『別れよう』
たった一言。たった4文字の言葉で終わってしまうような関係なら、初めから欲しくはなかった。
真っ暗な部屋に1人。熱を帯びたスマホ。メッセージアプリに映し出された4文字が、まるで光を放っているかのように目に飛び込んできて、痛々しい。
先にメッセージを送るのはいつも私からで、先におやすみ、と終えるのはいつも彼ーー光太(こうた)からだった。
もうダメなんだろうな…、もう無理なんだろうな…、と付き合っている間に何度も感じていた。だけど気づかないふりをして付き合い続けた。
他校の私たちは学校で話すことができない。メッセージアプリで会話するしかないのに、なかなか機会が無かった。今思えば面倒だったのだろうか。彼にとって私は“コミュニケーションを取りたい相手”ではなかったのかもしれない。
それでも、この恋は永遠だと信じたかったんだ。
『別れたくない』
震える指で文字を打った。
『ごめん、さっきも言った通り別れてほしい』
『どうしても別れたくない』
怒りにも似た感情が溢れて文字となる。スマホの上に水滴が落ちた。
それから返事が返ってこなくなり、ブロックされていると気づいたのはその15分後くらいだった。
連絡手段がメッセージアプリだけだったのに、それすら絶たれてしまったんだと分かった。
でも、こんな形で終わりたくない。これを“最後”にはしたくない……。この日の夜は、溢れ出る涙を止めることができなかった。
︎︎𓂃⟡.·
次の日、学校へ行くと、目が真っ赤に腫れた私を見て、親友の未来(みく)が驚いた表情で駆け寄ってきてくれた。
私は光太から別れ話をされたこと、別れたくないと伝えたがブロックされてしまったことを伝えた。
「優愛(ゆあ)、辛かったね。」
未来は私の気持ちに共感してくれた。
「しつこいのは分かってるんだけど、また光太に会いたいし、最後に話したい。でも連絡手段がなくて……」
悩む私に、未来はある提案をしてくれた。
「じゃあ、文化祭に行くのはどう?」
「文化祭…?」
未来は光太と同じ高校に友達がいるらしく、今週末に文化祭があることを教えてくれた。
「日曜日に一般公開してるみたい。私も一緒に行くからさ!」
「未来…ありがとう」
正直、文化祭のことなんか全く知らなかった。何の出し物をするのかとか、光太は何も話してくれなかったから。
でも、文化祭でならもしかしたら話せるかもしれない。そこで別れ話も考え直してくれるかもしれない、と淡い期待と不安を抱いたまま、日曜日を迎えた。
︎︎𓂃⟡.·
光太の高校に着いた私たち。ここまで来て、変に思われないだろうか。不安でいっぱいだけど、もう後戻りはできない。
光太と同じ制服を着た生徒とすれ違うたび、ドキッとした。
その時、付き合った頃の記憶がふわっと脳裏に浮かんだ。
告白をしてくれたのは、意外にも光太からだった。中学3年間片思いをしていた光太から、卒業式の日に告白されて、連絡先を交換した。好きだと思っていたのは私だけだと思っていたから、とても嬉しかった。
始めの頃は、お互い別々の制服を着て、出掛けたこともあったっけ…。最後に出掛けた日からまだ半年くらいしか経っていないのに、もっと前のことのように感じられる…。
「ねぇ、あれ光太くんじゃない?」
未来の言葉に、現実に引き戻されたようにハッとした。未来の目線の先には、光太と知らない女子が二人で楽しそうに歩いている姿。
もしかして、新しい彼女……?
