碧と春    【ボカデュオ2025『 Azulight 』  原案・原作】





「うはー!!屋上ー!!」


「いるか、走ると危ないよ」


「うへー!!だいじょーぶだいじょーぶ!!」


なにが大丈夫なんだか、と思いながら彼女の声のする方へ進んでいく。



____18時半。
夕焼けの空が青くなってきた時間。

僕たちは待望の『屋上の天体観測』に来ていた。




(おと)ー!!はやくはやくっ!!」僕が屋上に着いた頃には、もう梯子(はしご)の上まで登っていた。


「そこで観るの?」ここの、広いところを使わせてもらおうと思ってたのに。


「んぇえ!?違うのぉ!?」という声を聞いて、僕も梯子(はしご)を登る。






「よーこそっ!!」嬉しそうないるかが出迎えてくれる。
 

「どうも」


その横に膝をついて、天体観測の準備を始める。まずはシートからだ。____なにもなかったので、先生が使っていないブルーシートを用意してくれた。


「うわーい!!」とそこにダイブするいるか。「ぷわっ!!」と変な鳴き声が聞こえた。どうやら鼻の頭をぶつけたらしい。




「‥‥‥‥お布団じゃないからね?」


「ち、ちょっとはしゃいじゃっただけ!!」と赤くなった鼻の頭を触っている。


「星、好きだねぇ」


(おと)だって」


「そうだね」相槌を打ちながら、なんだかくすぐったいような、嬉しいような気がした。



持ってきた椅子の上に、望遠鏡を取り付ける。

しばらくすると目が慣れてきて、藍色の中にぽつぽつと星が浮かんでいるのが肉眼でも見えてきた。


「わぁあ!!すごぉい!!」いるかは僕の横でずっと飛び跳ねている。







(おと)、部室と同じなんだね?」


「ん?」


「私、星ってこういうとこで、寝転んで観るものかなって思ってたの!!」そう言ってブルーシートに仰向けになる。


「いるか、見えてるよ、パンツ‥‥‥‥」


「うそっ!?」がば!!っと起き上がる。


「‥‥‥‥うそー」やっぱ面白いな。


「からかわないでよー!!」とほっぺたをフグみたいにしている。


「こっちのセリフなんですけど‥‥‥‥僕、男だよ」


「?‥‥‥だからなに?」


「なにって‥‥‥‥ちょっとは警戒しなよ」


(おと)、おじーちゃんだから、私が走ったら追いつけないのに‥‥‥‥」


「ぅ゙っ‥‥‥‥たしかに」それはそう。


「さっきのお返しー!!」けらけらと笑って、また寝転ぶ。僕に気を遣う気はないらしかった。


「今日は、流星群なんだって」


「えっ!?ほんとにっ!?」がば!!っと起き上がる。さっきから寝転んだり起き上がったり忙しいな。




「____だから、近いって」


「ふぁ、ごめんっ!!忘れてた!!」目の前の星空が、ぱっと離れる。


「なにを」一瞬でもどきっとしてしまうのを、本当にどうにかしたい。


「人との距離感、つかめないとこ‥‥‥‥」


「自覚あったんだ」


「そんなにグサグサ刺さなくてもいーじゃん‥‥‥」どうやら凹んでいるらしい。さっきまで揺れていた髪が、しおしおと悲しそうにしている。


「そういうの、気にしないタイプかと思ってた」いるかみたいな性格の人は。


「気にするよ‥‥‥‥だって、」


「なに?」


「____ううん、なんでもないっ!!」今日はなに観るの!?とはぐらかされてしまった。聞かれたくないみたいだ。




「やぎ座流星群。もしかしたら、放射点も見られるかも」


「ほーしゃーてん?」


「放射点。流れ星が1つの星を中心にして、そこから放射状に降ってきてるみたいに観える‥‥‥‥ってやつ」
太陽を描くときみたく、小さい円と、長い線を放射状に、空中に描く。


「ほぇ~‥‥‥‥」


「わかる?」


「うーんと??‥‥‥‥いっぱい観えそうだねっ!!」よく分かってなさそうだけど、いいか。


「たくさん観えるのは、もうちょっとあとかなぁ。深夜2時くらい」


「んぇぇえ〜!!」


「深夜がいちばん見頃だからね。今日は、早いところだと19時台から観れるみたい‥‥‥‥星、たくさん降ってくれるといいけど」


「観たい観たいっ!!神様お願いしますっ!!」いつの間にか、僕の横で正座になってお願いポーズをしていた。




「____よし、この辺でいいかな」
星座盤を見ながら望遠鏡を調整して、シートの上に横になる。そのままだと痛いので、持ってきた鞄を枕にした。


「んぇぇ、(おと)だけずるーい!!」よじよじと、いるかも隣に寝転ぶ。





「ほんとだ。よく観えるね‥‥‥」

この位置だと、フェンスが邪魔にならない。視界いっぱいの藍色に、ちらちらと星が瞬いている。




「むふふ‥‥‥でっしょぉ〜!!」と横でいるかが得意げに言う。


「ナイス、いるか」


「んへへへぇ、それほどでもぉ〜!!あるけどっ!!」







____7月。
テストが終わってすぐ、「屋上使おう!!」という話になり。テスト休み明けの今日、屋上での天体観測をすることになった。

授業が終わってからずっといるかに「はやくはやく」とせがまれ。
今までの間、「(おと)!!どうしよぉ!!赤点かも!!」と泣きつくいるかと一緒に、再試の勉強をしながら待っていた。

3組だから、僕とはコースが違うみたいで、初歩の内容だった。
だいぶヘロヘロになっていたけど、星空で元気を取り戻したらしい。

赤点、杞憂になればいいけど。