「響!!次どっちっ??右?左?」
「ひぃ、ひ、‥‥‥‥‥」
「左ねっ!!分かった!!」息切れする僕のはるか遠くで「先行ってるねー!!」と声がする。
目的地は、この通りを左に曲がって住宅街を抜けた先だ。
他にもいくつかあるけど、いちばん近いのがここだった。
職員室に鍵を返しに行ってすぐ出発したんだけど、いるかの足が速すぎて追いつけない。
幼馴染や友達には「運動部に引っ張りだこだったのに」と言われるが、この身長と体力は釣り合わないのだから仕方がない。
「んも〜!!響っ!!おっそい〜!!」
「ご、ごめ‥‥‥‥」
「はやく!!夕焼け終わっちゃうよっ!!」
「そこ‥‥‥‥まっすぐ、で、開けた、とこに」
「それで着く??」
「ん、‥‥‥‥っ」息切れで全然喋れない。
「んじゃっ、先行ってるよ!!」の声が聞こえた頃には、もう颯爽と彼方に消えていた。
「いや、速すぎるって‥‥‥‥」さすが、チアリーディング部員。
そういえば、いるかは元いた部活、どうしてるんだろうか。
最近はずっと天文部にいるけど‥‥‥‥。
「すんごいねぇ響!!きれいだよ夕焼けー!!」
僕がたどり着いたころには、パシャパシャと写真を撮っているところだった。
全部が影になって、金色に染まる。
____喜んでくれたみたいでよかった。
「‥‥‥‥はぁ」まずい。走りすぎた。気持ち悪い。
「響!?大丈夫‥‥‥‥!?」
「ん、‥‥‥‥大丈夫」なんとか返事をして、近くの東屋に腰を下ろす。ちら、と光の方角を見ると、空が真っ赤に染まっていた。そろそろ陽が沈む。
「おとぉー!!だめ!!死なないでぇ!!」前後に揺らすものだから、視界がグワグワする。
「やばい、それ吐く、まじで‥‥‥‥」
「ふぁあ!!ごめんっ!!」ばっ、と手を離されてしまい、そのまま椅子に倒れ込んだ。
「ぐふっ‥‥‥‥」
「ごめん‥‥‥‥おと」大丈夫?と大きな瞳が心配そうに見下ろしてくる。
「ちょっと寝かして‥‥‥」
そのまま横になると、「ごめんねぇ、ごめんねぇ‥‥‥!!」とおろおろする瞳が視界の端に映った。



