「____おはよう」
「あら、遅かったじゃない」とコーヒーの香りがする。
「あれ、今日仕事は?」まだ寝間着なんて珍しい。
「午後からだから」のんびりしたいじゃない♪と優雅にトーストを食べている。
「昨日は何時までやってたの」
「ん‥‥‥‥‥3時、あ、4時くらいまで」昨日は空が晴れて、だいぶ観れた。
「成長期なんだから、もっと早く寝なさいよ」とため息交じりに言われてしまう。そうは言われても、もうだいぶ背が高い僕にはもう、成長ホルモンは必要ないと思う。
親は、僕がわざわざタイマーをかけて天体観測をしていることを知らない。ずっと起きてると思われているらしい。
____まぁ、昨日は夏期講習の課題と学校の課題をして。そのあとだったから、寝不足なのは間違いないんだけど。
「そろそろ受験なんだし、大学決めときなさいよ」
「‥‥‥‥わかってるよ」わかってるけど。そういうのはまだ考えたくない。夏休みに入ってからも、夏期講習とオープンキャンパスでだいぶ忙しかった。
「響も飲む?」
「砂糖とミルク多めで」
甘いの好きねぇ、という声を聞きながら、洗面所に歯を磨きに行く。
そういえば、いるか、家に来たことあったんだっけ、なんてぽやんと考える。
「響、あんた、今日出かけるって言ってなかった?」
「んー‥‥‥‥ほれははひた(それは明日)」
「だって今日でしょ?7月の最終日って____あれ?違った?いや、多分そうなはず」
嫌な予感がして、部屋の時計を見る。今日の日付も表示されるから。
スマホと、パソコンと、腕時計も見る。
「っ____ほんとだ」今日、いるかと出かける日だった。そして今、待ち合わせの30分前だ。
「どこ行くか知らないけど、遅くならないようにしなさいね?」
「なんで起こしてくれなかったの!!」
「いつも通りに起きてくると思うじゃない」そういえば夏休みだったわね、と最後のひとかけらを口の中で堪能している。
「やっば、やばやばやば‥‥‥‥!!」
青空のアイコンの『iruka』という文字を選択して、メッセージを打つ。
《 ごめん、今おきた 》ごめん、のスタンプも送っておく。
すぐに返信が来て、ぴろんっ♪と通知が鳴る。
おはよー、のスタンプと、《 大丈夫だよ!! 》が返ってくる。
《 もう少しで駅つくから、近くで時間つぶしてるね!! 》
《 ごめん、ほんとに 》
《 だいじょぶ!! 》◯のマークがついたイルカのスタンプが送られてくる。
《 家出るの、あと10分くらいかかる 》
《 わかった!! まっめるね!! 》少しして、《 まってるね!! 》と訂正文が送られてくる。
「‥‥‥ふぅ」よし。ひとまずはこれで。
「ふーん?今日は大吾じゃないのね」
「‥‥‥‥なに」
「いっつも、大吾だったじゃない?____あ、でも彼女できたって言ってたわよね」どこからの情報だろうか。
「あと、大吾だったらそんなに焦ってないし‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
僕は大吾に彼女がいるなんて聞いてないし、そんなところまで見られてるとは思わなかった。
確かに、大吾相手だったら「まぁいいかー」で済ますことが多い気がする。
「彼女?彼氏?どこ行くの?」うきうきと掘ってくる。
「うるさいうるさい」だから嫌だったのに。
いるかを早めに帰したの、やっぱり親が帰ってくる前でよかったな。
「照れちゃってもー!!」やぁだっ♡なんて1人芝居を打ち始めたのを無視して、服を取りに行く。
今日も日差しが強いから黒____を選ぼうとして、青空色のシャツが目に留まる。
あとは適当に選んで、スマホと財布をポシェットに突っ込んだ。
「____じゃあ、これだけ飲んでく」出来上がったコーヒーに口をつける。
「ご飯も食べてきなさいよ」
「コンビニでいい」ぷは、と飲み干してシンクに入れる。
「外、暑いわよ」
「日焼け止め持った」
「そういや響、部活入ったの?」
「____え?」玄関でサングラスをかけたところで振り返る。
「スマホの待ち受けに【天文部】って書いてあったから」
「‥‥‥‥‥個人情報」
「ほら、早く行きなさい、待たせてるんでしょ?」ほらほら、と出されてしまう。
「んじゃ、楽しみなさいよー♪」と玄関が閉まる。
「____はぁ」待ち受け、変えておこうかな。



