「ん‥‥‥‥‥‥いまなんじ?」スマホを見て、「あ、私そろそろ帰るね!!」と席を立つ。
「響!!制服、ありがとうね!!」
「大丈夫なの?持っていかなくて。乾かすのに」
僕にとっての半袖が、彼女にとってはだいぶ大きかったみたいだった。
ズボンも長くて裾を折り返しているけど、ダボついている。今着れそうなのがこれしかなくて、申し訳ない。
「うん!!スカートとブラウス、1つずつ替えがあるから大丈夫!!あっ、リボンは持って帰るね!!」とリュックに入れている。
「じゃあねー!!響ーっ!!」駅の前でいるかと別れて、また家に戻る。
それから、なんとか親の帰宅までにはお風呂を沸かすことには成功した____んだけど。
「響、あんた‥‥‥スカート履くことにしたの?」
いるかの制服、干したままだった。
____後日。
「乾いたよ、はい」
流石に廊下でこのやりとりは恥ずかしかったので、部室で制服の入った紙袋を渡すことになった。
「うわぁぁぁ!!ありがとう!!」
彼女も、「借りちゃってごめんね」と着ていった服を洗って返してくれた。
「‥‥‥ん?ちがう」しばらくにこにことしていた彼女が突然固まった。
「あれ?なんか別に入ってた?」
まずい。もしかして、今朝急ぎすぎて中身が別のものを持ってきてしまったかもしれない。
隣に、親が職場に持っていくはずの同じ紙袋があったことを今更に思い出して、変な汗が出る。
「なんで!!響と匂いが違う!!なんで!!」
「え??なになになに!?まって!!近いから近い!!!!」
香りが僕のと違うのは、親がリセッシュをかけてしまったからで。洗わなかったのは、僕のものじゃないからなんだけど。
親にスカートにしたと思われるのも、なんだか心外というか。
それに、ちょっと香水臭いと思って‥‥‥‥僕の家、親の香水の匂いがするから。
「あの、離れてくれないですか?」
「やだ!!これじゃないとやだったの!!」
「えぇ‥‥‥‥‥?」
ちょっと、反応が、斜め上だった。
しばらく服の匂いを嗅がれた。



