ギシギシと鳴るスプリングに、吐息が混じる。私に覆いかぶさっているこの男は、いつも私を優しく抱く。
「カノン」
名を呼ばれ、唇が合わさった。彼の限界が近いことを知り、私は許諾の意味を込めて彼の舌を甘く吸った。

行為が終わり、シャワーを浴びるため浴室に入ると、設置してある鏡が目に入った。私の身体に、無数に咲く紅い所有印。
「こんなもので、縛れるわけないのに。」
私は頭から熱い湯を被り、湯船に浸かった。彼と、こういったことをするのは初めてでは無い。むしろ、多い方ではある。けれど、私は彼のことを知らないし、知ろうとも思わない。あくまでも、体の関係。
「ちゃんと、あったまれた?体は大丈夫?」
浴室から出ると、私は彼に抱きしめられた。
「ありがとう。あったまったよ。」
「そっか…。ねぇ、カノン。」
「なに?」
私は彼の腕から抜け出し、ソファに置いたバッグを手に取った。
「愛してる。」
「……そう。」
ドアノブに手をかけ、外に出ようとすると腕を掴まれた。
「本気なんだ。僕は、本気で…。」
私は、彼の言葉を最後まで聞かずに部屋を出た。