#### 【序文:取材の動機と背景】

 はじめまして。私たちは、若者向けのネットメディアを運営する自主取材チームです。大学生や若年層に身近なニュースやオカルト・サブカル系の話題など、テレビでは取り上げづらいニッチなネタを中心に、独自の映像コンテンツを配信しています。今回の取材対象は、いわゆる「樹海の闇バイト」。ネット上の噂として「高額報酬でありながら作業内容が不透明」「参加者の一部が行方不明になっている」など、数々の不穏な書き込みが散見されるため、真偽を確かめるべく現地調査を行いました。

 樹海と呼ばれる場所は、皆さんもご存じの通り、深い森林地帯であり、時折「方位磁針が狂う」「自殺の名所」といったイメージが付きまといます。私たちのチームが得た情報では、ここ数年、**夜間のみ**行われる不可解なアルバイトが存在するとか。その仕事に参加する若者が後を絶たない一方、「行方不明」や「失踪」といった単語も飛び交っているのです。本レポートは、取材の初動から最初の潜入調査までの記録をまとめた“中間報告”として公開する予定のものです(最終版では追って追加取材の内容を反映させます)。

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#### 【1. ネット掲示板での噂】

 最初に闇バイトの話を耳にしたのは、大学生向けの掲示板サイトでした。アルバイト情報のまとめや、ブラック企業の告発などが盛んに投稿される板があり、そこに「樹海の奥にある高額バイト」「安全だが自己責任」「不思議な植物を採るだけ」など、真偽不明の書き込みが散見されていました。書き込みの頻度は少なく、かつ具体的な住所や組織名の類は伏せられているか曖昧にぼかされており、とても怪しい雰囲気です。

 さらに目を引いたのは、「友人がバイトに参加後、行方不明になった」「“闇バイト”に誘われた知人と連絡が取れない」といった失踪報告。一時期、デマか本当かわからないものが乱立し、確かな証拠を示す者はいませんでした。そんな中、「○○県の樹海周辺にはプレハブ小屋が点在していて、不法滞在者と日本人の若者が一緒に作業しているらしい」という半ばリークめいた情報を投稿するユーザーも現れ、一気に注目が集まり始めたのです。

 しかし、いつの間にかその投稿者のアカウントも行方不明になり、情報は途絶。掲示板の住民たちも「またガセネタだったんじゃないか」と冷笑する半面、「もし本当に危険な現場なら、下手に追及してはいけない」という声もありました。私たちは、うさんくささと興味深さの入り混じったこの“闇バイト”の噂に注目し、取材を決意しました。

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#### 【2. 取材チームの編成と目的】

 当取材チームは4名。
1. **俺(ディレクター)**:大学卒業後フリーで活動。映像作品の企画・編集が担当。
2. **杉山(カメラ担当)**:大学時代からの友人で、ドキュメンタリーや短編映画の撮影を多数経験。
3. **牧野(音声担当)**:現役でライブ会場や劇団の音響スタッフを兼任。機材整備や録音技術に明るい。
4. **長沼(調査・リサーチ担当)**:多動型の性格で、現地交渉やネットリサーチを積極的にこなす。車の運転も担当。

 われわれが狙うのは、以下の三つです。
1. **闇バイトの実態解明**:作業内容や報酬、雇い主は誰か。違法性の有無。
2. **行方不明者の捜索協力**:もし失踪が事実であれば、その原因や経緯を探り、情報提供する。
3. **樹海の“怪異”説の検証**:ネット上には、超常的な噂(磁場の乱れ、幽霊、呪いなど)も散在。取材を通して実際に何が起こっているのかを確かめる。

 上記のうち、どれか一つでも明らかにできれば、学生向け情報サイトの大きな目玉コンテンツになることは間違いありません。とはいえ、相手が正体不明の集団ならば身の危険も伴うため、無理はしないことをモットーに進めようと話し合いました。

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#### 【3. 樹海周辺での予備取材】

 掲示板の断片的な投稿を頼りに、私たちは樹海近くの町にやって来ました。道の駅や土産物店、観光案内所を回り、住民やスタッフに話を聞いてみるものの、ほとんどが首を縦に振りません。「闇バイトなど聞いたこともない」「行方不明者の噂は知っているが、具体的なところは警察が動いているらしい」という曖昧な返答が多い。

