碧と春    【ボカデュオ2025『 Azulight 』  原案・原作】







「‥‥‥‥‥はぁ〜」



「なによぉ(おと)、最近ため息ばっかりで」





____8月に入り、夏休みも中盤。

朝食を食べながら、向かい側で心配そうな碧色の瞳が僕を見ている。




「さっさと食べなさい、冷めちゃうわよ」そう言われて、やっと朝食に口をつける。


「‥‥‥つめた」




「早く食べないからでしょぉ?」呆れた声を背に、レンジに皿ごと押し込む。

くるくるくる____と回っている、昨日の夕飯の残り物を入れたホットサンドを眺めながら、また憂鬱な気分になる。




「なんか最近、元気ない?」


「え?」


「なんか____出かけた日から、変よ?ため息ばっかりで」


「‥‥‥‥」


「まっ、ため息は血流の促進にいいから!!」とわけの分からないことを言う。


「帰ってきたままずっと夜まで寝てたし、星も
観ないし、なんか変だなぁって思っただけよ」


「‥‥‥‥うん」バレていたらしい。見てないのに、ちゃんと見られている。




「お出かけ?なんかあった?」


「____別に、なんでも」特に言うほどのことじゃない。というか、僕の親には全く関係のないことだし。


「ふーん?‥‥‥‥ま、ここはあたしじゃなくって、女の子の助けが必要ってことかもしれないわね」


「‥‥‥‥なにそれ」


「ケンカでもした?」


「ケンカ、っていうか‥‥‥‥」


「____って、なんでそんな嬉しそうに見るんだよ」


(おと)もやっとそういう子ができたのかしら〜なんて思ったらもう、なんか‥‥‥‥大人になったなぁって」


「‥‥‥‥なにそれ。大袈裟」



温まったそれをテーブルに移動すると、「はいこれ」と横から紅茶が出てくる。


「____」


「あら?いらなかった?」と意地悪な笑みを向けてくる。


「飲む」

 


ママレードのジャムティーを受け取って、温めたホットサンドを口に押し込む。

____こういう食べ物も、別の色に見えるってことだよな。




「‥‥‥‥別の色?」言われてから、心の声が漏れていたことに気がつく。


「例えば黒とか、黄土色‥‥‥‥とか」


「なに、色のこと考えてたの?」


「んー‥‥‥‥‥なんか、ネットの記事で見て、ちょっと気になって」


「まぁ____一部だけど、そういう人もいるわね」


「うん‥‥‥‥」


「あたしはちょっと畑が違うから____姉さんならデザインの仕事してるし、そういうの分かるかも」



「姉さん」とは、いわゆる親戚だ。

年2回の家族の集まりに来ているのを知っているし、たまに顔を見せる僕にもよくしてくれる。

うちの親と、兄弟姉妹で仲がいいから。



「あっ、____そういう人もいるよって」ほら、とスマホを見せてくる。


「聞いたんだ」


「そういや、姉さんとこの娘さんも、同じ感じじゃなかった?」


「‥‥‥‥僕、あまり行ってないから」


「そうねぇ、たしかに‥‥‥‥‥音に色が見えるとかって話だったから、ちょっと違うかしらね?」


「え、音に色?」


「そうらしいわよ〜!!とってもロマンチック♪」


「‥‥‥‥そうなんだ」そういう人も、いるのか。


「____思い出した!!彩葉ちゃんよ!!」


「‥‥‥‥‥?」


「ほらぁ、髪の色が薄くって、小さくて、姉さんに似てる‥‥‥‥苗字は姉さんがお嫁に行ったから、東雲だけど」



言われてみれば、いたような気もするし、いなかったような気もする。
____話したことないから、覚えてないけど。

親戚の集まりに毎回参加しているわけではないし、
他にもたくさん来るから、どこの誰がどの繋がりなのか、僕にはさっぱりだった。

親も、「最近はみんな大きくなっちゃって、分からなくなってきたわねぇ」とぼやいているし。

あと、親戚だし、苗字はどうでもいい。




「彩葉ちゃん、今大学生だっけ?来るかしら?」


「夏休みに、お祖母ちゃんの家に行くの?」いつもは5月なのに。


「うん。やっとリハビリ終わって、入院から帰ってきたって。この間、兄さんから連絡あったのよ。いつもなら5月だけど____快気祝いのパーティーも兼ねて、って♪」


「あたしはもうお休み取ったけど____あっ、彩葉ちゃん来るって」


「いつ?」


「あら?いつもより食い気味?来週の‥‥‥‥あ、9日ね」


「すぐじゃん」あと5日後。


「そうね」にやにや、といやらしい笑みを浮かべている。やめてほしい。



夏期講習お休みだし、いいんじゃない?と言われて。

「行ってみようかな」と返事をした。





しばらくして、《 彩葉ちゃんの連絡先教えてもらったから送るわね 》と僕のスマホにアカウントが送られてくる。


「いいの?勝手に、連絡先とか‥‥‥‥」


「彩葉ちゃんからも許可取ったって、姉さんが」


「‥‥‥‥」うちの親はだいぶ突っ走るから、あまり信用ならないんだけど。






____ぴろんっ♪

通知音に目を向けると、知らないアイコンと《 「 東雲 彩葉 」 さん が友達になりました 》のメッセージが流れる。



「僕のアカウント、教えたの?」


「うん。姉さんに」


「‥‥‥‥個人情報」


「向こうで会うんだし、いいかなって。受験の話も聞けるわよ?彩葉ちゃん、先輩なんだから」


「____まぁ、」それなら。


(おと)、人見知りだからあんまり話しかけられないかなって思って」保険よ、保険!!と念を押す。


「保険、ね‥‥‥‥」そんなに頼りないと思われてるんだろうか。