晩御飯が終わり、私は急いで階段を駆け上がり、自分の部屋の扉を開けた。
バタンッと音をたてながら扉を閉めた。
「はぁ、、、」
 扉を閉めると同時に、大きく息をしながら床に膝をついた。
今日も、何人もの人柄を演じ、体が疲れ果てていた。
でも、、、勉強しなければ、演じなければ、私の居場所も、私の価値も、無くなってしまう。
 疲弊し切った体を奮い起こし、私は参考書を机の上に開けた。

♦︎♦︎♦︎

 目の前に、謎の人物が現れた。

あたりは白いモヤが立ち込めている。

その人物の顔は見えない。

かろうじて制服のようなものを着ているのはわかった。

『ねぇ、、、』

 その人物は口を開いた。

何処かで聞いたことのある声だった。

『ねぇ、、、。いつ、あなたは、本当のあなたを見つけるの?』

「え?」

『というか、、、あなたは、誰?』

 急に間近に声が聞こえた。

さっきまで、遠くから声がしていたと思ったのに。

ふと、横を向くと、、、。

♦︎♦︎♦︎

「ッ!?」
 私は勢いよく顔を上げた。
「、、、夢?」
 そうだ、勉強しなければならない、と思い机に向かっていたんだった。
そして、いつの間にか、眠りに落ちてしまったんだ。
「勉強しなきゃ授業についていけないのに、、、。寝てる場合じゃない。演じなきゃ、いけないのに、、、」
 私は頬を手のひらで叩き、頭を起こそうとした。
でも、私の目が言うことを聞かない。
すぐに瞼が閉じてしまう。
「、、、強行手段、か、、、」
 私はエナジードリンクを手に取った。
蓋を開け、一気にあおる。
眠気がスッとなくなる感覚がした。
「よし、もうひと頑張り、、、」
 私は自分を鼓舞し、シャーペンを手に取った。