とは違く、自分の闘いをしていくのです。平和や平等とかはないです。あるのは己自身を信じることです」
初老の女性は真顔でこの世界について語った。
己自身を信じること。
それだけがここで生きる術なのだろうか。
太郎は初老の女性と向き合い、目があった。
「……っ…」
太郎は言葉が詰まった。
本当にやっていけるのだろうか。
現実世界では勉強しかしてこなかった太郎がこの異世界で死人と闘って、自分と向き合えるのだろうか。
太郎は不安や心配事が増えるばかりだ。
その心境を察したのか初老の女性はある一言を太郎にかける。
「太郎さん。もうここまで来たら戻れません。やるしかないんです。どうか覚悟を決めてください」
眉を下げて、太郎を心配しているように見えるが、早く気持ちの整理をしてほしそうにも見えた。
太郎は右方向に目を向けて、自分の気持ちがうまく説明できないでいた。
太郎は下を俯いた後、初老の女性に目を向ける。
「……っ…俺、やります。この世界で何ができるのかやってみます」
この世界にいて、太郎はどうなるのか分からない。
もしかして、死ぬかもしれないし生き伸びるかもしれない。
信じられない状況の中で、環境に適応しようと必死だった。
自分自身がこの世界でどうあるべきか考えても仕方ない。
けれど、脳では考えてしまう。
考えてもマイナス思考に陥るだけだ。
本当にやるしかない。
やらざる負えないんだ。
初老の女性はそうですかと返事をしてから、太郎の背中をポンポンと優しく叩いてどこかへ消えた。
太郎は一人になり、初老の女性から一人ひとり部屋が設けてあるという。
その部屋は赤い屋根の一軒家。
地図も渡されて、まずはその家に向かうことにした。
「えーと……ここどこだよ。分かりづらいなぁ」
緑の世界では森が沢山生い茂っているし、あっちこっちにいろんな花がある。
花は目印になっていて、曲がる角などにはこっそりと花が咲いている。
「…つつじがあるからここ曲がるのか、なんか疲れたな」
太郎は何時間だろうか歩いては休んでを繰り返して、食事は取っていなかった。
というか、取る暇がなかった。
ってか、どこでご飯食べれるのか分からなでいた。
初老の女性も受付の瀬木さんも教えてくれずに太郎はどうしたもんかと思い悩んでいた。
「……はぁ」
ブランコやシーソーが1台ずつあって、ベンチがあったので太郎一人で座っていた。
その時、ある声が聞こえてきた。
「美味しい。美味しいカレーどうですか? 美味しいですよ~」
その声に太郎は思わず、すぐ立ち上がり、声にする方へ駆け寄る。
走って向かおうとしたら、ある人に肩を掴まれた。
思わず、止められたので、なんだよと声を荒げた。
「お前、この声が聞こえるからって行くな!」
筋肉がモリモリなのか両腕は膨らんでいて、手をほどくのにも力を入れないとほどけなかった。
「……邪魔すんなよ。俺今からあそこにあるカレー屋に行くの。邪魔すんなよ」
太郎はお腹が空いているせいか声を掛けられた相手にキレた。
「…お前、本当に知らないのか。あのカレー屋は毒入りのカレーなの。正常のモノじゃない」
筋肉モリモリの男性に言われて、間抜けな顔していただろうか。
筋肉モリモリの男性はプッと口を出してから咳ばらいをしてから太郎と向き合う。
「…ああ、ゴメン、ゴメン。そういうことだから、あのカレー屋は行かないの。こっちに行くよ」
筋肉モリモリの男性は野中桁(のなかけた)と言う。
彼は赤い屋根の一軒家に住んでいる住人だった。
「…あっ、ありがとうございます。ってか、なんでカレー売っているのに毒入りなんですか」
キッチンカーでカレー売っていたら、普通買って食べるに決まっている。
毒入りが入っている意味が分からない。
「ああ、それは俺たちがどこまで判断出来るか見てるんだ」
「見てる?」
「そう。この世界の人達全員、世界を仕切っている人が監視をしている。まぁ、俺はここ長いから、もう慣れちゃったけど。びっくりするよな」
野中は歩きながらもどこからかポケットから小さめなマヨネーズを出して、口に入れていた。
それを見た太郎はドン引いていた。
マヨネーズ好きなのか……あはは。
心の中で苦笑いをした。
「…じゃあ、外に出てるキッチンカーが出てるやつは全部ダメってことか?」
「ああ、そう。監視も二十四時間」
「二十四時間!」
太郎は一日ずっと監視されていると思うと、驚きで目が丸くなった。
「……そう、ここでは当たり前。ここだよ。着いた」
野中はマヨネーズを食べ終わると、パンツのポケットにビニール袋があったのかそこに入れて、赤い家の扉を開けた。
