(おと)ー」私がお風呂場のドアを開けると、彼が顔を出した。


(おと)、ずっとここで待ってたの?」


「向こうにいたけど‥‥‥‥‥‥どうしたの?」


「あっ、ウエストが、だいぶ大きくて‥‥‥‥‥‥結構締めちゃったんだ、ごめんね」


「大丈夫だよ。着れてよかった」ぼそっと「細っ‥‥‥!?」と言っていたのは聞かなかったふりをしておく。(おと)は男の子と女の子の違いを分かってないと思う。




「ドライヤー、いる?」


「使っていいの!?」


「いーよいーよ」



また青色の部屋に通される。
____そう、この家は、壁が白じゃないんだ。

私、入ったとき思わず「きれいだね」って言っちゃった。
(おと)はなんだかびっくりした表情してたけど、あんまり言われないのかな。
でもなんだか、(おと)の家って感じがして、私は結構好き。





「はい、ここで使って」大きな鏡の洗面台にきらきらしたランプが付いていて、なんだかホテルみたいだった。


「なにこれ?」見慣れたもののはずなのに、(おと)の家は、全部が初めて触れるものみたいに見える。


「ドライヤーだよ?」渡されたそれにはラッパのようなものが吹き出し口についていた。


「このまま使っていいの?」


「うん、‥‥‥‥‥‥こんな感じで」ふわっと風を出してくれる。なんだか金色で高級そうだし、速く乾きそう。


「あっ、制服、乾燥機かけちゃうね」


「ありがとう!!____あっ!!干してない!!」というか、その前に届かなかったけど。


「いいよ。僕がやるし」とお風呂場に入っていくのを見送ってから、ドライヤーの電源を入れた。
 

「ふぁっ‥‥‥‥!!」思ったより風量が大きかった。