「七叶、おはよー!」
 翔真くんが声をかけてきた。
「おはよう」
「あれ?なんか、、、元気なくない?」
「、、、そんなことないよ」
 昨日の疲労が取れていないだけ。
あまり眠れなかったから、声が沈んで聴こえたんだろう。
努めて明るい声を出したつもりだった。
が、翔真くんは眉を顰め、
「いや、最近思ってたんだけど、、、元気ないよ。お前」
「、、、、、、」
 どう答えればいいものか、悩む私。
「なにか、あったのか?」
 私に真剣な眼差しを向けてきた。
「っ!?、、、、、、」
 いつになく真剣な表情で不覚にも、ドキッとしてしまった。
「な、なにもないよ。あ、ちょっと最近、眠れてなくて、、、」
「ふーん、、、そっか」
 私の回答になにやら考える仕草をした。
でも、次の瞬間、なにもなかったかのように優しい目を向けた。
「快眠方法、教えてやろうか?」
 にっこりと微笑みながら、そう言った。
「うん、ありがと」
 私も微笑みを返す。

 1時間目の授業の用意をしながら私は席に着いた。
やっぱり、疲れが取れていない。
重い頭を思わず抑える。
人生って、、、ゲームだ。
どうやって、攻略して、生き残るか。
そういう、ゲーム。
負けたら、ゲームオーバーしたら、、、。
「は?」
 翔真くんの声で私は我に帰った。
「え?」
「今、なんて?」
「え?私、なにか言った?」
「あぁ」
 不思議そうに翔真は首を傾げた。
「な、なんでもないよ」
 慌てて私は首を音が鳴りそうなくらい勢いよく振った。
思わず、つぶやいてしまったらしい。
誰にも聞かれてはいけない言葉なのに、、、。
私は誤魔化すように翔真くんに笑顔を向けた。

私は、気づいていなかった。
この時の私も、、、演技をしてしまっていたことを。
悩みなんてない、幼馴染の翔真の生き方を真似している少女、に。