 一方で、タクシー運転手や地元の配達業者など、夜間に森の近くを通る機会が多い人からは、気になる目撃情報がちらほら聞かれました。例えば「深夜、ヘッドライトを消した車が森の奥へ向かった」「外国人っぽい人が群れを成してプレハブ小屋へ入っていった」などです。ただし、彼らもあまり多くを語りたがらず、「深入りしないほうがいい」「あそこは自己責任の世界だから」と口を噤んでしまうケースがほとんど。

 そんな中、食堂の店主が「夜間の森から人の話し声が聞こえる」「トラックが大量の荷物を運び出しているらしい」などの噂を教えてくれました。どうやら地元住民たちは、薄々何かあると感じながらも、樹海の怪談や闇の噂をあまり公にしたがらない様子。下手に関わると自分が巻き込まれるかもしれない、という恐怖が根付いているのかもしれません。

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#### 【4. プレハブとの接触:昼の下見】

 私たちはさらに情報を辿り、掲示板で「このあたりにプレハブがあるはず」と示唆されていた地点に向かいました。すると森林の中に、確かに仮設住宅のようなプレハブ小屋がいくつも固まっている一帯を発見。周囲は雑木林に囲まれ、人里離れた寂しい場所です。

 そこで見かけたのは、作業服を着た数人の男たち。日本人とは限らず、中には外国人らしい風貌もありました。私たちが取材班だと名乗って近づくと、リーダー格の中年男が露骨に嫌な顔をして「ここは危ないから帰れ」と一蹴。特にインタビューに応じてくれる気配はなく、何かを隠しているようにも見えました。

 プレハブ周辺には土嚢や工具、ライトらしき設備が散乱しており、夜間の作業を想定した資材であることが伺えます。なかば開き直ったように「俺たちはジャーナリストじゃない。ネット配信用の取材をしているだけだ」と言ってみましたが、中年男は「ここでは何があっても自己責任だ。よそ者に教えることはない」と言い捨てて無視。どうやら本格的に取材するには、夜間の様子を観察するしかなさそうでした。

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#### 【5. 初の夜間潜入:衝撃の目撃】

 翌日の夜、装備を整えてプレハブ近辺に戻った私たちは、暗闇の森の中で張り込みを開始。19時を過ぎると辺りは急速に真っ暗になり、ライトがなければ足元も見えません。プレハブの周辺だけは作業用の照明が灯っており、何人かがトラックを出入りしているのが見えました。その作業は、どうやら植物のようなものを運び込んでいる様子。

 驚いたのは、その後にやってきた車から降りてきた若者たちです。20代前半くらいの男女2名が、小声で作業服の男と何か話し合ったあと、プレハブの裏手へ案内されていきました。まるで「新規参加者」のように見えたのです。あれが噂の“闇バイト”の登録手続きか――私たちはカメラを回しつつ興奮を抑えきれませんでしたが、同時に恐怖も感じていました。もし見つかればどうなるかわからない。

 トラックの荷卸しもやがて終わり、夜22時を回るとプレハブ付近はやや静かに。そこで私たちは思い切って裏手へ回り、森の中を少し奥へ進んでみたのです。すると、樹海の闇は想像以上に深く、かすかな風の音や木々の軋みだけが耳を劈く。ひときわ吐息が凍る思いがしたのは、途中で巨大なキノコの群生を見つけたからです。そこには常識的なサイズを超えた毒々しいキノコが、生い茂る樹木の根元に真っ赤な傘を広げていました。

 さらに進むと、朽ちたテントや生活感の残るゴミの山を発見。どうやら誰かが寝泊まりしていた形跡があるのに、姿が見当たらない。まるで置き去りにされたかのようです。加えて、苔むした石碑のようなオブジェや、赤いペンキで描かれた印が点在し、何とも言えない不気味さを醸し出していました。

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#### 【6. “何者かの視線”と行方不明の手がかり】

 森の更に奥へ足を踏み入れようとした時、私たちは強烈な視線を感じました。暗闇の中から誰かがこちらを見つめている――そう確信してカメラを向けても、人影は捉えられない。音声担当の牧野は、小さな声で「笑い声のようなものが聞こえる」と怯え始め、カメラマンの杉山も「何か映ったような気がする」と顔を青ざめています。

