「響ー!!待ってたよ!!」
「いるか、声大きいよ‥‥‥」ちょっとひやひやしながら、隣に座る。
「だってー‥‥‥初めからがいいな~と思って、待ってたのに」
「じゃあ、巻き戻そうか」もう開始30分は過ぎている。
「やっ!!たぁあー‥‥‥」
「あは、そんなあからさまにしなくてもいいのに」
「私の声、普通でもうるさいって言われちゃうから」確かに。それはそうだ。
「じゃー、巻き戻しちゃうよ?」そんなに僕のこと、ちらちら見なくても。
「‥‥‥怒ってないよ?」
「そういうことじゃなくってぇ‥‥‥‥」どういうことなんだろうか。
____それから1時間半。
視界の端で跳ねる白を見ながら、映画を観ていた。
途中、「あっ!!隠れリス!!」「このりんごほしいー!!」みたいなことを言いながら観ていて、だいぶ賑やかに過ごせた。
僕はひとり親だし、映画を観ることもあまりないから、
こうやって自分以外の誰かとわちゃわちゃとしながら観るのは、なんだか新鮮で。
いるかの水色のイヤホンを2人で分けあって観るのも楽しかった。
「あー面白かったぁー!!」ひと仕事終えたみたいな声で、隣で伸びをする。カウンターにDVDを戻して、荷物を取りに戻る。
「えっ‥‥‥‥!!響、もう帰っちゃうの?」
「‥‥‥‥うん」テスト勉強もあるし、そもそも天文部は休みだし。
「そっかぁ‥‥‥‥」と寂しそうにする。
そんな態度を取られてしまうと、行くのも憚られるというか‥‥‥‥。
「そういえば、いるか、部活は?」
「???今日、お休みだよね?曇りだし」
「えっと、そうじゃなくて‥‥‥‥チア部の、方」ずっと前から聞こうと思っていて、聞けなかった。なんだかいけない気がして。
「チア部?なんで?」
「だって、兼部してるんでしょ?」とはいえ運動部だし、大会もあるだろうから、そこまで天文部優先ということもできないだろうな、と思う。
「えっ?辞めちゃったよ?」
「辞めたの!?」言ってから、はっとする。ここ、図書室だった‥‥‥‥。
「そんなに驚かなくってもー!!」響の方が声大きいじゃんー!!と言われてしまう。
「いや、だって‥‥‥‥」まさか辞めてるだなんて思わないだろ。
「辞めたって、いつ‥‥‥‥?」
「んぇ、天文部に入る前かなぁ」
いるかが天文部の申し込みをしてきたのは、初めて会った次の日。
____こと座流星群があの日までピークだったから、2ヶ月は前になる。
「ごめん、全然知らなくて」
「えっ、なんで響があやまんの?私が決めたことなのに」
「なんで、って‥‥‥‥‥部活の時間、被るし」
「響、私がそんなことで辞めたと思ってたの?」
「いや、そういうわけじゃないけど‥‥‥‥‥‥」荷物をまとめて僕の前を行く白を追う。
僕はいるかのことを、実はよくわかってない。