「あ、こんにちは」
赤い家の住民なのだろうか。
ジャージ姿で太郎たちに挨拶をした。
「ここ、一二名住んでる。この家以外にも赤い家はあるが、程度が分かれてる。ここは中級クラス。だけど、本当は初級がほとんど。初級よりはみんな上だけど、君は最初から中級ってことは君、中々強いのかな。どう?」
「え? いや……分からないですけど…」
「まぁ、そのうちかな。ここに住んでる人の能力は住めば大体、分かるから。ここがキッチンで一階・二階と各自の部屋がある。君は一階の部屋になるからここ。あと、お風呂は一つ・トイレは2つあるから自由に使ってね、じゃあ、俺はここで」
一気に野中は説明をした後、自分の部屋に行ってからすぐ外に出た。
「俺の部屋……ここか」
部屋番号が書かれた表札を見て、野中から渡された鍵を持って、開ける。
そこは普通の部屋だった。冷蔵庫やテレビや小さいキッチンまであった。
「うわぁ、現代の部屋より広いわ。なにこの待遇。普通は異世界に来たのなら綺麗な部屋じゃなく、汚い感じじゃないのか」
太郎は部屋のドアを開けて、部屋の中を見て、呆然と独り言を言って立ち尽くした。
「……ふぅ……」
自分の部屋に入り、ため息を吐いてから、床に寝そべった。
これから、慣れない環境でこの異世界の中で自分と向き合い、闘わないといけない。
敵を倒して、倒して、死ななければいい話。
だけど、そんな簡単にはいかないのは分かっている。
でも、やらなきゃいけない。
自分と向き合うことは、太郎はしてこなかった。
もちろん、学校やSNS で情報が得られて、自分との向き合う時間はあった。
それでも、そんな自分と目を逸らした。
公務員に受かればいい。
そしたら、何もかもやりたいことややれてこなかったことをやれると思っていた。
その我慢を試験が終わってからやればいいと思い、後回しにしていた。
それをやってこなかった太郎は今こうなっていると思う。
自分の意志でやっていたはずなのに一人になった今、やれるんじゃないかと不安はあるものの自信が何故かあった。
勉強しか取り柄がない太郎は自分と向き合い、癒しがあるものを何か身につくのだろうか。
ガリ勉な太郎は真面目だからこそ一生懸命に現実と向き合っていく。
今いる場所は、白壁で図書館にいるみたいだ。
どこの図書館だ。
いつも行っている図書館とはまるで別物だ。
ここは一体なんだ。
短髪で丸みな顔をしている太郎(たろう)は法律の勉強をしていた。
大学三年生で公務員になる夢を叶えるために遊びもせずに勉強をひたすらやっていた。
休憩がてら、コップを持ち、コーヒーを淹れに行ったら、母親が太郎を呼んでいた。
「太郎。お母さん、ちょっと出かけてくるから。勉強頑張りなさいよ」
ロングで過去一長い髪をブラシで整えたのか、なめらかで真っ直ぐな髪を手で触り、小さい鞄を手にして早々と外に出て行った。
「行ってらっしゃい!」
母さんに手を振ってから、淹れていた残りのコーヒーをコップに入れてから二階に上がっていた。
自分の部屋の扉を開けて、ガチャと閉めた。
椅子に座り、一口コーヒーを飲んでから、ため息を吐いた。
本当はあまり気が進まない。
公務員にはなりたい。
けれど、物足りない。
世の中のことは分かっているつもりだけど、まだまだ知らない世界を見ていないようで怖かった。
知りたいけれど知りたくもない。
自分が変わるかもしれないから。
変わりたいのに変わりたくない自分がいる。
「はぁ……」
太郎はため息を吐いた後、机にあったティシュを手に取った。
すると、急に頭が痛くなり、両手を頭に抱えた。
「なんだ…痛い……勉強しすぎかな」
薬でも飲もうと立ち上がった時、太郎一人で自分の部屋にいるはずなのに何故か人がいた。
ここって……図書館。
図書館の受付側に立っていて、太郎は左右を見渡して、呆然とした。
近くにいた受付の人が声を掛けてきた。
「…あの……なにか本借りますか?」
太郎の顔を覗うように、困り顔で聞いてきた。
「あ……あの……。ここって、なんですか」
ここの場所は見たことなかったので聞いてみて、もしかして太郎が知っている場所かもしれないと思ったからだ。
「え? ここは、図書館ですけど、あっ、もしかして、初めてな方ですか。なら、あちらになります」
受付の人が手を差し出した方に目を向けると、左側に人がいた。
そこには男性一人が背筋をまっすぐにして、座椅子に座っていた。
「ありがとうございます」
受付の人に礼を言うと、男性がいる受付の方に歩み寄った。
そこには、初めてな方の案内番と書かれていた。
なんの初めて? 図書館に来ることが?
