____それから1時間。
だいぶ暗くなってきた空に、いくつか星が流れてくるのが観えた。
「いるか、流星観えたよ!!」反応がなくて横を見ると、幸せそうな顔で寝ていた。
「やっぱり寝るんじゃん‥‥‥‥」
ここに来る前、絶対に寝ないってあれだけ意気込んでいたのに。
「むふふふ、お星さまぁ」という寝言を聞きながら「いるか!!観えたよ!!」と小さい肩を揺らす。
「ふぁっ‥‥‥‥!!?」なに、なに!?とキョロキョロしている。
「流星、来たよ」
「りゅうせ‥‥‥‥?ふぁっ!!流れ星!!」ぽやんとしていた瞳が、星空を反射する。
「観えた?」
「うん!!観えた!!ひとつだけ!!」
「さっきからいくつか観えてるよ。今ので3つ目」
「響だけずるぅい!!」と僕の肩を揺らす。
「だっているか、寝てたじゃん‥‥‥」
「響、」
「ん?」
「流れ星って細いんだね?」
「そうだよ?」
「なんか、もうちょっとこう‥‥‥光の帯??みたいなのが、ひゅーんて出るものかとぉ‥‥‥‥」
「それはたぶん、火球だと思う」
「かきゅーって、なに??」
「流れ星の、光が強いやつ。帯もすごくきれいに観えるよ」
「そうなんだぁ!!____あっ、また流れ星!!」
「いるか、見つけるの上手だね」
「にひひぃ、それほどでもぉ」
「でも、流れ星って。もっとたくさん観れるのかなって思ってた」
「今日はよく流れてる方だよ、ラッキかも!!」僕の言葉にほぇ~と間の抜けた返事をしながら、「やっぱり、遠征しか!!」と瞳をきらきらさせる。
「遠征、行きたいんだね」
「うんっ!!もっとたくさん観れるところだったら、うれしいなって!!」
「深夜だと、大人限定だからなぁ‥‥‥‥」こういうとき、高校生はなにかと不便だ。
「じゃぁ!!大人になっても、響と星観る!!」お願い、これにしようっ!!と空に向かってまた瞳を閉じてお祈りを始めた。
そんなことしてるから、寝ちゃうんだろうけど‥‥‥。
「‥‥‥‥ふふ」嬉しすぎて、ちょっとこの表情は見られたくなかった。
「____いるか、起きてる?」
「んもー、寝てないってばぁ!!」僕の方を見て、「ほらね!!」の表情を浮かべてくる。なんでそんなに偉そうなの。
「響、どうしたの?」
「そろそろ、文化祭の出し物‥‥‥‥決めようかなと思いまして」うっかりしていたけど、そろそろ締め切りだったんだよな。
「あっ、そういえば!!」
「天文部っぽいもの‥‥‥‥」ずっと考えてるけど、いまいち出てこない。
「文化祭、ちょっとだけ展示もやるみたいなんだ」
「えっ、天文部の展示!?」
「科学部の、展示ね」
「んぇえ、ひどいぃ‥‥‥」
「で、ちょっとだけスペース貸してもらえるみたい」
「えっ!!天文部の展示!!やったぁ!!」
「パネルも1/2だから、狭いけど」
「いーのっ!!それでも!!」
「響と一緒なの、嬉しいもん!!」
「‥‥‥‥うん。僕も嬉しい」
「わーい!!」と抱きついてくる。
「ぐふっ‥‥‥‥‥!!」もげる。首が。
「ふぁっ!?ごめん、響!!?」
「ぅっ‥‥‥頼むから優しくしてください」
「ごっ、ごめんねぇ、ごめんねぇ!!」
シュッ、と光が横切る。
「あ、流星」
「えっ!?どこどこ!!」私まだ3回お願いできてないのに!!と探し始める。
そのうち、また光の筋がいくつか星空に浮かんで消えていく。
「わぁあ!!流れ星いっぱいー!!」
きらきらと2つくらい連続で流れる。時計を見ると、もう20時近かった。
「____時間だよ、そろそろ戻らないと」
「んぇえ〜、まだ観たいのにぃ‥‥‥‥」これからでしょ!!と言われてしまって、それはそうなんだけど、と思う。
またこの『捨てられた仔犬』をされてしまうと、だいぶ離れ難くなってしまう。
「残りは‥‥‥‥帰りながらでね」僕が言うと、「やったぁ!!」と飛び跳ねる。
ブルーシートはこれからも使うので部室に片付けて、職員室に鍵を返しに行く。
『テスト採点中 入らないでください』と書かれたドアの前で待っていると、
「本当にこの時間までやるんだな」と先生が呆れたような嬉しそうな表情で顔を出した。
「暗いから気をつけろよ」と言われて、急いで下駄箱に向かう。
「私、靴持ってくるっ!!」この前と同じように、いるかは途中で第2昇降口へ走って行った。
その背中がこの前よりも楽しそうで、僕もちょっと楽しくなった。



