「いるか、どう?」
「うん、だいたい乾いたよ!!」思ったより速く。だけど、他の人のお家だし、念入りにしておこう。濡らしちゃったら悪いもん。
「なんか飲む?」
「えっ‥‥‥!!いいよいいよ!!気を使わないで!!」
「いやでも、寒いだろうし‥‥‥」私が下着つけたままだからかな。一応、タオルで水気は吸っておいたんだけど。
「じゃあ、いただきます!!」
「えーっと、ジュースがなくて。コーヒーと紅茶しか‥‥‥‥‥あっ、ホットミルクとかもできるよ。あとは水」
がちゃん、と両開きの冷蔵庫を開けた先に、ペットボトルの水がたくさんあるのが見える。
私の家のより、冷蔵庫大きいかも。
キッチンにオーブンレンジがついてる。
リビングの電気には、ガラスの傘のついたランプ。ステンドグラスの模様が細かくてきれい。
外国のお家みたいで、なんだか新鮮。
「____いるか?」
「ふぁっ!!ごめん、ぼーっとしてた」
「珍しいでしょ、僕の家」みんなそうだよ、と四角い缶を開ける。
「それ、なに?」
「紅茶だよ?」
「こっ‥‥‥紅茶」ティーバッグのやつしか知らない。
「いるかも、これにする?」
「えっ、ええでも、お高いんじゃ‥‥‥」
「お客さんなんだから、遠慮しないでいいよ」
そう言われてしまうと、さすがに断れなくて、紅茶を選んだ。
「ドライフルーツ入れる?ジャム?____あ、ハチミツもあるけど」なんて言われて、
さすがにそんなにレパートリーあるなんて思わないじゃん。
ミルクティーにして、お砂糖とハチミツを入れてもらった。
私は甘いのが好きだけど、
響が「この紅茶美味しいんだよね」って言いながらスプーン3杯くらいお砂糖をドバドバ入れてるの、見ちゃった。
ちょっと意外だった。
コーヒーとか好きなタイプだと思ってたんだもん。
なんか、身長が高くて大人っぽいけど、
同い年なんだなって分かるかわいいところもあって、なんだか安心した。
「その辺座ってていいよ」と言われて、部屋を改めてよく見る。
壁付けに2つ、模様の入ったふわふわのソファーが並んでいて、____その間に置かれたランプの模様に目が留まる。青色が、鮮やかですごくきれい。
水色のクッションに、細かい刺繍がたくさんある。もう1つのソファーも色が違うのに、ちゃんとお部屋に合ってる。
いろんなところに、複雑な模様の布がかけてあって、見ていてすごく楽しい。
視線を戻すと、ご飯を食べるテーブルと椅子。
その周りには素敵な絵やドライフラワーが飾ってあって、テーブルクロスにはたくさんの模様が敷き詰められていた。
さっき、ここに来る手前でちらっと見た寝室も、水色のランプが光っててきれいだった。
「いいなぁ、なんか、水族館みたい‥‥‥!!」
「水族館?」
「うん、青がすごくきれいだから!!」
「気に入ってくれたんだね、よかった」
「もうちょっと待っててね」と言われて、ランプの青色を眺めに行くことにした。
「いるか、それ好き?」
「なんか、すごくきれいで‥‥‥‥」
「あんまり見ないよね、そういう模様」近くで見るとすごく複雑に、いろんな色が細かく入っているみたいだった。
響がソファーに座ったのを見て、私も隣に腰掛ける。
濡れちゃうと嫌だからお尻の下にタオルを敷いたけど、それでもふかふかなのが伝わってきた。
「珍しいなって思うかもしれないけど、こういうのとかも、親の趣味なんだよね」と苦笑いする。
お仕事で、よく海外に行くんだって。
お部屋のいろんなところに模様がたくさんあって、色が鮮やかなのは、そういうことなのかもしれない。
「そうなんだ!!あんまり見たことないのばっかりで、見てて楽しい!!」この、棚にある置物とか。
「そう言ってもらえたの、初めてかも」
みんなは、ごちゃごちゃしてるとか言うみたいだけど。
そんなふうには思わなかった。
____ピロピロピロ、とアラームが鳴って、響がキッチンに向かう。ふわっと紅茶のいい香りがする。
わくわくしながら待っていると、棚にある女の人の写真が目に留まる。
目元が響にそっくりだった。お母さんかな。
響は瞳が碧色だけど、この人は黒くて、不思議な感じがする。
「____いるか、できたよ」
「わぁ!!ありがとう!!」かわいいコップに入れて持ってきてくれた。
受け取っても熱くなかった。氷も入れてくれたみたい。
しばらく、手を温める。
じんわりしあわせな温度が身体に巡って、眠気を誘ってくる。
「僕もここにしよ」そう言ってコップに口をつけて、「入れすぎた‥‥‥」とすぐに立ち上がって、紅茶を追加して戻ってくる。
ぽふ、とまた軽い振動が伝わってきてから、「いただきます」と口をつけた。
はちみつの甘さがちょうどよくて、すごく美味しい。
こういうおしゃれなの、初めて飲んだ。
「____どう?」
「すっっっごく美味しい!!」
「よかった」
「響は、なに入れたの?」
「お砂糖とママレードだよ」
「ママレードって、ジャムだよね‥‥‥紅茶に入れたりするんだ?」
「するよ。ジャムティーってやつ。甘くて美味しいよ」
「わ、なんか、すごくおしゃれ!!」初めて聞いた。
「いるかも、ちょっと飲む?」
「いいの!?やったぁ!!」自分のを飲み干して、2杯目までいただく流れになっちゃった。
「はい、どーぞ」ありがとう!!と受け取って飲んでみる。フルーティーですごく美味しかった。
横で2杯目に口をつけて、「あっつ!!」と言っているのを見る。
「響、猫舌?」
「ん‥‥‥‥‥‥、そう」痛かったのか恥ずかしかったのか、顔を逸らされてしまった。
「実は、私も‥‥‥‥‥‥なんだよねぇ」なんだか恥ずかしくて、手を温めるふりをしてたけど。
「「一緒だねぇ」」が同時に出てきて、2人で思わず笑っちゃった。
こういうのも、たまにはいいかも。