「はじめまして。お座りください」
男性は椅子の方に誘導して、優しく微笑んでいた。
太郎が座ったら、男性はスーツの首元を直してから、咳ばらいをして挨拶をし始めた。
「私は瀬木(せき)です。ここはどこだと思いますか?」
瀬木は突然太郎に質問してきた。
「…図書館?」
太郎は首を傾げて、疑問形で答えた。
「違います。ここの世界であう能力を探す手伝いをします」
「能力?」
「そうです。ここはあなたのいた世界ではなく、いわゆるよく最近見かける異世界です」
太郎は立ち上がり、机に両手を叩きつけて、目を丸くした。
「…はい? え? 異世界。はぁ? いやいや俺、自分の机で勉強してたんですよ。なぜかここにいたんですよ! 異世界? あり得ない!」
太郎は興奮気味に息を荒げて、この世界になぜいるのか疑問であった。
「あなた、ティッシュ掴みませんでしたか?」
瀬木は太郎の目を見据えて、問いかける。
「掴みました。それがなにか関係あるんですか」
太郎は瀬木に言葉を投げかけた。
「あります。悩みの種が膨らんでいるがまだ大きく膨らんでない。そして、将来に不安がある人がここに来ます。大体、あなたくらいの年齢が多いけど。十代から六十歳までいます。ここに来たのはあなたが見えていない能力を生かして、活躍してもらいます」
「なぜティッシュを掴むとここに来るようになってるんですか」
「…それは、手の成分とティッシュを触った感触でどこからか認識して、ここに来るようになっているんです。誰がそういうことを知っているか自分でもわかりかねないですが、ここに来ることでメリットは発生します」
瀬木は机の近くにあった資料を取り出して、太郎に説明した。
「メリット?」
「ここに来ることであなたが見えていない能力が備わる。それを見つけるためにここに来たと思ってください」
「あの……俺がここの世界にいて、何か役に立つことはありますか?」
資料をパラパラとページをめくって、閉じてから瀬木に聞く。
「…あります。あとはあなた次第です」
瀬木は棚からプリント一枚を太郎の目の前に置き、また説明をした。
「これはあなたのプロフィールを知りたいので、書ける範囲で教えてください」
瀬木の言う通りに太郎は近くにあったペンを持ち、書き始めた。
本当によくある自分のプロフィールだった。
自分の名前・年齢・住所・学歴・質問事項の五つの項目があった。
太郎はペンを握りしめてアンケートを書くようにスムーズに書き切った。
瀬木は紙一枚を太郎から渡されて、スキャンをしていた。
「…では、最後にあなたにお聞きします。あなたは自分になんの能力が必要だと思いますか」
瀬木は両手を組んで、優しく太郎を不安にさせないように笑顔で包み込んでいた。
「……俺は何かしら俺にそんな能力が備わっているのか試したいです」
思っていることを口にして、太郎は我に返った。
公務員になるために勉強している日々だが、なにか物足りなかったのは事実だった。
それはまだ分かりそうで分からない。
けれど、人の役に立ちたいという思いは消えることはない気がした。
「分かりました。結果でましたのでお伝えします」
スキャンした紙が出てきたので、紙に書かれている結果を瀬木が目を通した。
瀬木が言葉を発す瞬間、太郎は言葉を重ねる。
「…この結果でどこにいくのか決まるってことですよね。もしかして、合わない可能性もあって、それでダメだったら現代には戻れないんですか」
太郎は説明を聞きながら、疑問に思っていたことを声を発す。
「現代に戻れるのはあなた次第です。現代とここの世界での流れは同じじゃありません。現代はあなたが来た所で止まっています。ここで何をするのかどうするべきなのかはあなたが一番分かってると思います。では、結果をお伝えしますよ」
瀬木は太郎の目を逸らさずに見て、毛布にくるまれたように一つひとつの言葉を大切にして伝えてきた。
「…いや…それは分かってます。でも、俺…」
「心配なのはここに来た人たち、みんなそうです。でも、ここで案内されて、皆さんいい笑顔で過ごしていかれますから。あなたの異世界は緑色です。是非、一人ひとりと向き合って、あなたの道にたどり着いてくださいね。では、あなたはこの世界へ行ってください」
