____それはちょうど、3時間目の休み時間。
体育の授業が終わって、着替えを済ませて、本を開いた直後だった。
賑やかな音の中に、なんだかよく通る声が挟まっていて。
どこかで聞いたことある声だな、と思っていた。
「あっ!!いたっ!!如月くーん!!」
「き・さ・ら・ぎ、くーん!!!!」
とんとん、とクラスメイトに肩を叩かれ、映した先。
月光のように淡く透き通る白。
見間違えるはずがなかった。
「如月くんっ!!ねぇねぇねぇみて!!
鍵!!部室の鍵っ!!借りてきたよぉぉお!!!!」
教室と廊下をつなぐ窓から必死に身を乗り出している。
そんなことしなくたって、普通にドアから入ってくればいいのに。
「如月、あの女子と知り合い?」と隣の席に座った幼馴染の大悟が声をかけてくる。
「いや、全然」
「は?じゃあなんで」と気の抜けた声を背中で聞きながら、彼女のもとへ向かう。
「あっ!!如月くんっ!!」僕の視線の下で、きらきらきらきら、と星空が光る。
「ほら、持ってきたよっ!!鍵!!」はいっ、と差し出された小さな手には、黄色の中に空白のネームプレートのついた鍵。間違いなく、あの部屋の。
「あっ、間違えちゃった!!それより先に、こんにちはだったね!!如月くん!!」また会えたね!!と笑顔を向けてくる。
「こ、こんにちは‥‥‥?なんで僕の名前知ってるの?
というか、なんで教室が分かったの?」
「んっ?碧い綺麗な瞳の男の子知ってますかー?って聞きながら、ここまで来た!!」
「そう、なんだ」碧い瞳‥‥‥。
「あり?だめだった?」
「いや、だめじゃないけどさ‥‥‥‥名前は?」
「ん?私は、夕凪いるか!!」
「いや違くて‥‥‥‥僕の、名前は、どこで知ったんですか」
「あっ、ごめん!!聞いてたら、如月くんだと思うよーって言われて!!‥‥‥んで、碧い綺麗な瞳の如月くんを探してたらっ、会えましたーっ!!」もう無理かと思ったー!!という声を聞きながら、1学年10クラス以上もある校内を探すのは大変だったろうな、と思う。
「‥‥‥‥ってことで、はいっ!!」
「なんで、鍵持ってんの」
「職員室に行ったら、先生がやっと壊れた鍵治ったーって話ししてて、それってもしかして天文部のですかーって聞いて、そうだって言うから!!持ってきた!!」
「いや、行くの放課後だし‥‥‥‥」
「部長は如月くんだよっ?」
「いや、だから部活じゃ____」
「んじゃっ、如月くんっ!!また放課後にねーっ!!」チャイムと共に遠ざかる背中。
「‥‥‥‥いや、なんで」呟いた僕の手には、黄色いプレートのついた鍵。
白髪女子との関係について、大悟たちいつものメンバーに根掘り葉掘り聞かれる羽目になるとは、このときは思っていなかった。



