いつの間にか、雲の鈍色が濃くなって。僕たちが昇降口から出るころには、洪水のように大量の雨粒が落ちていた。
「響ー!!お待たせっ!!」その声に振り向くと、第二昇降口の方から彼女が靴を持って駆けてくる。
「いるか、傘は?」
「ないよ?」
「こんな雨なのに?」
「寝坊しちゃって、ぜんっぜん天気予報見てなかったんだよねぇ〜!!」
「そんなうれしそうに‥‥‥‥」
「うん!!嬉しいよ!!響と帰れるもん!!」えへへぇ、と緩みきった表情をみていると、なんだかむず痒いような感じがする。
「最近、あっち~ねぇ」
「梅雨だからね」僕が言ったときには、もう昇降口の外にいた。
「わー!!雨だ雨だー!!」
「待って、今行くから!!」
僕が傘を開くまでに、さっさと走っていってしまう。
そんなに雨が好きなんだろうか。
「いるか、濡れちゃうよ」
「むふふ、これで涼しくなったりしてー!!」そんなことないかぁ、と言いながら、くるくると踊っている。
「‥‥‥もう」でも、こういうところが、いるからしいと思う。