瀬木は紙にあったQRコードをタブレットにかざしてから、太郎は自分の影が薄くなり、どこかへ消えた。
目を開けると、そこは緑色の世界が広がっていた。
周りを見渡すと、緑色の服を着た人ばかりがそこにはいた。
「……はぁ? なんで緑色しかないの」
太郎は目を丸くして、どこもかしも緑色で頭がクラクラしそうになった。
「あら。初見の方ね。えーと……」
初老の女性はポーチに入っていた携帯を取り出して、何かを見ていた。
「ああ……太郎さんね。この世界へようこそ。ここ、緑の世界だから。基本、緑が多くて、目がやられるでしょ。これ、つけて」
今いる人が太郎だと一致したからか怪しいものを見る目から歓迎モードの表情になっていた。
サングラスを渡されて、太郎はつけた。
よく見ると、みんなサングラスをかけていた。
そんなに怪しい人に見えたか。
ってか、ここに来るのは不審者とか来るわけないだろう。
「ここに来る人は大体、癒しを提供したい人だから。もし、ここに侵入してくる人もたまにいるけど、そうじゃないので安心しました。太郎さんはここに来た意味は分かりますか?」
初老の女性は太郎の顔を覗うように質問を返してくれた。
「……分からないです」
「はぁ、また瀬木くん。そこまで説明しなかったのね。めんどくさかったのかな」
初老の女性は困ったねと肩を上げてため息を吐いてから太郎に目を向けた。
「ここの世界は色で識別されるんです。赤・白・緑・青四つの世界があって、あなたにあう能力に振り分けられる。赤は積極的に話す能力、白は自分の気持ちを安定して想像力を膨らませる能力、緑は癒しを与える能力、青は情報スキルを備わる能力がつく。そこでやっていくにはあるものと戦ってもらうようになっているんです」
「あるもの?」
太郎は初老の女性に目を向けて、聞き返す。
「それはあとで説明しますね。まず、見てもらったほうが早いかもしれませんね」
初老の女性はそこから歩いていったので、太郎はついて行った。
歩いていると、森林豊かな場所で弁当を広げている人もいれば、売店で何かを買っている人もいた。
今はお昼休みなのかみんなご飯を食べていた。
「…ここは現代と同じように過ごしてもらっています。けれど、一番違う点は……」
初老の女性は言いかけていた時に緊急速報がアナウンスで流れてきた。
「みなさん、今から始まります。では、GO!」
GOと言った瞬間、その場にいる全員が自分の胸ポケットを押してからどこかへ向かったのか消えていった。
なにこれ……どうなってんの。
やっぱり、現代と違うのか。
「…あの…どこ行ったんですか」
先ほどまで人だかりで騒がしいほどだったのに今は静かで人もいない。
「……戦うです。あるものと」
「さっきからあるものって言ってますけど、何なんですか」
太郎は初老の女性がもったいぶっているのでイライラしてきた。
初老の女性には申し訳ないが、早く言ってほしい。
そんなにもったいぶるということは何かあるのか。
「……ここで説明すると太郎さんが訳わからなくなると思うので、今から行ってみてください」
初老の女性が太郎に言った途端、太郎の袖を掴み、初老の女性の胸ポケットを押して、景色が広がった。
「…………え?……」
太郎は目の前に広がる景色に驚愕した。
そこは囚われている人々だった。
「…あの……これって、人ですか?」
「人だよ。人は人だけど、もうほとんど死人。亡くなっているの。でも、生きてる。訳わからないでしょ。この人達はここの世界でダメになった人つまりこの世界で期限内に能力をうまく活用できなかった人」
初老の女性は早口で太郎にこの世界の定めを伝えた。
亡くなる? この世界で。
いやいや、待って、待って。
ここにいることでメリットはあるって受付の瀬木って方、言ってなかったか。
普通の生活を送って、自分では分からない能力が分かって、それで現実世界に戻れるんじゃないのか。
「瀬川くん、そこまで言わなかったか、いつも通り。もうここでやめていいけど、すぐあなたは処刑されて、現実世界には一生戻れなくなる。それでもやめる? やめない?」
