幼い頃から、俺は母親にネグレクトをされていた。
ネグレクト、と言っても、俺の親は特殊な例だった。
オモテの顔は普通の親だったからだ。
オモテの顔は、普通に息子を愛する母親、だった。
学校では、息子に愛情を注ぐ、結構親バカくらいな母親。
ママ友と仲良く、行事にも積極的で理想の母親。
だが、ウラの顔は、俺を放置する母親、だった。
家では俺のことなんかお構いなしに、昼から酒に入り浸る毎日。

それに気づいた俺は、
『面白ぇ、、、』
 そう思った。

だって、やけ酒を飲みながら俺に
「お前なんて生まれなきゃ良かった」
 と言っていたら、ママ友から電話が来た瞬間、声を高くして、
「あ、佐藤さん?もうちょっとで体育大会ですね!」
 など、態度を変えるのだ。
ものすごく、面白ぇ、、、。
そう思った。
そして、ホントの顔は、、、どっちなんだろう。
そう考えるようになっていた。

そして、
『ホントの顔をどうやって見つけるかゲーム』
そういうゲームにすることにした。

放ったらかしにされていた俺は、毎日ゲームに入り浸っていた。
だから、ゲームにすることは当たり前に頭に浮かんできた。
しかもゲームの中で、ホントの顔を見るためにはなにをすればいいのか、を見つけた。

『人を、命の危機に晒す、もしくは同等の恐怖を与える』
それが俺の見つけた方法だ。

ゲームの中で他人のゲームキャラクターを殺そうをした時だった。
金をやるから命だけは助けてくれと言う者がいた。
命は助けて、と泣いて懇願する者もいた。
潔く自ら命を絶った者がいた。
ゲームを中断して逃げる者がいた。
最後まで俺と戦い続けた者がいた。
それをみた瞬間。
俺は閃いた。
『人は、命の危険に侵すことで、本性を現すんだ』

この方法を使い、母親を獲物としたゲームを攻略していった。
ある時は、酒に香辛料を混入させた。
また、ある時は酒の入っている棚を開けるとおもちゃの矢が飛び出してくる仕掛けをした。
そして、最後は、、、母親にナイフを向けた。

その瞬間。
俺にウラの顔が生まれた。
「ホントの顔、見せてよ?()に」
 ナイフをかざしながら母親を見つめた。
「え、、、?わ、わたしは、、、悪くない。あんたが、普通に育たないから、、、こんなバカなことしてるんだわ。、、そう、そうよ。そうに決まってる、、、」
 ナイフに気づいた母親はそう答えた。
怖くて足が震えて立てないようだ。
尻で後退りしている。
「へぇ、、、あなたは人に責任転嫁して、自己防衛するのが、、、ホントのあなたなんだ!、、、面白ぇ!」
「な、なに訳の分からないこと言ってるの?は、早くそれをしまいなさい!」
「、、、言われなくてもわかってるよ。お母さん(、、、、)
 ナイフをしまいながらこう言った。
「これにてゲームクリア!、、、次のターゲット、誰にしようかな?」