ドクンドクンと、騒がしくなる心拍数。
「私ここて待ってるから。今声かけないと後悔するよ!」
未来の言葉を聞いた後、私は走って2人を追いかけた。
言いたい言葉が頭の中でぐるぐると回るのに、緊張で消えてしまいそうだった。それでも今伝えないときっと後悔してしまう…。私は勇気を出して彼の名前を呼んだ。
「光太……っ!!」
たった一言。たった4文字の言葉で終わってしまうような関係なら、初めから欲しくはなかった。
真っ暗な部屋に1人。熱を帯びたスマホ。メッセージアプリに映し出された4文字が、まるで光を放っているかのように目に飛び込んできて、痛々しい。
先にメッセージを送るのはいつも私からで、先におやすみ、と終えるのはいつも彼ーー光太(こうた)からだった。
もうダメなんだろうな…、もう無理なんだろうな…、と付き合っている間に何度も感じていた。だけど気づかないふりをして付き合い続けた。
他校の私たちは学校で話すことができない。メッセージアプリで会話するしかないのに、なかなか機会が無かった。今思えば面倒だったのだろうか。彼にとって私は“コミュニケーションを取りたい相手”ではなかったのかもしれない。
それでも、この恋は永遠だと信じたかったんだ。
『別れたくない』
震える指で文字を打った。
『ごめん、さっきも言った通り別れてほしい』
『どうしても別れたくない』
怒りにも似た感情が溢れて文字となる。スマホの上に水滴が落ちた。
それから返事が返ってこなくなり、ブロックされていると気づいたのはその15分後くらいだった。
連絡手段がメッセージアプリだけだったのに、それすら絶たれてしまったんだと分かった。
でも、こんな形で終わりたくない。これを“最後”にはしたくない……。この日の夜は、溢れ出る涙を止めることができなかった。
︎︎𓂃⟡.·
次の日、学校へ行くと、目が真っ赤に腫れた私を見て、親友の未来(みく)が驚いた表情で駆け寄ってきてくれた。
私は光太から別れ話をされたこと、別れたくないと伝えたがブロックされてしまったことを伝えた。
「優愛(ゆあ)、辛かったね。」
未来は私の気持ちに共感してくれた。
「しつこいのは分かってるんだけど、また光太に会いたいし、最後に話したい。でも連絡手段がなくて……」
悩む私に、未来はある提案をしてくれた。
「じゃあ、文化祭に行くのはどう?」
「文化祭…?」
未来は光太と同じ高校に友達がいるらしく、今週末に文化祭があることを教えてくれた。
「日曜日に一般公開してるみたい。私も一緒に行くからさ!」
「未来…ありがとう」
正直、文化祭のことなんか全く知らなかった。何の出し物をするのかとか、光太は何も話してくれなかったから。
でも、文化祭でならもしかしたら話せるかもしれない。そこで別れ話も考え直してくれるかもしれない、と淡い期待と不安を抱いたまま、日曜日を迎えた。
︎︎𓂃⟡.·
光太の高校に着いた私たち。ここまで来て、変に思われないだろうか。不安でいっぱいだけど、もう後戻りはできない。
光太と同じ制服を着た生徒とすれ違うたび、ドキッとした。
その時、付き合った頃の記憶がふわっと脳裏に浮かんだ。
告白をしてくれたのは、意外にも光太からだった。中学3年間片思いをしていた光太から、卒業式の日に告白されて、連絡先を交換した。好きだと思っていたのは私だけだと思っていたから、とても嬉しかった。
始めの頃は、お互い別々の制服を着て、出掛けたこともあったっけ…。最後に出掛けた日からまだ半年くらいしか経っていないのに、もっと前のことのように感じられる…。
「ねぇ、あれ光太くんじゃない?」
未来の言葉に、現実に引き戻されたようにハッとした。未来の目線の先には、光太と知らない女子が二人で楽しそうに歩いている姿。
もしかして、新しい彼女……?
ドクンドクンと、騒がしくなる心拍数。
「私ここて待ってるから。今声かけないと後悔するよ!」
未来の言葉を聞いた後、私は走って2人を追いかけた。
言いたい言葉が頭の中でぐるぐると回るのに、緊張で消えてしまいそうだった。それでも今伝えないときっと後悔してしまう…。私は勇気を出して彼の名前を呼んだ。
「光太……っ!!」