急な選択肢に太郎は戸惑う。
はぁ? ここで終わると死ぬなんて絶対嫌に決まってるし、こいつらを倒す手段なんてあるのだろうか。
「ここで生き残るにはあの死人を倒すしかないんですか?」
太郎は拳を握りしめて、意を決して言葉を紡ぐ。
初老の女性は言いにくそうに口を開く。
「そう……あなたの能力は癒しの効果を与える分類。それで闘って、自主練をして、学んで頑張っていくしかないの。ここを出るには、自分自身と自分以外の人と向き合って、勝って勝っていくしかない。この世界にいる限り」
初老の女性は目を見据えて、現状の世界でのことを詳しく話した。
「…はい……」
返事をしたものの、この現状を飲み込めないでいた。
「もうすぐ終わると思うから、戻ろうか」
腰を手に当てて、初老の女性はまた自分の胸ポケットを手で押して、先ほどの場所に戻った。
「…じゃあ、説明は以上になります。何か質問ありますか」
携帯をパンツのポケットにしまって、太郎に聞いた。
「ここの世界は闘わないといけないんですか」
太郎はこの世界について、異世界とは分かってはいるが、ただの夢や想像の世界にいるもんだと半分考えていた。
けれど、先ほど見た戦いの姿で今の世界の現状を知った。
剣で切られていて血が出ている人や胸を突き刺さった動けない人や能力解放でやられた人など多数の犠牲者を見てしまって、この世界にいるのは想像じゃない。現実なんだと。
「はい。ここは異世界です。現実の平和の象徴の日本とは違く、自分の闘いをしていくのです。平和や平等とかはないです。あるのは己自身を信じることです」
初老の女性は真顔でこの世界について語った。
己自身を信じること。
それだけがここで生きる術なのだろうか。
太郎は初老の女性と向き合い、目があった。
「……っ…」
太郎は言葉が詰まった。
本当にやっていけるのだろうか。
現実世界では勉強しかしてこなかった太郎がこの異世界で死人と闘って、自分と向き合えるのだろうか。
太郎は不安や心配事が増えるばかりだ。
その心境を察したのか初老の女性はある一言を太郎にかける。
「太郎さん。もうここまで来たら戻れません。やるしかないんです。どうか覚悟を決めてください」
眉を下げて、太郎を心配しているように見えるが、早く気持ちの整理をしてほしそうにも見えた。
太郎は右方向に目を向けて、自分の気持ちがうまく説明できないでいた。
太郎は下を俯いた後、初老の女性に目を向ける。
「……っ…俺、やります。この世界で何ができるのかやってみます」
この世界にいて、太郎はどうなるのか分からない。
もしかして、死ぬかもしれないし生き伸びるかもしれない。
信じられない状況の中で、環境に適応しようと必死だった。
自分自身がこの世界でどうあるべきか考えても仕方ない。
けれど、脳では考えてしまう。
考えてもマイナス思考に陥るだけだ。
本当にやるしかない。
やらざる負えないんだ。
初老の女性はそうですかと返事をしてから、太郎の背中をポンポンと優しく叩いてどこかへ消えた。
太郎は一人になり、初老の女性から一人ひとり部屋が設けてあるという。
その部屋は赤い屋根の一軒家。
地図も渡されて、まずはその家に向かうことにした。
「えーと……ここどこだよ。分かりづらいなぁ」
緑の世界では森が沢山生い茂っているし、あっちこっちにいろんな花がある。
花は目印になっていて、曲がる角などにはこっそりと花が咲いている。
「…つつじがあるからここ曲がるのか、なんか疲れたな」
太郎は何時間だろうか歩いては休んでを繰り返して、食事は取っていなかった。
というか、取る暇がなかった。
ってか、どこでご飯食べれるのか分からなでいた。
初老の女性も受付の瀬木さんも教えてくれずに太郎はどうしたもんかと思い悩んでいた。
「……はぁ」
ブランコやシーソーが1台ずつあって、ベンチがあったので太郎一人で座っていた。
その時、ある声が聞こえてきた。
「美味しい。美味しいカレーどうですか? 美味しいですよ~」
その声に太郎は思わず、すぐ立ち上がり、声にする方へ駆け寄る。
走って向かおうとしたら、ある人に肩を掴まれた。
思わず、止められたので、なんだよと声を荒げた。
