碧と春    【ボカデュオ2025『 Azulight 』  原案・原作】




《 ごめん、おまたせ!! 》


メッセージを送ると、すぐに既読がつく。

キョロキョロと辺りを見てみるけど、いるかはいなかった。
あのよく通る声もしない。
____いや、そもそも遅れた僕が悪いんだけど。



《 今出るから、ちょっと待ってて!! 》とメッセージが届く。


《 公園の入り口にいるね 》




じわじわじわ、と熱気の籠った大合唱を聞きながら、近くの木陰に避難する。
ここの駅は、近くに自然公園があるから日差しをセーブできるのはありがたい。


「あっつ‥‥‥‥」サングラスを外して涼んでいると、少ししてふわふわと白が揺れているのが視界の奥に映る。




____ぴろんっ♪

《 今、公園の前の交差点!! 》



見えてるよ、と思いながら《 公園の入り口にいる 》と返して、交差点の信号に向かう。


少しして、僕と目が合った。ぶんぶんと手を振っている。

信号が青に変わって、しばらくしてもなぜかいるかは動かなかった。
キョロキョロと周りを見てから、急いでこちら側に駆け寄ってくる。



「おはよっ!!響!!ごめんね、待たせちゃって!!」


「おはよう。いや、僕が寝坊したから。ごめん。暑くなかった?」


「んーん、へーき!!近くに図書館があって、本読んでた!!」


「へぇ」いるか、本読むんだ。


「響、今私のこと、【本読むんだ】って思ったでしょ」


「いや、全然」


「そんなおバカじゃないもん!!」


「‥‥‥ごめんなさい」


「響の私服ー!!初めて見る!!」



そう言った彼女は、フリルのついたキャミソールとデニムのミニスカート。
明るい空色のパーカーが、白い肌によく似合っていた。



「「水色」」


「「あ」」


「「またそろった」」



「水色、お揃いだねっ!!」むふふふ、と嬉しそうに跳ねている。


「今日、いい天気だったから」


「だねっ!!うわー!!サングラス!!」かっこいー!!と瞳をきらきらさせている。


「強いから。陽射し‥‥‥‥」


「むふー!!実はぁ、私もサングラス持ってるんだぁー!!」これでお揃いだねっ!!と鞄を弄る。


「____ほにょ?忘れてきちゃったみたい!!」まぁいっか!!と白が揺れる。


「大丈夫なの?」


「うんっ!!なくても平気だから!!」


「僕はどうしてもないとキツくて」


「そうだよね、瞳の色薄いもんね‥‥‥‥」そう言って、僕をじいぃ‥‥‥‥‥っと見てくる。


「んぇ、なに」


「なんか、新鮮だなぁって思って!!」


「学校でもしてるよ」


「えっ!!?うそ!!見たことない!!」


「いるかと会うの、いつも部活のときだから」たまに、廊下ですれ違うけど。




「見たいなぁ、響が制服でサングラスしてるとこ!!」SPみたいでかっこよさそう!!と瞳をきらきらさせる。


「SPって‥‥‥」まぁ、背は高いし、見た目だけはそれっぽくなるかもだけど。




「いるか、もしかして僕と並んでお嬢様気分、とか思ってたりしない?」


「え?そんなことないですけどー」思ってるな、これ。


「僕、世界一使えないSPだよ。いるかより弱いから」むしろ護られるの僕の方‥‥‥。


「はっ!?確かに!!護ってもらえないかも!!鍛えてきて!!」


「SPクビになっちゃった‥‥‥」


「響が鍛えてきたら、復活させたげる」


「当分むりそう」僕が言うと、「‥‥‥ふふふ」と楽しそうにする。ひどいなぁ。




「制服のときは、違うサングラスなんだ」


「えっっ!?そーなの!?」


「あんまり目元が隠れてるのはダメって。メガネみたいなやつだよ、レンズの色も結構薄いし」


「んぇぇ、SP‥‥‥!!」


「僕はクビになったので、お嬢様のSPじゃありません」


「じゃあ、お嬢様やめるから一緒にいましょう!!」


「あは、なにそれ」




「響ー」


「なに?」




「だいすき!!」んへへ、と笑顔を向けてくる。


 