 私も一瞬、背後に白い影がスッと走ったのを見た気がしたのですが、焦ってライトを振り向けるとそこには誰もいない。どこかで私たちが監視されているのではないか――そんな錯覚が、恐怖を増幅させていきます。

 結局、リスクが大きいと判断し、その夜の深追いは断念。引き返す途中、森の奥からフラフラと現れた作業服の男が、突拍子もない言葉を呟きました。「ここで行方不明になった人を知っている…」と。私たちが詳しく話を聞こうとすると、男は支離滅裂な様子で森に引き返し、そのまま闇に溶け込んでいったのです。まるで幻のようでした。

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#### 【7. 中間報告:明らかになった事実と未解明の謎】

 ここまでの調査でわかったことは以下の通りです。

1. **プレハブ集落の存在**
- 樹海の奥にプレハブを設置し、夜間作業を行う集団がいる。
- 作業内容は植物や資材の運搬らしく、外国人も混在している。
- 取材への拒絶感が強く、自己責任と繰り返すのみ。

2. **闇バイトの兆候**
- 若者が新規に参加している様子が目撃された。
- 報酬は高額らしいが、具体的な金額や契約形態は不明。
- 森に点在する廃テントやゴミから、何らかの作業拠点が移動し続けているようにも思える。

3. **行方不明者問題**
- 掲示板で囁かれていた通り、実際に樹海周辺で失踪事件が多発している可能性。
- 作業服の男が「知っている」と口走ったが、詳細は不明。
- 失踪した人々が、単に遭難したのか、それとも人為的な何かが関わっているのかは依然不透明。

4. **怪異・超常現象の可能性**
- 巨大キノコや赤い印、石碑など、自然とは思えない異様な光景。
- 人の気配を感じるにもかかわらず姿が見えない、音声機材にノイズが入るなど、心理的恐怖を煽る事象。
- 樹海が持つ特有の磁場の乱れや霧など、自然現象が現実離れした恐怖演出に繋がっているのかもしれない。

 これらの要素が絡み合い、単なる“不法就労”や“違法ビジネス”を超えた、不気味さを放っているのが現状です。行方不明事件に組織的な関わりがあるのか、あるいは樹海という場所が本来持つ“暗さ”が事故や遭難を誘発しているのか……。

 私たちは次のステップとして、さらに内部情報をつかむために、実際にバイトを「装って」申し込む行為も検討しています。また、ネットで「樹海の闇バイト」を経験したという人物の証言を募集し、彼らに接触することでより詳細な実態に迫りたいところです。まだ安全策を十分取れていないため、不用意な行動は避けつつ慎重に調べを進める予定です。

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#### 【8. 今後の展望と警告】

 本レポートを読んで興味を持ち、樹海へ安易に立ち入りたいと思った方もいるかもしれません。ですが、私たちは**強く警告**します。樹海は場所柄、自然条件だけでも危険がつきまといます。さらに、現在の段階で“闇バイト”が何らかの犯罪や危険行為と結びついている可能性を否定できません。実際、私たち取材班も短時間の潜入調査で激しい恐怖を覚えました。未熟な装備や準備で入り込むのは絶対にやめてください。

 私たちはあくまで“中間報告”として、現時点で得られた事実や推測をまとめましたが、今後さらに詳しい潜入取材や当事者インタビューを行い、最終的には動画ドキュメンタリーとして配信を予定しています。本現地レポートの次回更新では、潜入調査の深い部分――たとえば“夜間に行われる具体的な儀式”や“闇バイト参加者が語る内部事情”などが明らかになる見込みです。

 もし、このレポートを読んで心当たりのある方や、行方不明者の情報をお持ちの方がいれば、ご連絡をお待ちしております。闇バイトの真相究明と、失踪者の安否確認につながる手がかりを、一刻も早く得たいと願っています。

 次回はさらに踏み込んだ調査をお届けする予定です。くれぐれも興味本位での樹海探索は控えてください――そう強く訴えながら、第一回の報告を締めさせていただきます。

> **取材チーム代表/フリー映像ディレクター 〇〇**