「お前、この声が聞こえるからって行くな!」
筋肉がモリモリなのか両腕は膨らんでいて、手をほどくのにも力を入れないとほどけなかった。
「……邪魔すんなよ。俺今からあそこにあるカレー屋に行くの。邪魔すんなよ」
太郎はお腹が空いているせいか声を掛けられた相手にキレた。
「…お前、本当に知らないのか。あのカレー屋は毒入りのカレーなの。正常のモノじゃない」
筋肉モリモリの男性に言われて、間抜けな顔していただろうか。
筋肉モリモリの男性はプッと口を出してから咳ばらいをしてから太郎と向き合う。
「…ああ、ゴメン、ゴメン。そういうことだから、あのカレー屋は行かないの。こっちに行くよ」
筋肉モリモリの男性は野中桁(のなかけた)と言う。
彼は赤い屋根の一軒家に住んでいる住人だった。
「…あっ、ありがとうございます。ってか、なんでカレー売っているのに毒入りなんですか」
キッチンカーでカレー売っていたら、普通買って食べるに決まっている。
毒入りが入っている意味が分からない。
「ああ、それは俺たちがどこまで判断出来るか見てるんだ」
「見てる?」
「そう。この世界の人達全員、世界を仕切っている人が監視をしている。まぁ、俺はここ長いから、もう慣れちゃったけど。びっくりするよな」
野中は歩きながらもどこからかポケットから小さめなマヨネーズを出して、口に入れていた。
それを見た太郎はドン引いていた。
マヨネーズ好きなのか……あはは。
心の中で苦笑いをした。
「…じゃあ、外に出てるキッチンカーが出てるやつは全部ダメってことか?」
「ああ、そう。監視も二十四時間」
「二十四時間!」
太郎は一日ずっと監視されていると思うと、驚きで目が丸くなった。
「……そう、ここでは当たり前。ここだよ。着いた」
野中はマヨネーズを食べ終わると、パンツのポケットにビニール袋があったのかそこに入れて、赤い家の扉を開けた。
「あ、こんにちは」
赤い家の住民なのだろうか。
ジャージ姿で太郎たちに挨拶をした。
「ここ、一二名住んでる。この家以外にも赤い家はあるが、程度が分かれてる。ここは中級クラス。だけど、本当は初級がほとんど。初級よりはみんな上だけど、君は最初から中級ってことは君、中々強いのかな。どう?」
「え? いや……分からないですけど…」
「まぁ、そのうちかな。ここに住んでる人の能力は住めば大体、分かるから。ここがキッチンで一階・二階と各自の部屋がある。君は一階の部屋になるからここ。あと、お風呂は一つ・トイレは2つあるから自由に使ってね、じゃあ、俺はここで」
一気に野中は説明をした後、自分の部屋に行ってからすぐ外に出た。
「俺の部屋……ここか」
部屋番号が書かれた表札を見て、野中から渡された鍵を持って、開ける。
そこは普通の部屋だった。冷蔵庫やテレビや小さいキッチンまであった。
「うわぁ、現代の部屋より広いわ。なにこの待遇。普通は異世界に来たのなら綺麗な部屋じゃなく、汚い感じじゃないのか」
太郎は部屋のドアを開けて、部屋の中を見て、呆然と独り言を言って立ち尽くした。
「……ふぅ……」
自分の部屋に入り、ため息を吐いてから、床に寝そべった。
これから、慣れない環境でこの異世界の中で自分と向き合い、闘わないといけない。
敵を倒して、倒して、死ななければいい話。
だけど、そんな簡単にはいかないのは分かっている。
でも、やらなきゃいけない。
自分と向き合うことは、太郎はしてこなかった。
もちろん、学校やSNS で情報が得られて、自分との向き合う時間はあった。
それでも、そんな自分と目を逸らした。
公務員に受かればいい。
そしたら、何もかもやりたいことややれてこなかったことをやれると思っていた。
その我慢を試験が終わってからやればいいと思い、後回しにしていた。
それをやってこなかった太郎は今こうなっていると思う。
自分の意志でやっていたはずなのに一人になった今、やれるんじゃないかと不安はあるものの自信が何故かあった。
勉強しか取り柄がない太郎は自分と向き合い、癒しがあるものを何か身につくのだろうか。
ガリ勉な太郎は真面目だからこそ一生懸命に現実と向き合っていく。



