「ひぃ‥‥、はぁ、はぁ」
「こらー!!おと!!もっと軽々と!!ほら!!走って!!」
「む、むり‥‥‥‥」まるでオアシスのような木陰のベンチに助けを求める僕。
「だめー!!まだやるの!!」
「無理です無理です、いじめないで」
抵抗する僕の腕をビヨンビヨンに引っ張ってくるいるか。
____なぜこんな事になっているかと言うと。
「____最悪だ」
そう、すべては、教室の真ん中でじゃんけんに負けたところから始まる。
「どんまい如月!!」と僕の絶望具合を知らない、幼なじみの大吾が肩を叩いてくる。
「僕が走れないの、知ってるくせに‥‥‥」
「しょうがねぇだろ、あそこでパーを出さなきゃなー!!」
「‥‥‥‥う」
僕はスポーツが苦手だ。
そして、じゃんけんも苦手だった。
____5月にある体育祭。
負けた人から決まる、色別対抗戦のメンバーに選ばれてしまった僕。
ずっと負け越して、現在に至るわけで。
「あそこで活躍したらモテるぞー!!」と盛り上がっている大吾の隣で、僕の気持ちはどん底に沈んでいくのだった。
「____帰りたい」
「もー!!響!!なに言ってんの!!これからオリオン座見るんでしょ!!」
「うーん‥‥‥‥」
今までずっと触っていた望遠鏡も、今日は何の調整もしないまま、ぼんやりと目の前だけを眺める。
「珍しいねぇ?響が、星観ないなんて‥‥‥」なんかあった?と星空のような瞳にのぞき込まれる。
「えっ!?もしかして!!具合悪いっ!?」いるかが勝手な解釈であわあわとし始める。大丈夫、そんなんじゃないから。と手をひらひらとさせておく。
「‥‥‥‥なんか、あった?」
珍しく、いるかは静かに僕の話を聞いてくれるらしかった。
____そして、僕の地獄が始まることになったのだ。



