碧と春    【ボカデュオ2025『 Azulight 』  原案・原作】






「____おはよう」


「あら、遅かったじゃない」とコーヒーの香りがする。


「あれ、今日仕事は?」まだ寝間着なんて珍しい。


「午後からだから」のんびりしたいじゃない♪と優雅にトーストを食べている。


「昨日は何時(いつ)までやってたの」


「ん‥‥‥‥‥3時、あ、4時くらいまで」昨日は空が晴れて、だいぶ観れた。


「成長期なんだから、もっと早く寝なさいよ」とため息交じりに言われてしまう。そうは言われても、もうだいぶ背が高い僕にはもう、成長ホルモンは必要ないと思う。


親は、僕がわざわざタイマーをかけて天体観測をしていることを知らない。ずっと起きてると思われているらしい。

____まぁ、昨日は夏期講習の課題と学校の課題をして。そのあとだったから、寝不足なのは間違いないんだけど。



「そろそろ受験なんだし、大学決めときなさいよ」


「‥‥‥‥わかってるよ」わかってるけど。そういうのはまだ考えたくない。夏休みに入ってからも、夏期講習とオープンキャンパスでだいぶ忙しかった。


「響も飲む?」


「砂糖とミルク多めで」



甘いの好きねぇ、という声を聞きながら、洗面所に歯を磨きに行く。

そういえば、いるか、家に来たことあったんだっけ、なんてぽやんと考える。






「響、あんた、今日出かけるって言ってなかった?」


「んー‥‥‥‥ほれははひた(それは明日)」


「だって今日でしょ?7月の最終日って____あれ?違った?いや、多分そうなはず」



嫌な予感がして、部屋の時計を見る。今日の日付も表示されるから。

スマホと、パソコンと、腕時計も見る。



「っ____ほんとだ」今日、いるかと出かける日だった。そして今、待ち合わせの30分前だ。


「どこ行くか知らないけど、遅くならないようにしなさいね?」


「なんで起こしてくれなかったの!!」


「いつも通りに起きてくると思うじゃない」そういえば夏休みだったわね、と最後のひとかけらを口の中で堪能している。




「やっば、やばやばやば‥‥‥‥!!」
青空のアイコンの『iruka』という文字を選択して、メッセージを打つ。



《 ごめん、今おきた 》ごめん、のスタンプも送っておく。

すぐに返信が来て、ぴろんっ♪と通知が鳴る。
おはよー、のスタンプと、《 大丈夫だよ!! 》が返ってくる。



《 もう少しで駅つくから、近くで時間つぶしてるね!! 》


《 ごめん、ほんとに 》


《 だいじょぶ!! 》◯のマークがついたイルカのスタンプが送られてくる。


《 家出るの、あと10分くらいかかる 》


《 わかった!! まっめるね!! 》少しして、《 まってるね!! 》と訂正文が送られてくる。
 




「‥‥‥ふぅ」よし。ひとまずはこれで。


「ふーん?今日は大吾じゃないのね」


「‥‥‥‥なに」


「いっつも、大吾だったじゃない?____あ、でも彼女できたって言ってたわよね」どこからの情報だろうか。


「あと、大吾だったらそんなに焦ってないし‥‥‥‥」


「‥‥‥‥」



僕は大吾(幼馴染)に彼女がいるなんて聞いてないし、そんなところまで見られてるとは思わなかった。

確かに、大吾相手だったら「まぁいいかー」で済ますことが多い気がする。






「彼女?彼氏?どこ行くの?」うきうきと掘ってくる。


「うるさいうるさい」だから嫌だったのに。
いるかを早めに帰したの、やっぱり親が帰ってくる前でよかったな。


「照れちゃってもー!!」やぁだっ♡なんて1人芝居を打ち始めたのを無視して、服を取りに行く。




今日も日差しが強いから黒____を選ぼうとして、青空色のシャツが目に留まる。
あとは適当に選んで、スマホと財布をポシェットに突っ込んだ。








「____じゃあ、これだけ飲んでく」出来上がったコーヒーに口をつける。


「ご飯も食べてきなさいよ」


「コンビニでいい」ぷは、と飲み干してシンクに入れる。


「外、暑いわよ」


「日焼け止め持った」






「そういや響、部活入ったの?」


「____え?」玄関でサングラスをかけたところで振り返る。


「スマホの待ち受けに【天文部】って書いてあったから」


「‥‥‥‥‥個人情報」


「ほら、早く行きなさい、待たせてるんでしょ?」ほらほら、と出されてしまう。


「んじゃ、楽しみなさいよー♪」と玄関が閉まる。






「____はぁ」待ち受け、変えておこうかな。