どこにいても安心など無かった日々で、ようやく見つけた春の陽だまりみたいな人。彼はよく、自分のことを冷たい人間だと言う。だけど私は、彼をそんな風には思っていない。暖かくて、無邪気で、優しい人。陽だまりのような人。彼が自分のことをなんと言おうと、私が彼のことをそう思うのは自由だ。私は彼といると、いつも暖かい。
大好きな人。愛する人。抱きしめられる度に、胸がきゅぅって切なくなる人。その日あったいい事を一番に話したい人。何気ない日常を共有したい人。心の真ん中に触れて欲しい人。ずっと傍にいて欲しい人。
触れる唇も、抱きしめてくれる腕も、囁かれる愛の言葉も。一つ一つが、媚薬のように脳を麻痺させる。
彼の、ゆったりとした優しい声が好きだ。彼の、少し高い体温に安心する。
名前を呼ばれる度にドキっとして。仕返しに名前で呼んでみようと息を吸い込むのに、勇気が出なくて。悔しくて、彼の背中に回している腕に力を込めた。触れ合って溶ける体温に、くらりと脳が揺れる。
恋に溺れるとはよく言ったものだ。確かに私は、彼に溺れている。