「あの……あゆみちゃん? どうしたの?」
俺の問いかけに応える気が無いようだ。下からこちらを見上げて、睨んでいるように見える。
変わり果てたあゆみちゃんの姿に、俺も驚きを隠せずにいた。
どうしていいか分からず、その場で固まっているとコンビニの自動ドアが開き、ひとりの青年がこちらに近づいてきた。
「お~い、”あゆ”。ここのコンビニはダメだべ。店長のババアがタバコを買わせてくんねーの!」
そう吐き捨てながら、バイクの元へ向かってくるのは金髪のリーゼント頭。
おそらくあゆみちゃんが着ているスカジャンと同じものを着用しており、”ボンタン”のジーンズを履いていた。
前世では、なかなかお目にかかれない不良スタイルだな……。
「あぁ? なんだこのデカ女は? おめぇ、俺のバイクになんか用か?」
ヤバい、この不良。俺にキレてる……というか、またデカ女呼ばわりかよ。
「あ、あの私……水巻 藍って言います! そこのあゆみちゃんとクラスメイトで、ちょっと挨拶したかったもので」
俺がそう自己紹介をすると、リーゼント頭が俺に距離をつめて、上から下まで見つめる。
「お前みたいな根暗デカ女が、俺のあゆとダチだとぉ? ウソつくんじゃねぇべ!」
「本当なんですけど……」
うっ、この人。口が臭いし、話す度に唾を飛ばしてくる。
生理的に無理だ。
「本当だって言うんならよ~ あゆ本人に聞くべ。なあ、あゆ?」
そう言うと、リーゼント頭はあゆみちゃんの腕を掴んで、無理やり立たせる。
そして何を思ったのか、彼女の肩に腕を回すとスカジャンの中に手を入れて、小さな胸を揉み始めた。
ガムをくちゃくちゃ嚙みながら、ニヤついている。
これには俺もその場で歯を食いしばって我慢する。
いきなり何をしやがる! もうあゆみちゃんルートは無いと分かっていも……こんな仕打ちあんまりだ。
前世では、彼女だけが俺の希望だったのに。こんなクソ野郎にあゆみちゃんの身体をもてあそばれるとは……。
「あの……そういうことはたくさんの人が見ているので、やめたほうがいいんじゃないですか?」
「はぁ!? 別にいいべ! 俺とあゆは付き合ってんだから。それより、あゆ。お前、本当にこのデカ女と知り合いか?」
しかし、あゆみちゃんはくだらないと言った顔つきでため息を漏らすだけ。
そんなことより、このリーゼント頭は今もずっとあゆみちゃんの胸を揉み続けている。
あぁ~ 腹が立つ!
「私、そんなデカ女。知らないよ」
ようやく口を聞いてくれたかと思ったら、まさかのあゆみちゃんまで俺のことをデカ女呼ばわり。
やっぱり嫌われてしまったのか。
「そうかそうか! なら、良いべ! あゆ、約束のタバコは他のコンビニか自動販売機を探すべ?」
「いいよ。私はなんだって……」
「そんなに落ち込むなよ。よし、代わりに牛丼をおごってやるべ?」
「別にお腹空いてないけど」
というか、この男はいい加減あゆみちゃんの胸を揉むのをやめろ!
見ているだけでイライラする。
いくら鬼塚との恋が実らなかったとはいえ、こんな男を選ぶかね?