「‥‥‥」


「あり?響?大丈夫?」


「ちょっと、そういうのやめて‥‥‥‥恥ずいから」


「まっかじゃん‥‥‥‥」


「だめだめ、見ないで‥‥‥」


「____ほいっ!!」


「あ」


「うわー!!響のサングラスー!!どうかなぁ‥‥‥‥‥って、うわ!!でっか!!」私にはでっかいやぁ、とこちらを見てくる。


「顔、半分埋まっちゃうね」


「響が大きいんだしー」ほっぺたを膨らませながら、僕の胸ポケットにサングラスを返してくれる。


「ありがとう‥‥‥かけてもいい?」


「どーぞっ!!」暗くなった視界に、また彼女の大きな瞳が覗いている。





「‥‥‥なに?」


「んー、やっぱ似合うなぁって」そんな難しい表情しなくても。





「見にくくないの?」


「うん、慣れちゃったから」


「そーなんだぁ」と嬉しそうにする。


「やっぱり、いるかって犬みたいだね」


「んぇ、そーかなー!!」


「うん」


「サングラス、響と一緒だから、嬉しいっ!!」


「ふふ‥‥‥そうだね」


かけてると、怖いとかチャラいとか言われるけど。
彼女もかけてると知って、ちょっと安心する。






「響、買うもの決めたっ?」


「うーん、模造紙とかマーカーとか、大体は学校で貸し出してもらえるからなぁ。写真も、僕の撮ったのがあるし‥‥‥」


「写真?」


「うん。空の写真」


「響、写真撮るんだ」


「たまにね。1年に何回かくらい。現像しなきゃだから、ちょっと大変だけど」


「えっ!?スマホじゃないの!?」


「うん‥‥‥‥普通のカメラ?っていうか、レンズが伸びるでっかいやつ」


「カメラマンさんみたいなやつ!!一眼レフ?ってやつだよね?」
 

「そう、それ」


「すっご‥‥‥!!持ってる人初めて!!」


「星の撮影とかに使わない?」


「えっ!?星って撮影できるのっ!?夜暗いのに!?」


「色々やり方はあるんだけど‥‥‥レンズが高いからね」


「うわっ、そーなんだぁ‥‥‥‥私も星、撮ってみたいなぁ」


「今度、僕の家にあるやつ持っていくよ」


「やったぁ!!‥‥‥‥で、文化祭の展示はなににするの?」


「科学部ぽいのがいいみたいだから‥‥‥‥研究?」


「ううぅ、けんきゅー‥‥‥‥」しおしおと元気がなくなっていく。


「僕たちのところだし、せっかくなら色々と置いたりもしたいなって思って‥‥‥‥人工衛星の模型とか、星座盤とか天文儀とか」


「ふぉっ‥‥‥‥!?模型!?」いいかも!!と瞳をきらきらさせる。


「てんもんぎ??ってなに?」


「‥‥‥あ、こういうやつ」ちょうど映っている写真があったので、僕の家にあるストラップ型のものを見せる。


「うわ!!かわいい!!」微かにシャンプーの香りがする。


「でしょ」




____天文義、というのは、地球儀のような惑星の動きを可視化したもので。
土星の輪のようなものがいくつも重なって、そこに木星や水星などの星がくっついている。


実物は僕もあまり見たことがないけど、小学校の社会科見学で行ったプラネタリウムで買ったやつだった。

まさかこんなところで役に立つとは、思わなかったけど。





「科学室にもあるから、そういう資料も少し使わせてもらおうかと思って」コピーとかして。


「うわー!!いいと思うっ!!」響、天才っ!!と拳を向けてくる。


「ありがとう」



こつん、と拳をタッチすると、「うへへぇ」と溶けた笑顔が返ってくる。

この笑顔が、たまらなく安心するんだよね。



「いるかの手、小さいね」


「響が大きいのー!!」







そんな話をしていると、いつのまにか目的地にたどり着く。

暑いから飲み物を飲むことになって、いるかの提案でフードコートにあるジュースショップに寄ることにした。